head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| INDEX | 年間ベスト5 | DVD特典映像ガイド | SFXビデオ観賞室 | SFX/VFX映画時評 |
title
 
O plus E誌 2002年4月号掲載
 
 
star star
『コラテラル・ダメージ』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
(c)2001 Warner Bros. All Rights Reserved.
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2002年2月7日 読売ホール)  
  [4月20日全国松竹・東急系にて公開予定]      
         
     
  公開延期で話題になったが,嫌みのない素直な作品  
   アメリカの戦意高揚の中,先月紹介の戦争映画2本が公開を早めての成功組なら,この映画は同時多発テロの後,直ちに公開中止になって話題を呼んだくちだ。妻子を爆弾テロで失った消防士のテロリストへの復讐物語だというから,あの時期にはむしろピッタリかと思ったのに無期延期になり,ようやく4ヶ月振りの公開となった。主演はアーノルド・シュワルツェネッガー。前2作がどうしようもない駄作で,これを挽回作にと考えたシュワちゃんも配給会社も出鼻をくじかれた形だ。
 監督は『逃亡者』(93)『ダイヤルM』(98)のアンドリュー・デイビス。ストーリーは,爆破テロで妻子を失ったロサンゼルス市消防隊長のゴーディが,犯人はテロリスト「ウルフ」(クリフ・カーティス)と判明しているのに,CIAもFBIも捜査を進めないのに業を煮やし,麻薬組織のテロリストの巣窟であるコロンビアへ単身乗り込んで個人的復讐を果たそうとする物語だ。現地で出会う若い女性セリーナ(フランチェスカ・ネリー)と密かに芽生える淡い関係,そこに絡むウルフとの確執,そして再びワシントンに狙いを定めるウルフとの戦い,といった展開はごくごく普通の映画である。
 なるほど,次にワシントンが狙われるという設定はあの時期には酷だったかも知れない。「コラテラル・ダメージ」(Collateral Damage)とは,国家にとっての「目的のための犠牲」という意味で,この言葉もテロの犠牲者の家族には向けにくかったのだろう。しかし,それを乗り越えてテロリストと戦うのがテーマなのだが,アメリカ自身の軍事行動がテロリストを生んだという設定も都合が悪かったのかと思われる。
 この映画,見やすいし,妙な気取りも嫌みもくどさもなく,なかなかいい。ストーリーのひねりも意外な展開も,映画としてはごく標準的で素直に楽しめる。これは監督の腕だろう。アクションも少なくないが,シュワちゃんにしては控え目だ(写真)。
写真 シュワちゃんも年のせいか,アクションはやや控え目
(c)2001 Warner Bros. All Rights Reserved.
 いつものような超人ではなく,多少タフな程度の主人公だ。テロリストに育てられた男の子を思いやる下りは『ターミネーター2』をも思い出させるが,生真面目で家族思いの役どころは,むしろハリソン・フォード的である.SFX & VFのX担当はFlash Film Works社で,余りな馴染みはない。爆発シーン,滝からの転落等の視覚効果は悪くないが,分量的にも多くない。結果的には,本映画時評として取り上げなくても良かったレベルだ。
 2月8日の公開時に,米国のマスコミの一部は凄まじい酷評をした。かなり感情的で,まだテロの余韻から醒めていなかったことを知らされた。この映画を貶さなければジャーナリズムでないと言わんがばかりの激しい筆致だった。これまでもっといい加減な設定や幼稚な結末のハリウッド映画を対象に商売をしてきたのに,この映画をスケープゴートに批評家面しようというのだろうか。
 ところが,公開第1週の興行成績は低めながらもNo.1で,観客の評価は中の上程度の冷静な評価だった。素直に,これはフィクションだ映画だと思って見れば,そんなに悪い作品ではない。あえて公開延期作品として意識する必要はない。無理に見るほどの映画でもないが,『光の旅人』と同様,見て損したとは思わない普通のハリウッド映画だ。
 
  ()  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next
 
     
<>br