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O plus E 2022年Webページ専用記事#7
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「Disenchanted (Original Soundtrack)」
(Walt Disney Records)

   
 
本作の国際盤 前作の国際盤
 
 
  映画本編『魔法にかけられて2』の紹介記事アップロードからかなり遅れてしまったが,是非とも語っておきたいサントラ盤だ。最近にしては珍しく,デジタル配信だけでなく,輸入盤CDが発売されている(国内盤はない)。いずれも下記の14曲収録だが,15曲収録の前作のサントラ盤よりもミュージカル性は高く,歌唱曲の比率が高い。この続編の監督アダム・シャンクマンが元々ダンサー兼振付師であり,監督としては映画『ヘアスプレー』(07年10月号)やTVシリーズ『glee/グリー』を手がけるなど,ミュージカル作品を得意としていることもあるのだろう。

  1. “Andalasia”  Griffin Newman
  2. “Even More Enchanted”  Amy Adams
  3. “The Magic Of Andalasia”  James Marsden & Idina Menzel
  4. “Fairytale Life (The Wish)”  Amy Adams
  5. “Fairytale Life (After the Spell)”
    Amy Adams, Gabriella Baldacchino & Patrick Dempsey
  6. “Perfect”
    Gabriella Baldacchino, Ann Harada, James Monroe Iglehart & Michael McCorry Rose
  7. “Badder”  Amy Adams & Maya Rudolph
  8. “Love Power”  Idina Menzel
  9. “Love Power (Reprise)”  Amy Adams
 10. “Even More Enchanted (Finale)”  Amy Adams
 11. “Disenchanted Score Suite”  Alan Menken
 12. “Hard Times For Heroes (Demo)”
    Patrick Dempsey, Ann Harada, James Monroe Iglehart & Michael McCorry Rose
 13. “Something Different This Year (Demo)”  Gabriella Baldacchino & Kolton Stewart
 14. “Love Power (End Credit Version)”  Idina Menzel

 特筆すべきは,伝説のAlan Menkenがこの映画の音楽担当であることだ。ミュージカル仕立てのディズニー映画の大半を支えてきた作曲家で,オリジナルスコアと歌唱曲の両方をこなす。『リトル・マーメイド』(89)『美女と野獣』(91)『アラジン』(92)『ポカホンタス』(95)は,アカデミー賞の作曲賞と主題歌賞の両方を受賞し,計8個のオスカーを得ているというから,輝かしい業績だ。どの主題歌も誰もが知る名曲で,既にスタンダードナンバーとなっている。本作での作詞のパートナーは,前作に引き続きStephen Schwartzである。続編も担当するのは不思議ではないが,劇場公開なしでDisney+だけの配信であり,本編も今イチのレベルの映画に,この黄金コンビを音楽担当に当てるのは,少し贅沢と思える人選なのである。
 前作の15曲は,9曲がAlan Menkenのオリジナルスコアで,歌唱曲は6曲しか入っていなかった(国内盤には,日本語歌唱曲4曲がボーナストラックとして追加されていた)。後述するように,曲を用意し,録音しておきながら,最終的には歌唱曲がいくつかカットされたそうだ。それに対して,続編のこのOSTでは,器楽曲は“Disenchanted Score Suite”だけで,他はすべて歌やセリフが入っている。映画自体のミュージカル性が高かったことの証しと言える。
 1曲目の“Andalasia”だけが既存曲で,映画冒頭の2Dアニメ部分に流れる。前作でのスコアにコーラスを入れ,さらにリスのピップ役のGriffin Newmanが前作の「あらすじ」を語っている。前作で3曲を歌っていた主役のAmy Adamsは,本作では(デュエットも含め)6曲も歌っている。改めて,かなりの歌唱力だと感じた。いや,この15年間で容色は衰えたものの,歌唱力はかなりアップしたとも言える。本編の記事中にも書いたが,この一連の歌唱は絶対英語で聴くべきだ。他国語の場合,全く興醒めになる場合が多い。アニメではないから,俳優の口とリップシンクが取れているのは当然だが,Stephen Schwartzの歌詞もAlan Menkenの曲も,英語での歌唱を前提として絶妙に作られているからだ。
 最大の注目点は,ナンシー役のIdina Menzelが劇中で“The Magic Of Andalasia”と“Love Power”を歌い,後者はエンドソングとして別バージョンが流れ,このOSTの最後にも収録されていることだ。踊りながら高らかに歌う8曲目よりも,14曲目のエンドソングの方が格段に出来がいい。相変わらず堂々たる,凄まじい歌唱力だ。『アナと雪の女王』(14年3月号)で女王エルサの声を演じ,あの主題歌“Let It Go”を大ヒットさせた実力からすれば,当然の出来映えである。余談だが,この“Love Power”の中に「Let it glow」という歌詞が含まれているのに,少し笑ってしまった。
 Idina Menzelは女優兼歌手で,トニー賞の主演女優賞を獲得したミュージカル・スターだが,前作『魔法にかけられて』(08年3月号)では1曲も歌っていなかった。正確に言えば,主題歌も含めて2曲歌っていたのに,いずれも編集段階でカットされてしまったとのことだ。当時は,後年“Let It Go”を歌う大きな存在になるとは思わなかったのだろう。実を言うと,ロバートの元カノで,ジゼルの代わりにエドワード王子と結婚することになる脇役のナンシーを演じていたのがIdina Menzelであったとは,筆者も知らなかった。
 前作のOSTの歌唱曲6曲の内,3曲も同年のアカデミー賞主題歌賞にノミネートされていた。今回の“Love Power”は,さすがAlan Menkenと思える名曲で,前作の3曲よりも優れていると思う。ところが,前哨戦のゴールデングローブ賞(GG賞)には,この映画は音楽賞にも主題歌賞にもノミネートされていない。これはどうしたことだろう? ネット配信映画は対象外とされたのだろうか? Netflix配信の『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(22年Web専用#7)は,長編アニメ賞と主題歌賞にノミネートされ,他の同社独占配信映画も数作が作品賞や俳優賞部門に名を連ねているが,いずれも配信前に少しだけ映画館で上映されていた。GG賞やアカデミー賞の最新の審査基準はよく知らないが,劇場公開なしの場合は対象外となっているのかもしれない(コロナ最盛期には,条件緩和されていた)。だとすれば,“Love Power”がオスカーを獲得する機会はなく,残念なことだ。いきなりDisney+での配信に踏み切ったディズニー本社の判断は,絶対に間違っていると言わざるを得ない。
 
   
 

■「Gli Anni Più Belli (Colonna Sonora Originale)」
(Lotus Production)

   
 
 
 
  もう1本,音楽を紹介しておきたい映画がある。上記の表題から邦題は想像できないが,アルバムのジャケット画像の男女4人から,短評欄の最後で紹介したイタリア映画『離ればなれになっても』だと分かるはずだ。イタリア出身のガブリエレ・ムッチーノが,故国の映画の伝統を守るべく企画した映画だけあって,音楽的にも,まさにその伝統を継承している。ただし,このサントラ・アルバムの紹介は,ちょっと複雑な事情がある。紹介記事中に「劇伴音楽も挿入歌も素晴らしい」と書いたのだが,それがそっくり簡単に入手できる訳ではないからだ。
 音楽担当は,Nicola Piovani。ロベルト・ベニーニ監督の『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)の音楽担当に起用され,アカデミー賞作曲賞を受賞している。G・ムッチーノ監督の前作『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』(19年5・6月号)の音楽も担当していたので,今回が再タッグである。また,マルコ・ベロッキオのマフィア映画『シチリアーノ 裏切りの美学』(20年7・8月号)の音楽も担当していた。当時の紹介記事では,『ゴッドファーザー』(72)の影響を感じる格調高い映画で,故ニーノ・ロータの後継者らしい美しい音楽だと書いている。本作でも,イタリア製の人生賛歌の映画に相応しいオリジナル・スコアを生み出している。Amazon PrimeやApple Music等から入手できるのは,彼が作曲した7曲入りのサウンドトラック・アルバムである。
 一方,劇中の随所で流れていた歌唱曲は,いずれも軽快なポップ・ナンバーだった。どうやら,すべてイタリアを代表する人気シンガー・ソングライターClaudio Baglioniが歌っているヒット曲のようだ。それならいつでも入手できると思ったのだが,これが甘かった。イタリア人の大半が知る既発表曲のようで,本作で採用された曲だけのコンピレーション・アルバムはリリースされていない。輸入盤として彼のアルバムは複数入手できるようだが,どのアルバムに収録されている曲なのかが分からない。こうした場合,YouTubeにはそれらを集めた投稿があることが多いのだが,今回は存在しなかった。ハリウッド映画の場合は,IMDbに劇中利用曲のリストがあるのだが,本作にはそれもなかった。よって,映画観賞中には素晴らしい曲ばかりだと感じておきながら,それをもう一度確認することができない。
 ようやく見つけたのは,Claudio Baglioniが歌う主題歌の“Gli anni più belli”だ。Spotifyから入手できるアルバムには,1曲目にこの曲が入り,Nicola Piovani のスコアと併せて全8曲構成となっている。YouTubeでは,この曲だけのOfficial Videoを見ることができる。
 
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