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O plus E誌 2002年4月号掲載
 
 
 
『ロード・オブ・ザ・リング』補遺
 
 
       
         
     
   話題満載のこの大作,本年度のアカデミー賞でも13部門にノミネートされた。視覚効果部門は,予想通りこの作品と『パール・ハーバー』に加えて,もう1本もILMの『A.I.』がノミネートされた。本映画時評で昨年度ベスト1に推した『ムーラン・ルージュ』が8部門,追加で取り上げて絶賛した『アメリ』が5部門にノミネートされている。『ブラックホーク・ダウン』のリドリー・スコットが監督賞,『モンスターズ・インク』が音響効果賞,『メメント』が編集賞の候補というのも,この映画時評の評価の通りで,ここまで一致するといい気分である。
 この話題作の4度目の観賞は,公開後に日本語吹き替え版を見に行ったが,この出来栄えが素晴らしい。こういう長編原作の物語を圧縮した映画は,セリフに解説が多々盛り込まれるので,吹き替えの方が情報量が多く有利だ。VFXをじっくり観るのにも,字幕を気にしなくて済むので好都合である。
 先月はあまり情報ソースに頼らずに急いで原稿を書いたため,いくつか誤りがあった。以下で訂正・補足しておきたい。
 ■売れっ子プロデューサのバリー・M・オズボーンが,監督にピーター・ジャクソンを抜擢したように書いたが,これは誤りだった。P・ジャクソン自身が,名作『指輪物語』の映画化に執念を燃やして,ハリウッドのメジャー各社を説得に回り,そこでオズボーンに出会ったという。そして3部作まとめてニュージーランドで撮影という条件にOKをくれたのが,準メジャーのニューライン・シネマだったという訳だ。なるほど,雇われ監督の想像力では,この壮大で綿密な映像は作れなかっただろう。
 ■写真1(3月号,P.339)左下のカザド=ドゥムの橋では,2人のホビットはクロマキー撮影でディジタル合成だろうと書いた。前後のシーンはそうだったらしいが,このカットの2人はフルCGのDigital Doubles(CGの代役)のようだ。9人の旅の仲間は,全員3Dスキャナで体形がポリゴン化され,どのシーンでも代役にすり替えられるよう考えられていたとのことである。すべて関節や筋肉モデルをもっていることは言うまでもないが,皮膚の質感を出すのに10レイヤー以上のテクスチャを重ねているという。
 ■一方,右上のアルゴナスの門柱はCGでなく模型だろうと予想したが,こちらは大当たりで,約5mの高さのミニチュアだった。左上の裂け谷のシーンも予想通り,バルコニーとフロドだけが実物大のブルーバック撮影で,他はミニチュアとマット画とCGの多重合成である。Weta Digital社のVFXの腕もさることながら,Weta Workshop社のミニチュア製作の腕も大したものだ。
 
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  絶対オススメの日本語吹き替え版  
 
2度英語だけで見た後,字幕版を見てたのですが,この日本語吹き替え版がベストです。
私はこれが初めてですが,画面や表情との違和感はありませんでした。
主人公のフロドはじめ,魔法使いのガンダルフや人間のアラゴルンなども原語版のイメージをよく残しています。エルフ族の女王ガラドリエルや弓の名手レゴラスも日本の声優さんの方が表現力豊かだし,ホビットのサムは吹き替え版の方がフロドの召使いらしい口調で,むしろ原作小説に近い感じです。
字幕で書き切れないセリフだけでなく,出演俳優の演技力の限界を日本の声優さんが補っているんですね。
特にこの映画は,日本アカデミー賞に「外国語映画吹き替え賞」を新設して贈りたいくらいです(笑)。吹き替え版は子供向きという位置づけのせいか,春休みや午前中の回でしか上映しない映画館が多いのは残念なことです。洋画ファンに,字幕が第一という固定観念が強すぎるせいでしょう。
その点,DVDなら両方入っていていいですね。私も最近吹き替え版が好きで,『ハリー・ポッターと賢者の石』も『モンスターズ・インク』も吹替え版で見直しました。日本の声優さんは本当に上手いなと感じます。
プロはそうですが,人気タレントを使うとダメですね。『シュレック』の吹き替えは,ドンキー役の山寺宏一が芸術的と言えるほどにエディ・マーフィの味を出していたのに,浜ちゃんのシュレックはブチ壊しでした。
体形的にも近い方が感じが出ますね。『モンスターズ・インク』のサリーは「ホンジャマカ」の石塚英彦,マイクは「爆笑問題」の田中裕二で良かったですよ。
ところで,この『ロード・オブ・ザ・リング』は『ハリー・ポッター』と比較してどうですか。
映画としてのスケールはこちらが断然上ですが,ちょっと重く,楽しさという点では『ハリポタ』の方ですね。原作からすると,特に2作目が期待できます。
「大人も楽しめるファンタジー」と「小中学生対象の童話」という原作の違いが映画にも出ていますね。
それぞれで完結しているのも,『ハリポタ』の方が見やすいです。
気に入れば何度も見て行くという点は,この『ロード…』でしょう。VFXのレベルも上ですよ。
恐れ入りました。予想以上でした。3部作の完成時にはどうなっているか楽しみです。
『T2』から10年,『ジュラシック・パーク』から8年の進歩の結果がこれです。
この前『ジュラシック・パーク』を見たら,昔はこんなにチャチだったのかとビックリしました。
公開当時は最高峰の映像と絶賛され,子供が引きつけを起こすと恐れられたものです。この映画も10年したらどう感じるか,それも楽しみです。
 
   
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