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sfxビデオ観賞室
 
O plus E誌 2000年1月号掲載
 
   
 
地球破滅のパニック映画2本
 
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『ディープ・インパクト』
(ドリームワークス映画)
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『アルマゲドン』
(タッチストーン・ピクチャーズ製作,ブエナ・ビスタ配給)
   
  『エンド・オブ・デイズ』は似ていなかったが,この2作品は実によく似ている。彗星と小惑星の違いはあれ,地球に激突して人類が滅亡する危機を,決死の覚悟で核爆弾を使った爆破にかけるという想定はそっくりだ。これが同じ1998年に公開されたのだから,話題になったのも当然である。巨大宇宙空母で到来した異星人の地球襲撃を描いた『インデペンデンス・デイ』(1997年2月号で紹介)も同工異曲だし,『アルマゲドン』の結末処理もこの映画を踏襲している。観ていない読者は3作品まとめて見比べてみるのもいいだろう。
 ハリウッド映画界の新興勢力ドリームワークスSKGは,映画監督のスティーブン・スピルバーグ,元ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ会長のジェフリー・カッツェンバーグ,音楽プロデューサのデビッド・ゲフィンの3人が1994年秋に設立した会社である。このJ・カッツェンバーグという人物のディズニーへの対抗意識は尋常ではないようだ。次項の『アンツ』vs.『バグズ・ライフ』と同様,ディズニー系列のタッチストーン・ピクチャーズの『アルマゲドン』に対して同テーマの『ディープ・インパクト』を少し前にぶつけるというのは,執念を通り越して滑稽味すら感じさせる。
 前評判は高くなかった『ディープ・インパクト』 だが,アメリカ(98年5月公開)でも日本(98年6月公開)でもかなりのヒットとなった。『タイタニック』人気が長く続いたあと,パニック映画でのヒューマン・ドラマをウリにしたのが当たったのだろう。こうなると同テーマで男臭い『アルマゲドン』は不利だとされたが,アメリカ(98年7月公開)で約1.5倍,日本(98年12月公開)で約2倍の興行成績を上げ,実力通りの大逆転を果たした。
 といった風にショービジネス界には格好の話題を振りまいた。
 特撮関係の話題としては,『ディープ・インパクト』の視覚効果はILM社が担当した。見せ場は,彗星の飛来,地球への激突シーンである。長く尾を引く彗星となれば,パーティクルで描きたくなるのが普通だが,この映画ではマニュアルで加工しやすいようポリゴンで表現したという。
 一方の『アルマゲドン』の視覚効果には,16社もの特撮プロダクションが参加したことでも話題となった。デジタル・ドメイン,ドリーム・クエスト・イメージズ,ブルースカイ|VIFX,シネサイトなど,ILMを除く有名どころがこぞって名を連ねている。それだけVFXカットの分量が多く,専門別の総力戦となった。スペース・シャトル,宇宙ステーション,宇宙掘削機「アルマジロ」のミニチュア製作やモーション・コントロール撮影,隕石落下シーンでのCGとディジタル合成,小惑星表面の造形など,ハイレベルの特撮技術を駆使した上質の作品に仕上がっている。
 
  
 
 正統派の作りで『アルマゲドン』の圧勝 
 
見比べてみると『ディープ・インパクト』は安っぽいですね。彗星の激突も津波に飲み込まれる大都市も,いかにも作り物でチャチです。
どちらも本物を体験した人はいるはずないんですけどね(笑)。
なのにそう感じさせるのは,特撮映画としては失敗でしょう。「えっ!? ここまでできるのか」というのが最近の作品でしたから。
天下のILMとしてはイマイチの出来でした。低予算の急仕上げだったようです。そのためもあってか,SFX映画でなく人間ドラマだと強調していました。
その割には,人間模様も描き方が浅く,散漫だったと思います。あまりパニックも感じないし…。
激突1年前だったのがいつの間にかあと数日に近づいているし,失敗しても淡々としていました(笑)。全体に甘ったるく,緊迫感に欠けてますね。
100万人収容の地下シェルターとやらも見せてもらいたかったです。
ハハハ,確かに入り口だけで,中は全く描いてませんでした。手抜きですね(笑)。
一方の『アルマゲドン』は,映画としてきちっと作られた娯楽作品でした。宇宙飛行士の訓練模様や宇宙ステーションでの事故なども,見ごたえがありました。
クルーの個性もよく描けてたし,映画作りの文法をしっかり押さえているので,安心して見ていられるのでしょう。『アポロ13』が実話をいかに映画として面白く見せるかだったのに対して,こちらは虚構と分かっていて楽しむ映画です。
ニューヨーク,ロサンジェルス,パリ,上海と,隕石の襲来シーンは,どこも迫力がありました。スペースシャトルの爆発といい,どう考えても特撮しかあり得ないのですが,あまりそう感じさせませんでした。
それだけのリアリティがあるからでしょう。1億7千万ドルかけただけあって,手抜きしてませんね(笑)。映画館で見た時そう感じましたが,ビデオで見てもよく出来ていると思いました。この映画は,5〜10年後に見ても古く感じないでしょう。
他では作れない,ハリウッド映画の良さが出ている作品だと思います。
 
  
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