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O plus E誌 2011年8月号掲載
 
 
 
 
『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』
(パラマウント映画)
 
 
      (C) 2011 PARAMOUNT PICTURES

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [7月29日よりTOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー公開予定]   2011年7月13日 TOHOシネマズ 梅田[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  なるほど,これは3Dで観るだけの価値はある!  
  宇宙から来た金属生命体と人類の攻防戦を描くシリーズの3作目にして,これまた最近の方程式通り,初の3D作品である。製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグ,マイケル・ベイの名前は,それぞれ先月公開の『SUPER 8/スーパーエイト』と今月公開の『アイ・アム・ナンバー4』(11年7月号)で見かけたばかりだが,本作は前2作と同様,自らメガホンをとっている。
 主演は,S・スピルバーグお気に入りのシャイア・ラブーフ。本シリーズの他に,当欄で取り上げた『ディスタービア』(07年11月号)『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08年7月号)『イーグル・アイ』(08年11月号)『ウォール・ストリート』(11年2月号)で主演/準主演級を演じている。CGアニメ『サーフズ・アップ』(07年12月号)の主人公の声や 『ニューヨーク,アイラブユー』(10年3月号) の小編の1つにも登場するなど,売れっ子中の売れっ子だ。本シリーズ中では浮気性なのか,毎回彼女を変えている。本作のヒロインはロージー・ハンティントン=ホワイトリーなるモデル出身の新人女優が起用されている。
 助演陣には,パトリック・デンプシー,ジョシュ・デュアメルらの名前が並ぶ。さらにジョン・タトゥーロ,フランシス・マクドーマンド,ジョン・マルコヴィッチといった曲者俳優を見ると,まるでコーエン兄弟作品のようだ。彼らより登場場面が多いロボットの声の出演に,ピーター・カレン(オプティマスプライム),ヒューゴ・ウィーヴィング(メガトロン)に加えて,センチネルプライム役にレナード・ニモイを起用したのが話題だ。あの『スタートレック』シリーズのMr.スポックである。日本人には吹替版の声しか馴染みがないが,アメリカ人なら彼の声だけでSF映画としての重みが増すのだろう。
 例によって,金属生命体の内,人類との共存をめざす「オートボッツ」(写真1)たちと地球を侵略しようとする「ディセプティコンズ」たち正邪両軍の戦いに人類が巻き込まれる話だが,本作では話の発端をアポロ宇宙計画の時代にまで戻している。1969年7月20日,あの歴史的なアポロ11号の月面着陸の記録映像をふんだんに取り入れ,あろうことかニール・アームストロングとエドウィン・オルドリン両宇宙飛行士が,実名でこの物語に絡む。彼らが地球から見えない月の裏側で発見したのが,不時着した巨大宇宙船だったという訳だ。
 
   
 
 
 
写真1 主人公サムを守るのはお馴染みのオプティマスとバンブルビー
 
   
  物語はアポロ時代を中心に進むのかと思いきや,これは「つかみ」に過ぎず,すぐに話は現代に移り,お決まりの両軍のバトルが展開する。3作目ともなれば,メカの変形シーンやバトルがパワーアップしているのは当然だが,そこで注目すべきが3D映像の出来映えである。
 本作も「2D→3D変換」だと聞いていたのだが,どうも様子が違う。フルCGだと思い込んでいた後述の『イースターラビットのキャンディ工場』が実写+CG中心であったのと同様,しばらくして,本作はステレオカメラによるリアル3Dが中心であると気付いた。嬉しい誤算だった。マイケル・ベイ監督は,ジェームズ・キャメロンの助言を得て,約65%をリアル3Dで撮影し,残りを「2D→3D変換」に頼ったという。賢明な選択だ。光沢感のあるメカロボットはきれいに合わせた3Dの焦点面で特に威力を発揮する(写真2)。ユニバーサル・スタジオで観た,あの『ターミネーター2:3D』の感激が甦ってくる思いだ。
   
 
写真2 敵役となるセンチネルプライム。3Dで見ても存在感抜群。
 
   
  ワシントンD.C.でのカーチェイスは3D効果抜群であったが,シカゴが舞台となってから,一段とパワーアップする(写真3)。重いステレオカメラを飛行機やヘリに積んで,市街地を手当たり次第に空撮したというが,その素材が見事に生かされている。3D効果を意識した構図で,2倍の分量となったロトスコーピングやCG合成処理の威力が発揮されている(写真4)。CG/VFX担当は,前2作と同様,ILMとデジタル・ドメインで,3D変換をLegend 3D社が担当している。
   
 
 
 
写真3 シカゴ市街地を舞台に大バトルが展開する
 
   
 
 
 
写真4 3Dを意識したカメラアングルも随所に登場
(C) 2011 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
   この映画は,絶対に3Dで,なるべく大きなスクリーンで観た方がいい。終盤30分が圧巻で,よくぞここまでのアクションをデザインしたものだ。物語は凡庸でも,映画館でしか観られないスペクタクルがここにある。これがハリウッド流のケレンであり,英国勢の繊細さに対抗するパワーの表われである。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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