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O plus E誌 2015年2月号掲載
 
 
ミュータント・タートルズ』
(パラマウント映画)
      (C) 2014 Paramount Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2月7日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2014年8月10日 Scotiabank Theatre Vancouver
2014年11月27日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  『トランスフォーマー』ファンにピッタリの大活劇  
  映画ファンなら,好きな映画を映画館で何度も観た経験はあるだろう。最近なら,自宅でDVDを何十回も観る心理も理解できる。筆者もかつてはそうだったが,最近は次号,次々号のための試写会通いに追われ,同じ映画を何度も観る余裕はない。VFX場面の詳細を再点検するため,時々試写を2度見せてもらう程度だ。
 多数の映画人たちが,汗水を流し,人生を賭けて作った労作を,たった1回観ただけで評点をつけるなど,おこがましいことだと恐縮する。それは止むを得ないが,映画全体の評価は,最初の印象で決まり,その後は意外と揺るがない。二度目で評価が上がることなどまずないのだが,本作はその例外的なケースである。
 昨年8月上旬に観た時は,ただただ騒々しい,何の思想もない映画で,エンタメとすら呼べないと感じた。これはラジー賞の有力候補で,評点はCGや3D上映の出来映えを加味しても,せいぜい☆だと思った。それが,11月下旬に再度観て,かなり評価が上がった。好みの映画ではないが,それほど悪くないなと。
 当初の低評価には,明確な原因が思い当たる。初回は,SIGGRAPH 2014でバンクーバーに滞在した折,現地の映画館で観た。正直なところ,主人公たちから機関銃のように飛び出すセリフ,とりわけギャグやジョークが,筆者のヒアリング力では正しく理解できなかった。これが,日本語字幕付きの試写会で観ると,結構イケている。セリフもアクションも超高速なので,字幕を気にせず,吹替版で観るのもいいだろう。
 もう1つの要因は,前々週に『トランスフォーマー/ロストエイジ』(14)を,前週に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14年9月号)を観ていたためだろう。アメコミが原作の本作は,全くの同ジャンルであり,派手なアクションだけのガキ映画は,もう沢山だと感じた訳だ。ところが,秋から冬にかけて,草食系男子のイライラする恋愛劇や,シリアスだが暗いインデペンデント系映画を観ていると,こうした屈託のないアクションもいいなと思う。配給会社が日本公開をここまで遅らせたのも,同じような理由からの営業戦略だろう。
 スーパーヒーロー達が悪の手からニューヨークの街を守る典型的なアメコミものだが,彼らは人間でも宇宙人でもなく,何と突然変異で生まれた身長180cm余のカメだった(写真1)。原題の『Teenage Mutant Ninja Turtles』から分かるように,日本の忍者の扮装をしていて,日本刀やヌンチャクなどを使いこなす。とにかくスピーディなアクションは,まさにゲーム感覚であり,高画質CG映像に慣れ親しんだゲーマー向けの映画だ。このセリフの多さは,ヒップホップ好きの若者を意識しているとも思える。(筆者は好きになれないが)『トランスフォーマー』シリーズのファンに,最適な映画だと思う。
 
 
 
 
 
写真1 向かって左から,ラファエロ,ミケランジェロ,レオナルド,ドナテロ。個性を表情で描き分けている。
 
 
  それもそのはず,同シリーズ監督のマイケル・ベイが,本作の製作に名を連ねている。CG/VFXの主担当も同じILMだ。監督は,『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(11年4月号)『タイタンの逆襲』(12年5月号)のジョナサン・リーベスマンだから,CG/VFXの利用には通暁している。以下は,その見どころである。
 ■ 何といっても,CGで描いたカメ忍者たちの表情と動きの素晴らしさだ。Facial Captureの利用技術がここまで進んだのかと感嘆する(写真2)。SIGGRAPHのメイキング・セッションでは,目の表情のリアルさを強調していたが,口の動きによる感情表現も絶賛に値する。『ホビット』シリーズのゴラム,『猿の惑星』シリーズのシーザーも上出来だったが,何か一味違う。Weta DigitalとILMのキャプチャ流儀の違いだろうか(写真3)
 
 
 
 
 
写真2 Facial Captureの活用は一段と進化し(左),レンダリング後の質感も,目と口の表情描写も素晴らしい(右)
 
 
 
 
 
写真3 身体の動きは,このスーツを着用してキャプチャーする
 
 
  ■ 中盤,雪山をトレーラーで滑降するシーンのスピード感に惚れ惚れする(写真4)。大ジャンプや落下シーンの3D効果のつけ方も見事だ(写真5)。クライマックスのタワーでの戦いも,しっかりとデザインされ,レンダリングされている(写真6)。いずれも,最新プレビズ技術の賜物だと思う。担当は,当然The Third Floor社だろう(元はILM社の3階に居たプレビズ・チームが,スピンオフして作った会社である)。 
  
 
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写真4 中盤の雪山のシーンのアクションはプレビズの賜物
 
 
 
 
 
写真5 滑降や落下シーンでの立体感の出し方が上手い
 
 
 
 
 
 
 
写真6 『トランスフォーマー』譲りの派手なアクション演出
(C) 2014 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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