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O plus E誌 2008年7月号掲載
 
 
 
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』
(パラマウント映画)
 
      TM & (C) 2008 Lucasfilm Ltd.. All Rights Reserved. Used under authorization.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [6月21日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2008年6月14日 TOHOシネマズ二条[先行上映]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  19年ぶりに甦った冒険活劇,概ね期待通りの出来映え  
 

 映画ファンなら誰もが知ってる人気冒険活劇シリーズの4作目である。まさか,本シリーズまでが復活再登場するとは思わなかった。3作目『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(89)から,何と19年も経っている。『ダイ・ハード4.0』(07)の12年ぶりよりもずっと長い。これじゃ,かつての阪神タイガースの優勝間隔並みだ。
 言うまでもなく,ジョージ・ルーカスが原作で,スティーブン・スピルバーグが監督したシリーズだが,G・ルーカスはSWシリーズを作り終えて退屈し,S・スピルバーグも最近燃えるものがないようだから,2人して古い引き出しを開けたくなったのだろうか(写真1)。製作決定を聞いた時は,今更ハリソン・フォードが老齢に鞭打つ姿を観るのもつらいなと思ったのだが,やはり公開が近づくと気になる作品だ。大方の映画ファンも同じ想いだろう。
 結論を先に言えば,概ね予想通りの出来映えだ。インディ・ジョーンズらしい展開を期待するファンにも,予備知識はなく単に冒険アクション大作として観た観客にも,満足度85点といったところだろうか。当欄にとっても,スケールの大きな視覚効果は約20年間のVFX技術の進歩を感じさせるものだった。とはいえ,大きなサプライズはなく,それが満点でない所以である。
 時代設定は1957年の米ソ冷戦時代だ。『最後の聖戦』が1938年の設定だったから,そこから正確に19年を経過させている。アメリカ人はエルヴィス・プレスリーやビーチ・ボーイズが大好きだから,きっと出て来るなと思ったら,冒頭からエルヴィスの極め付き「ハウンド・ドッグ」が流れる。彼らはこの曲を聴いただけで1957年当時の世界をイメージできるのだろう。
 ネバダ州の米軍基地に,アメリカ兵を装ったソ連のKGB工作員たちが侵入するところから物語は始まる。その隊長ドフチェンコの顔がプーチン首相によく似ているのがご愛嬌だ。そこに連れて来られたインディ・ジョーンズは,トレードマークのフェドーラ帽をかぶり,雑嚢を肩から下げ,革ジャン姿という19年前そのままの出で立ちで,ここでファンはまず拍手喝采だ。さすがにハリソン・フォードの老いは隠せないが,その時間経過をそのままストレートに出した物語設定である(写真2)

 
     
 
写真1 何やら余裕のG・ルーカス(製作総指揮)とS・スピルバーグ(監督)   写真2 さすがに年齢は感じさせるが,この出で立ちには痺れる.
 
     
   今回の宝探しの対象は,神秘的な力をもつ古代秘宝「クリスタル・スカル」で,冒険の旅は南米のペルー,インカ帝国の首都クスコからアマゾン地域へと及ぶ。第1作『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)のヒロイン,カレン・アレンが27年振りにそのままの役柄マリオンで登場する。彼女の息子マット役に起用され,本作で大活躍するのは,『トランスフォーマー』(07年8月号)『ディスタービア』(同11月号)のシャイア・ラブーフ。スピルバーグ監督のお気に入りだ。この母子とインディの関係は,容易に想像できるだろう(写真3)
 唯一のサプライズは,敵役の女指揮官スカルプ大佐だった(写真4)。存在感のある演技で,将来は名のある女優になるだろうと思ったのだが,これが何とケイト・ブランシェットだった。「ゴールデン・エイジ」後の女王様が,ソ連の工作員をしておられたとは……。それじゃ存在感があるのは当然だが,極悪非道の敵に描かれていないのは,オスカー女優への遠慮が働いたのだろうか。  
 
     
 
写真3 老いたインディとこの母子の活躍が見もの   写真4 今をときめく大女優が悪役に挑戦とは,驚き!
TM & (C) 2008 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. Used under authorization.
     
 
   以下は,VFXの見どころである。
 ■ クリーチャー・デザインにStan Winston Stuidioを起用した以外は,VFX担当はILMだけだ。10社近くの分業が当たり前の最近の大作では珍しい。前3作でいずれもオスカーを得ただけに,ILMにとって他社には手を触れさせたくない想い出のシリーズなのだろう。
 ■ まずは,前半の核実験のシーン。爆風の表現は過去にも観た光景だが,スケールが大きく,仕上げは上質だ。至近距離から観たキノコ雲まで登場させるというオマケまでついている(現実にあっちゃ困るのだが)。
 ■ 動物たちは,愛嬌のあるネズミから始まり,サソリや猿と続くが,真打ちは人を襲う軍隊アリの大群だ。CG表現ならこの数は簡単とはいえ,圧巻である。
 ■ 軍用車でのカーチェイスが見せ場の1つだ。並走する車上での演技は実写だろうが,それを丸ごと密林の中や川沿いの崖上に配置させたのはデジタル合成技術のなせる技である。前3作ではマット画に頼っていただけに,技術の進歩をまともに感じさせるシーンである。滝から3度落下するシーンも破綻のない,好い出来だ。
 ■ 水晶製の頭蓋骨が戻り,13体の骸骨が合体し,王国が崩壊して行くクライマックスのボリュームも,ほぼ予想された水準だ。ネタバレになるので書けないが,1947年の事件やロズウェルという言葉の断片から,王国の謎とエンディングも想像できるだろう。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分から追加してします)  
   
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