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O plus E誌 2008年11月号掲載
 
イーグル・アイ』
(ドリームワークス映画
/角川映画&角川エンタテインメント配給)
 
(C) 2008 DREAMWORKS LLC.
オフィシャルサイト [日本語]
[10月18日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急洋画系にて公開中] 2008年9月30日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]
   
(注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)
ほぼ予想通りの娯楽作,見どころはアリアの描写

 巨匠スティーヴン・スピルバーグが10年以上暖めていたアイデアの映画化だという。未来社会の恐怖を描くSFとしてではなく,ネット社会のインフラが整った今,現実味のあるテーマとして描けるようになったからだというコメントが添えられている。それ以上の事前情報はほとんど流されず,スチル写真も核心を突くものはない。恒例のじらし作戦である。
 『トランスフォーマー』(07年8月号)『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08年7月号)に起用したお気に入りの若手スター,シャイア・ラブーフが主演だが,スピルバーグ自身は製作総指揮だけで,監督はD・J・カルーソに任せている。そーか,この監督と主演は,昨年の『ディスタービア』(07年11月号)のコンビだった。現代版『裏窓』という位置づけの青春映画で,スリラー&ホラーとしても秀逸だったので,今度もテンポの良い娯楽作品が期待できる。
 予告編だけが少し前から流れていた。携帯電話から「すぐ逃げなさい」と警告する女性の声が聞こえ,息をつく暇もなく危機に巻き込まれる……。デジタル・テクノロジーの進歩を手中に収めた何ものかが,一般市民に牙を向くというプロットらしい。絶体絶命の状況に追い詰められ,未曾有のアクション映像の連続だともいう。これだけの情報から,どんな映画が想像できるだろうか? 「Eagle Eye」(鷹の目)というからには,『バイオバザードIII』(07年11月号)に登場する監視衛星を想像してしまう。ネット社会の恐怖というからには,盗聴システム「エシュロン」で個人情報が丸裸にされるとも受け取れる。映画のテンポとしては,ウィル・スミスやコリン・ファレルが活躍するノンストップ・アクション調だろうか。筆者の予想は,そんなところだった。
 誰でもできる無難な予想だが,これほどその通りだった映画も珍しい。事件に巻き込まれ,運命を共にする女性は,『M:i-III』(06年7月号)『近距離恋愛』(08年7月号)のミシェル・モナハンが演じる。この若者には,年上の女性が似合う。彼らを誘導する謎の存在がこの映画の主役で,他の登場人物のキャスティングは適当でいいと感じさせる映画だ。以下,多少ネタバレを含むが,容易に想像できる範囲内なので許して頂こう。
 期待通りのジェットコースター・ムービーだが,前半のカーアクションは,なかなかのものだ(写真1)。言葉では表現しにくいが,アクション映画通を飽きさせない新しい工夫が感じられる。中盤から後半にかけて,監視システムの正体が徐々に明らかになる過程が,次なる見どころだ(写真2)。2人の行動の一部始終を追うのは,「エシュロン」ではなく米空軍の機密計画だったが,似たようなものだ。監視モニターの表示画面やタッチパネル操作もカッコイイ。そして,極め付きは「アリア」と呼ばれるスーパーコンピュータの描写である。明らかに『2001年宇宙の旅』(68)のHALを模した存在として描かれている。営業戦略上か,アリアを描いたスチル画像が提供されないのが残念だ。SFファンなら,これを観るためだけに映画館に足を運ぶ価値はある。
 この映画のCG/VFXは,Sony Pictures Imageworksが主担当で,Imageworks India,Pacific Title,Pixel Playground等の名前も並ぶ。技術的には特筆するものはないが,ビジュアル的に結構優れている,金がかかっていると感じさせてくれる。この種の娯楽作品は,批評家受けはしないだろうが,観客の満足度は大だろう。筋立てとしては,疑問点が多々あるが,勢いで吹き飛ばしている。アクション映画はそれでいい。
 ところで,アリアの声を演じていたのは誰かと思って調べたら,何と,オスカー・ノミネート複数回を誇るベテラン女優ジュリアン・ムーアのようだ。公にクレジットされていないが,そりゃすごい。

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写真1 これは序の口。この後のカーアクションが凄い。   写真2 多数の監視モニター画面。こちらもまだ序の口。

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