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O plus E誌 2002年1月号掲載
 
 
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『アメリ』
(アルバトロス・フィルム配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][仏語   (2001年12月4日 銀座シネ・ラ・セット)  
         
     
  ディジタルで彩色したレトロなパリ  
   ハリウッド映画に関しては,VFX多用作品名はほとんど事前に把握できるが,フランス映画となると余り良い情報入手ルートがない。フランス語が読めないので,現地発のWeb情報も役に立たない。Imaginaの参加報告でも触れたように,フランスのCGスタジオの腕は悪くない。これまでCM製作が主たる市場だったのが,コストダウンとともに,普通の映画にもかなりディジタル処理が使われるようになってきた。
 この映画など,まったく見逃していた作品だ。映画雑誌や女性ファンの間で話題になっていたが,ディジタル視覚効果など無縁だと思っていた。気がついたときには試写会は終わっていて,既に東京・渋谷で単館上映が始まっていた。相当出遅れたが,まだこれから順次全国主要都市で公開されるというので,取り上げておきたい。
 モンマルトルのカフェで働く少女アメリの物語。楽しい悪戯で周りを幸せにする。国籍不明のミュージカル『ムーラン・ルージュ』(01)と違って,こちらは正真正銘のパリ製の洒落た可愛い逸品だ。フランスでは2001年4年末公開され,上半期の大ヒットとなった。評判を聞いて,シラク大統領やジョスパン首相も観たという。
 監督は,『ロスト・チャイルド』(95)『エイリアン4』(97)のジャン=ピエール・ジュネ。ひたすら暗い映画ばかりだったこの監督が,こんな明るい映画を撮ったというのでも話題だ。アメリ役に抜擢されたのは若手女優のオドレイ・トトゥ,彼女が恋する青年ニノ役は『クリムゾン・リバー』の監督のマチュー・カソヴィッツが演じている。いかにもフランス的カップルで爽やかだ。
 ポスプロでのディジタル処理は,1カットも疎かにしないこだわり派の監督に部分修正と色調整の威力を与えた。「映画は1カット1カットが絵画のようでなければならない」という黒澤明の言葉を実践し,全編を赤と緑で彩っている(写真1)。壁紙やテーブルクロスなどの室内装飾や登場人物の衣装はいうまでもなく,食材から枕やストローといった小道具まで,徹頭徹尾この2色だ。全体的に柔らかで暖かなタッチでありながら,時として非現実的色調で,赤と緑のコントラストが鮮やかだ。同じ極彩色でも,『ムーラン・ルージュ』の舞台画風や『オー・ブラザー!』の桑畑の鮮やかな黄緑とは意図が違う。こればかりは,本物を観て感じてもらうしかない。
 レトロ調のパリの街は,この監督のイメージするパリなのだろう。ポスター1枚に至るまで好みの通りに貼り替え,物理的に不可能な場合は,ディジタル処理で消去・合成を行ったとのことだ。メトロの駅の淡い緑色の壁も現実ではなく,ディジタル色変換の結果だろう(写真2)。
 兎や熊の形をした雲,動き出す絵の中の動物,アメリが水のように崩れ落ちるシーンなどにも,視覚効果を上手く使っている。写真3なども,ディジタルゆえの合成だ。考えてみれば『エイリアン4』の監督にとって,特殊効果はごく当たり前だったのかも知れない。
 
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写真1 全編ポインセチア・カラーでいっぱい
写真2 緑の壁のメトロ構内。この壁画も合成か? 写真3 左上に浮かぶは,アメリの想像シーン
 
     
  ポインセチア・カラーとアコーディオンの音色  
 
なるほど,若い女性好みの夢のようなパリ。ウチの娘には見せたくないです。また行きたがるから(笑)。
私はイタリアの方が好きですが,この映画は色も登場人物もいかにもフランスですね。
劇場で売っていたパンフでは,カフェの女主人を「清川虹子」になぞらえてましたが,アメリは若い頃の「浜美枝」を思い出しました。
いくらレトロなパリでも,それは古過ぎます(笑)。私は「安田成美」を思い出しました。
全編エスプリの塊りですが,この監督はただ者じゃないです。一分の隙もありません。アメリの誕生から,母親の突然の死,15組の連続セックス・シーンまで,呆れるようなアイデアと表現力です。
好青年のニノがポルノ・ショップの店員というのも,皮肉な設定ですね。幸せな映画を作ると言いながら,素直には作らないぞ,という感じが溢れてます。
よくぞまぁ,ここまで赤と緑にこだわったものだと感心しました。ところが,すっかりこの色に目が慣れてしまい,映画館を出てみたら,道行く人の服は皆ドブネズミ色で,まるでモノクロ映画のようでした。(笑)
でも,デパートやレストランのクリスマス・ツリーはこの色でしたよ(笑)。
ハハハ,映画の舞台は夏でしたが,確かに年末商戦シーズン向きの色でした。ほとんどのシーンで,それも全画面一括色調変換ではなく,部分的に色調整していますね。赤や青を全体的に強調するのには,昔から色フィルタを使っていましたが,こういう緑にするのには,ディジタル処理しかないでしょう。
音楽もチャーミングですね。歳末商戦のジングル・ベルとはだいぶ違います(笑)。アコーディオンやおもちゃのピアノの音色がメルヘンチックで,サーカスや遊園地を思い出しました。
ピクサー社の『Geri's Game』にも使われてましたね。ヤン・ティルセンという音楽家の過去のアルバムからの選曲と書き下ろし曲だそうです。
 
   
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