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O plus E誌 2001年12月号掲載
 
 
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『ハリー・ポッターと賢者の石』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
(c)2001 Warner Bros. All Rights Reserved.
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2001年11月16日 ワーナー試写室)  
         
     
  VFXのためにあるかのような魔法の映画  
   言うまでもなく,46カ国語に翻訳され,世界100余国でシリーズ計1億冊以上を売ったという大ベストセラー児童文学の映画化だ。原作は全7巻で年1冊ずつ出版され,現在第4巻まで,邦訳は第3巻まで進んでいるが,映画は3年遅れでこれを追う。主人公ハリー少年の11歳から17歳まで1年ごとに描かれるというので,これは同じ子役俳優を起用して映画化するには最適の条件だ。
 書店を覗いたら,邦訳以外に各種ハリポタ研究本,原作者のJ・K・ローリングに関する本が10数冊も積まれていた。そんな世界中のポッタリアンの期待が膨らむ中,たまたま英米での公開と同日の11月16日に試写を見た。本稿執筆時点ギリギリで出た週末Box Office成績は,予想通り『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97)の記録を大幅に更新し,断トツの歴代No.1に躍り出た。この分では,トータルで『タイタニック』(97)の世界記録を抜くのではないかと噂されている。
 S・スピルバーグ,R・ゼメキスらとの監督争奪戦に勝って第1作,第2作を担当するのは,『ホーム・アローン』(90)『ミセス・ダウト』(93)のクリス・コロンバス。本時評で取り上げた『アンドリューNDR114』(00)も彼の監督作品だ。スタッフには,音楽のジョン・ウィリアムズを始め,脚本・撮影・美術・衣装にもアカデミー賞常連のハリウッド超一流メンバーの名が並んでいる。
 その半面,熱心な愛読者のこの監督は,原作通り撮影はすべて英国で,配役もすべて英国の俳優を当てることにした。同じ英語圏とはいえ,発音やアクセントにも完璧を期したのだろう。『シックス・センス』『A.I.』のハリー・ジョエル・オスメント君がハリー役を希望したというが,3,000人以上の候補者の中から選ばれたのは,まさしく11歳の英国少年ダニエル・ラドクリフだ。丸い眼鏡が実によく似合う。親友のロン,優等生の少女ハーマイオニーを演じるルパート・グリント,エマ・ワトソンも英国でのオーディションから選ばれた。周りを固めるダンブルドア校長(リチャード・ハリス),マクゴナガル副校長(マギー・スミス)以下,英国の名優陣も原作のイメージを見事なまでに再現している。
 11歳になったハリーが,ホグワーツ魔法魔術学校の入学許可証を受け取って,自分が魔法使いであったことを知る。この学校での生活,魔法の種類を解説しながら,仲良し3人組の冒険を描き,ハリーの両親を殺した闇の魔法使いヴォルデモートから,永遠の命を得る「賢者の石」を守るところまでが,第1作目の内容だ。
 魔法使いの物語だけあって,SFX/VFXのために書かれたような本である。出番は十二分に予想されたが,期待に違わず至るところで特撮,視覚効果のオンパレードだった。VFXの総監修は,『タイタニック』(97)『アルマゲドン』(98)『キャスト・アウェイ』(00)のロブ・レガート。彼の率いるSony Pictures Imageworksをはじめ,ILM,R&Hから,英国のMill Film,Cinesite,CFC等の米英のメジャーVFXスタジオが名を連ねている。クリーチャー・デザインはジム・ヘンソン・クリーチャーズ・ショップ,アニマル・トレーナーにはバード&アニマル・アンリミテド社代表のゲイリー・ゲイロー等々,クリーチャーやミニチュア制作,フィジカルFX担当までSFX界の最高・最大レベルの陣容を配している。
 視覚効果は多彩だ(写真)。次々舞い込む手紙の山,9と3/4番線への入口,組分けを宣告する帽子,蛙やフクロウや怪獣たち等々,VFXシーンは数え切れないほど登場する。その分,玉石混淆ですべてが最高レベルな訳ではない。前半では空飛ぶ箒に乗って対戦する人気スポーツ「クィディッチ」,後半では「魔法界のチェス」のシーンが見せ場だが,後者の方がずっと出来がいい。
 残念ながら現時点では,メイキング情報もVFXを駆使したスチル写真もほとんどオープンになっていないので,機会があれば再度論じることにしよう。
 
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(a) 空中浮遊はワイヤー吊り? (b) チェスの駒の石像はCGに変化する (c) これはどう見てもディジタル合成
写真 SFX/VFXには多数社が参加した
(c)2001 Warner Bros. All Rights Reserved.
 
     
  違和感なく,魅力的なビジュアル  
 
驚きました。若干の違いはあるものの,ここまで原作に忠実とは。キャスティングはピッタリだし,戸田奈津子さんの日本語字幕を翻訳者の松岡佑子さんが監修していて,用語も完璧です。
タイトルは,なぜかアメリカ版だけ「Sorcerer's Stone(魔術師の石)」だそうですが,我々が見たのは無事原題通りの「Philosopher's Stone(賢者の石)」の方でした。
原作本自体が分厚いんですが,この映画の2時間半も子供が見るには長過ぎます。エピソードが繋がっているので,簡単には切れなかったのですね。
小説の映画化独特の流れで,第1作目ゆえの説明調の長さですね。この1作だけで完結なら,もっと大胆にアレンジして面白く出来たと思いますね。でも,この超ベストセラーに対する読者のイメージを壊さずに映画化するには,これしかなかったんでしょう。
文字でしか読んでなかったのに,素直に映像に溶け込めました。魔法魔術学校の外観も授業風景も想像通りで,ビジュアル面では合格点です。
グロチェスター大聖堂を中心に撮影された実写映像に,数々の視覚効果が施されているようです。大道具,小道具の質感は素晴らしいのですが,背景のマット画とのライティングのミスマッチが何ケ所か気になりました。
私は,クィディッチのシーンが少しチャチに感じました。遠くに飛んでいるのは,いかにも人形みたいだし,プレイフィールドの作りは安っぽいし,旗なども皆同じ形で揺れてました(笑)。見せ場だけに,もうちょっと丁寧な絵作りが欲しかったです。
箒に乗った宙吊り演技のスタジオ内撮影,プレイフィールドはCG,背景に屋外の実写とマット画を使って多重合成したのでしょう。メインが宙吊りの実写で動きも激しいので,ここの合成は,マッチムーブもライティングも難しいんですよ。『スター・ウォーズ エピソード1』のポッド・レースを彷彿とさせますが,CGをしっかり作り込んであった分,あちらの方が上ですね。
連作であることやファンの数からしても,この両シリーズは何かと比較されることでしょうね。
舞台は違えど,登場人物設定は似てますよ。片やルーク・スカイウォーカー,新しいジェダイの騎士。こなたハリー・ポッター,魔法界の期待の星(笑)。
男2人と女1人の組み合わせも似てますね。
共に父親は悪の手にかかって殺されて…。まさか3作目になって,実はヴォルデモートがハリーの父親だった,ハーマイオニーは妹だった,なんてことはないでしょうね(笑)。
ハハハ,それはないです。
何はともあれ,こういう夢のある児童文学に世界中が熱狂し,映画の出来に一喜一憂するというのは喜ばしいですね。平和でいいです。
少なくとも,テロ事件でテレビに釘付けよりは健全ですね。2作目は魔法の授業も一杯出てくるので,もっと楽しい作品になるでしょう。
 
   
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