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O plus E誌 2016年1月号掲載
 
 
クリムゾン・ピーク』
(ユニバーサル映画 /東宝東和配給 )
      (C) Universal Pictures.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月8日よりTOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー公開予定]   2015年11月17日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  美術センス抜群の,これぞゴシック・ホラー  
  前の2作が年間No. 1, 2なので,ついつい軽視しがちだが,本作もメイン欄で語るべきVFX作品である。と自分に言い聞かせているが,数年したら,きっと題名を聞いても思い出せない可能性大で,それでいて,映像の一端を見て,すぐ思い出す類いの映画だ。
 というのは,題名が余りにも陳腐であり,映像は鮮烈だからである。よく似た題の『クリムゾン・タイド』(95)は,デンゼル・ワシントン,ジーン・ハックマン共演のハリウッド映画で,良作の多い潜水艦ものの中でも屈指の名作である。『クリムゾン・リバー』(00)は,ジャン・レノ,ヴァンサン・カッセル共演の仏映画で,猟奇殺人事件を追う刑事ものであった。それに対して,字数まで同じで紛らわしい本作は,ホラー・サスペンスの意欲作である。北イングランドの古い大きな屋敷が舞台で,霊感のある若い女性が次々に登場する亡霊を目にする。後年ゴシック・ホラーの代表作に数えられることだろう。
 監督は,ダーク・ファンタジーが得意なギレルモ・デル・トロ。『ヘルボーイ』(04年10月号)『同/ゴールデン・アーミー』(09年1月号)『パンズ・ラビリンス』(07年10月号)等で,当欄ではすっかりお馴染みの監督だ。日本のコミックや特撮映画の影響を受け,『パシフィック・リム』(13年8月号)では,その造詣の深さを遺憾なく発揮し,日本人好みの怪獣映画を見せてくれた。本作は,この監督の出世作である『パンズ・ラビリンス』の世界に回帰したかのような印象を受ける。
 10歳で亡き母の幽霊と遭遇し,それ以降,霊感が備わってしまった女性イーディスを演じるのは,『アリス・イン・ワンダーランド』(10年5月号)のミア・ワシコウスカ。この初主演作でブレイクし,当代きっての売れっ子女優の1人となった。最近作『奇跡の2000マイル』(15年8月号)では,過酷な自分探しの旅を敢行する現代女性を演じて新境地を見せたが,本作の主人公は,過去の作品通りのイメージで登場する。即ち,『ジェーン・エア』(12年6月号)での古風で陰気な屋敷,夫の隠された秘密という設定,『イノセント・ガーデン』(13年6月号)での無垢で鋭敏な感性をもつ主人公という役柄も,本作にそのまま継承されている印象だ。つまるところ,ゴシック・ホラーにぴったりの美意識をもつ監督が,自らのオリジナル脚本で,その主人公にぴったりの人気女優を起用して撮った映画なのである。
 共演は,野心的な実業家でイーディスの夫トーマス役に,『マイティ・ソー』シリーズで悪役ロキを演じたトム・ヒドルストン,その姉ルシール役に『ゼロ・ダーク・サーティ』(13年3月号)のジェシカ・チャステインというキャスティングだ。この2人が悪役であることは中盤までに分かるが,後半は愛の三角関係が織りなすサイコ・ミステリーであり,亡霊が頻出するホラーでもある。
 以下,当欄の視点での見どころである。
 ■ 赤と青のポスター(写真1)が鮮烈で怖い。そのポスターとデル・トロ監督作品というだけの予備知識で試写会に臨んだが,まずタイトルバックの映像と音楽に魅せられてしまった。屋内の一室の机上に始まり,荘厳で陰気な大邸宅の廊下や外観へと移る映像で,全編が美術的に凝りまくった作品だと想像できる。音楽も見事にマッチしている。このシーンで飛ぶ蛾は,当然CGの産物だろう(写真2)。このメイン・タイトルのデザインは,カナダ・トロント市のIAMSTATIC社だそうだ。
 
 
 
 
 
写真1 色の組み合わせだけで,いかにも恐ろしげだ
 
 
 
 
 
写真2 計算され尽くしたオープニング・タイトル・シーン
 
 
  ■ 赤土が流れ出すと深紅に染まる山頂(Crimson Peakの由来)に建つ,荒れ果てた大邸宅という設定だが,欧州のどこかの屋敷か城を探してきたのかと思いきや,本作でのオリジナル・デザインのようだ。広大な屋敷の屋内は,丸ごとセットとして組んだようだ(写真3)。中に飾られている絵画や調度類の選択も見事だ。間違いなく,各映画祭で美術賞,衣装デザイン賞にノミネートされることだろう。これらは全部実物として,一方,建物の外観はどうだろう? 勿論,精緻なミニチュアが製作されただろうし,一部外壁は実物かも知れないが,尖った屋根や塔の部分はCGでの描画と思われる(写真4)
 
 
 
 
 
写真3 屋敷内は丸ごとセットを組んだという。リッチだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真4 外観も威容だが,玄関ゲートから邸宅本館までの長さに驚く
 
 
  ■ 様々な超常現象や亡霊のシーンは,VFXの活躍の場であることは言うまでもないが,深紅色の亡霊は,実物を製作し,可能な限りこれを用いたそうだ(写真5)。グロテスクなミイラ状の姿はあまり眺めていたくないが,ホラーに相応しいデザインである(写真6)。CG/VFXの担当は,こちらもトロントにあるMr. Xだ。
 
 
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写真5 こうやって見ると少し滑稽だが,映画中では結構怖い
 
 
 
 
 
写真6 目を背けたくなるが,しっかり確認しよう
(C) Universal Pictures.
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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