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O plus E誌 2007年10月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『ストンプ・ザ・ヤード』:ダンス・バトルを題材にした学園ものの青春映画だ。「ストンプ」とは,アフリカ系アメリカ人に伝わる群舞で,手足で正確なリズムを刻む。この映画では,そこにストリート・ダンス,ヒップホップの味つけも加えている。天才ダンサーの主人公の加入で,負け続けの弱体チームが全米ストンプ大会に向けて猛特訓,という筋立てはお決まりのパターンだが,予想通り決勝戦のダンス合戦は圧巻だった。出演者の大半が黒人であるブラック・ムービーだが,敵対する相手が白人でなく,黒人社会の中にも権力者階級があり,格差があるのが印象的だった。
 ■『さらばベルリン』:第2次世界大戦終結期のベルリンを舞台にしたフィルム・ノワール調のサスペンス映画だ。監督はS・ソダーバーグとくれば,主演は当然G・クルーニーで,魔性の女をK・ブランシェットが演じる。画面はモノクロで,当時の実録フィルムも織り交ぜ,徹底的に40年代を模倣する。明らかに『カサブランカ』(42)『第三の男』(49)を彷彿とさせるシーンの登場に及んで,これは映画ファンの目を楽しませる「お遊び」なのだと分かる。ただそれだけの映画だ。
  ■『幸せのレシピ』:筆者のご贔屓キャサリン・ゼタ=ジョーンズが,NYの人気レンストランの実力シェフを演じるラブ・コメディで,恋のお相手はアーロン・エッカートが務める。題名からすぐ分かるように,典型的なレディーズ・ムービーだ。よって,万事ヒロインに好都合なハッピーな結末は覚悟するとしても,もう少し波乱のある展開が欲しかった。料理を美味しいそうに見せる工夫も,ネズミのレミーに負けている。挿入歌の選曲はハイセンスで,こちらは大いに気に入った。
 ■『パーフェクト・ストレンジャー』:ネット上での別人格へのなりすましをネタにした都会派スリラー。ハル・ベリーとブルース・ウィリスの共演というから期待したが,彼女の魅力以外に見どころはない。「ラスト7分11秒の衝撃の真実」は,よくあるオチの1つだ(詳しくは書けないが)。それをウリにするなら,もう少しメリハリのある展開が望ましいのに,この監督(J・フォーリー)の抑えた語り口は物語に合わない。
 ■『北極のナヌー』:北極の地での10年間の長期間記録映像を,白くまとセイウチの幼児の成長物語に仕立てて描くNational Geographic社の作品。地球温暖化が動物たちの生態系に与えている影響を正面から取り上げ,警鐘を鳴らす。『皇帝ペンギン』チームの編集技術が見事だ。ブリザードの凄まじさ,水中のシーンの美しさも特筆に値するが,白くまの出産シーンはよくぞ撮れたものだと感心する。大きなスクリーンの映画館で観ることをオススメする。
 ■『ヘアスプレー』:この秋の話題作,ファン待望の人気ミュージカルの映画化である。あのジョン・トラヴォルタが女装してヒロインの母親役を演じているのが,最大の見ものだ。舞台は1960年代のボルチモアで,人種差別問題に対する強いメッセージを含んでいる。歌も踊りもパワフルで,このシリアスなテーマを陽気に騒々しく圧倒する。大型セットは徹底的に60年代の風景を再現しているが,筆者の好みとしては,サウンドも60代ポップス風アレンジが欲しかった。
 ■『犯人に告ぐ』:期待を上回る抜群の面白さだ。劇場型犯罪ならぬ,TVを通して犯人に語りかける劇場型捜査で連続児童殺害犯を追う。監督は,まだ2作目の瀧本智行。優れた原作(雫井脩介の代表作)を,豊川悦司・笹野高史・石橋凌といった芸達者を揃えて映画化すれば,邦画でも大人向きの本格娯楽作品を作れるという格好の見本だ。少し崩れた役柄だけでなく,豊悦はこうした硬派の刑事役もうまい。巻島刑事を見守るベテランの津田巡査部長(笹野高史)は,『武士の一分』の徳平役がオーバーラップする。この2人を軸にシリーズ化できないものだろうか。無理だろうな。
 ■『ローグ アサシン』:ジェット・リーが暗殺者ローグを演じ,これを追うのがFBI捜査官には『トランスポーター』(02)のジョン・クロフォード。チャイニーズ・マフィアとジャパニーズ・ヤクザの抗争じゃ,★か☆のC級映画かと思ったが,終盤の意外な展開は悪くなかった。石橋凌のヤクザの親分は似合っているが,娘役のデヴォン青木の日本語は勘弁して欲しい。
     
  (上記のうち,『ローグ アサシン』はO plus E誌に非掲載です)  
     
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