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O plus E誌 2001年12月号掲載
 
 
star purasu
『スパイキッズ』
(ミラマックス&ディメンジョン・フィルムズ作品/アスミック・エース配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2001年10月11日 松竹試写室)  
         
     
   話題の大作2本の陰に隠れて目立たないが,低予算のB級ファミリー・コメディながら,この映画もアメリカでは予想外の大ヒットを飛ばした。3月30日の公開から3週連続No.1成績で興行収入1億ドルを突破した後,8月に急遽再公開されたというのが特筆に値する。既に,続編『スパイキッズ2』の製作も始まっている。
 東西冷戦時代に敵同士として戦ったスパイの男女が恋に落ち結ばれる。ここまでなら007のラストシーンなのだが,その後が違う。冷戦終了後,幸せな家庭を築いていたこのスパイ夫婦が突然悪の組織に誘拐され,両親を救出するためカルメン(アレクサ・ヴェガ)とジュニ(ダリル・サバラ)の姉弟が立ち上がり,悪人と戦うというのがこの映画の骨格だ。何やら漫画的な設定だが,その通り徹底的にコメディ・タッチで荒唐無稽なアクション・アドベンチャーに仕上げられている。子供にとっては,子供が悪漢をやっつける痛快ドラマ,大人が見れば,かつて見た数々のスパイ映画のパロディとなっている。
 脚本・監督・製作は,『デスぺラート』(95)『パラサイト』のロバート・ロドリゲス。スパイ・カップルは,ロドリゲス作品3度目の登場となる『エビータ』(96)『マスク・オブ・ゾロ』(98)のアントニオ・バンデラスと『スネーク・アイズ』(98)のカーラ・グギノ。2人とも子供たちの引き立て役で滑稽な役回りだが,大真面目なスパイ場面でみせる恰好よさは颯爽としている。もう1人,プレス資料を見たらキャスト欄に有名俳優の名があったが,主要な役柄ではなさそうだ。同姓同名の勘違いかと思っていたら,まごうことなく本人が登場した。ネタバレになるのでこれ以上書けないが,この場面は会場の爆笑を誘った。
 悪の組織が副業として,TVの子供向きバラエティを製作しているという設定だが,ここで奇妙な改造人間やロボット達が登場する。同じく,バカバカしいスパイ小道具や乗り物がぞくぞくと登場するのが,この映画の人気の源泉だろう。このアメリカ流ドタバタは映画通には楽しいだろうが,日本でファミリー映画として受け容れられるか,ちょっと疑問だ。
 600万ドル以下という低予算で,300カット以上ものVFXが出て来るのも特筆に値する。写真の水上を走り潜水艦にも変身するポッドは,勿論CGで,これに乗る人物像や実写の水面と合成されている。これは比較的いい出来に属すが,敵方のフループの城,水中シーンの泡,頭が割れるシーンなど,いかにも安っぽいCGや合成が多数登場する。その安っぽさは『陰陽師』といい勝負だが,映画全体の滑稽さと相俟って,いい味を出している。要は脚本や演出とのバランスの問題だ。
 
 
写真 水上を走るポッドは勿論CG
     
   蛇足だが,紛らわしいことに,全く同じ日に別の正月映画『スパイ・ゲーム』も日本公開となるので注意されたい。こちらは,ロバート・レッドフォード,ブラッド・ピット共演のアクション・スリラーだ。ブラピ・ファンの女性が間違ってこの『スパイキッズ』を見たらどう感じるのか,それも楽しみだ。  
   
   
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