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O plus E誌 2011年8月号掲載
 
 
 
 
『イースターラビットのキャンディ工場』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給 )
 
 
      (C) 2011 Universal Studios

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [8月19日よりTOHOシネマズ 有楽座ほか全国ロードショー公開予定]   2011年6月21日 東宝東和試写室(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  全編フルCGでなく,ライティングが見事なVFX作品  
  動物キャラが主人公のCG作品である。てっきり,フルCGアニメだと思っていた。観賞後,改めてカラフルなプレスシートを見ても,ポスターを見てもそうだとしか思えない。『怪盗グルーの月泥棒 3D』(10年11月号)のスタッフ最新作をウリにしているから,好評だったこのフルCGアニメを意識させる営業戦略らしい。あるいは,夏休みのお子様同伴のファミリー映画は,もはや実写映画よりもCGアニメの方が集客力が上ということなのだろうか。この夏,ディズニー&ピクサーの『カーズ2』,ドリームワークスの『カンフーパンダ2』が登場するから,そこに堂々とぶつける作戦らしい。
 そのいずれかと比較し,まとめて論じるつもりだったのだが,こうして単独で取り上げるのには,理由がある。試写を見てから,本作が実写ベースでCG合成を中心としたVFX作品であり,かつユニークな存在であり,技術的にも見どころが大いにあると分かったからである。もう少し正確に言うならば,フルCG制作のパートもかなりあり,それと実写とCGの合成パートとのバランスや両者の融合のさせ方に見どころがある。
 原題はシンプルで,単に『Hop』だ。それをこの表題にしたのは,明らかにティム・バートンの『チャーリーとチョコレート工場』(05年9月号)を意識させようという戦略からだろう。モアイ像で有名なイースター島にキャンディの国があり,ウサギとヒヨコが世界中の子供たちのために,キャンディやチョコレートを作っているという想定である。復活祭(イースター)に卵とウサギはつきものだから,その語呂合わせでイースター島を舞台にしただけかと思ったら,この島名自体が復活祭の日に発見されたという由来からの命名らしい。
 映画冒頭で,ユニバーサル映画のオープンニングロゴの地球が歪んでいた。古い試写室で,上映前に少し映写機のトラブルがあったので,てっきりレンズ位置かフィルム送り機構がおかしくなったのかと思ったが,これはイースターエッグの形状だった。続いて,イースター島の映像。これが,どうみてもCG映像には見えない。いかにCG技術が進歩したとしても,ここまでとは……と感じたのだが,それもそのはず,本作は実写にCG合成のシーンの方が多いVFX映画だった。
 CGキャラの主人公は,キャンディ国のウサギの王子のイービー(EB: Easter Bunnyの意)で,彼がミュージシャンになることを夢見てハリウッドにやって来るという物語だ。監督は,『アルビン/歌うシマリス3兄弟』(07)のティム・ヒル。EBと出会う人間側の主人公・フレッド役のイケメン男優は,どこかで見た顔だと思ったら,ディズニー映画『魔法にかけられて』(08年3月号)で 王子様役を演じていたジェームズ・マースデンだった。徹底したファミリー路線である。
 VFXの主担当はRhyrhm & Huesで,アニマルトークを得意するこのスタジオにとっては,この程度のCGキャラの合成や話をさせることくらいお手のものだ。そう思って観察していたのだが,細部の表現が実に良くできている。EBのシャツの質感(写真1)やピンクベレー3人組のジャンプの動き(写真2)などが素晴らしい。約10年前に『スチュアート・リトル』(00年6月号)のコスチュームデザインや動きの表現に感嘆したのが,嘘のようである。EBとフレッドの絡みの部分は,ライティングの処理が秀逸だ。流行の物理ベース・レンダリングもグローバル照明も当たり前のように使いこなしている(写真3)
 
   
 
写真1 EBのシャツの質感も実写への合成も絶妙
 
   
 
写真2 これがEBを追うピンクベレー3人組
 
   
 
 
 
写真3 何げない場面にも,かなり高度なレンダリングが使われている
 
   
  一方のキャンディ工場内はフルCG表現だが,いかにもCGという描写で,子供っぽさを強調している(写真4)。ハリウッドでの実写パートとの意図的な対比である。このまま別世界として続くのかと思ったら,終盤,このフルCGの工場内に実写のフレッドが登場する。この裏返しともいうべきパートでのライティングの違和感のなさも見事だった。話そのものは他愛もない冒険譚だが,当欄としては,細部の点検を勧める作品である。  
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写真4 キャンディ工場内はフルCGアニメで表現
(C) 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
   
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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