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O plus E誌 2017年5月号掲載
 
 
美女と野獣』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) 2017 Disney Enterprises, Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [4月21日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2017年3月21日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  歌も映像も満足度大,名作アニメの見事な実写化  
  この題の映画を当欄で紹介するのは,これが3度目だ。1991年に公開されたディズニー作品は,長編アニメーション映画として初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされた名作だ(以下,アニメ版と呼ぶ)。2002年2月号で紹介したのは,同作をデジタル・リマスターして映像をクリアにし,割愛された曲を復活させたIMAX版である。原典はフランスの民話であり,過去に何度も実写映画化されていることは,フランス製の『美女と野獣』(14年11月号)の稿で述べた。同作は美術的にはなかなかの意欲作であったが,ベルも野獣もディズニーアニメとは印象が違ったためか,不評だった。本作は,表題通り,ディズニー自体が名作アニメを実写化し,CG/VFXで強化した正統なリメイク作である(写真1)
 
 
 
 
 
 
 
写真1 野獣も城内の部屋の装飾も違和感はなく,かつ豪華に
 
 
  主演の美女ベルを演じるのは,エマ・ワトソン。『ハリー・ポッター』シリーズでハーマイオニーを演じた美少女も,すっかり大人になった。輝くような美しさで高らかに歌い,踊る。アニメ版のベルより,数段美しい。本作の成功は,彼女を起用し,豪華な黄色いドレスを着せただけで約束されていたと言える(写真2)。後年,本作は「エマ・ワトソン版」と呼ばれることだろう。
 
 
 
 
 
写真2 鮮やかな黄色いドレスもエマ用の特別仕立て
 
 
   名前を覚えられない読者のために書いておくと,今年『ラ・ラ・ランド』(17年3月号)でアカデミー賞主演女優賞を得たのは「エマ・ストーン」で,オスカー女優で『ナニー・マクフィー』シリーズの脚本を書き,主演した英国人女優は「エマ・トンプソン」である。後者は,本作ではポット夫人を演じ,劇中で主題歌を歌っている。また「エミリー・ワトソン」も英国人で,多数の作品で母親役で登場するベテランの助演女優である。
 監督は,『ドリームガールズ』(07年2月号)や『トワイライト』シリーズのビル・コンドン。上記2名以外の出演者には,野獣(王子)にダン・スティーヴンス,敵役のガストンにルーク・エヴァンス,父親モーリスにケヴィン・クラインが配されている。家財道具たちも,魔法が解けてからは素顔の人間で登場するから,ユアン・マクレガー,イアン・マッケラン等の主役級やスタンリー・トゥッチらの個性派を起用している。
 物語は,ほぼアニメ版に忠実で,アニメや舞台ミュージカルを観てきたファンにも全く違和感がない。強いて違いを言えば,ベルは現代風の意志の強い女性として,ガストンの手下のル・フウをゲイとして描いていることだけだ。よく知っている定番の物語だが,歌も映像も豪華で,劇場の大型スクリーン,大音響の中で再見するに値する映画に仕上げている。驚くような斬新さはないが,顧客満足度を考慮して,評点はとした。
 音楽の紹介は別項のサントラ盤紹介に譲り,以下,いつものCG/VFX中心のコメントである。
 ■ 91年のアニメ版で最も個性的だったのは,城の召使いたちが,魔法で置き時計,燭台,ティーポット等の家財道具にされてしまうことだった。アニメ作品ゆえ,彼らの形状や挙動のデザインにも創造力が発揮されていた。本作では勿論CGで描かれている(写真3)。デザイン的には,まずまず想定の範囲内の出来だが,家具として変幻自在な動きや,人間→家具→人間の変身がCGならではの表現だった。十分,合格点だ。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 家具たちがCGでどう描かれるか注目の的
 
 
  ■ CGで描いた金箔が浮遊し,ベルのドレスを飾るシーンは魅惑的だった。それに続くのが,ハイライトのボールルームでの舞踏シーンである。1991年当時,映画へのCG導入はまだまだ新鮮で,CGモデルでレンダリングした画像を基にセルアニメ化していたことが話題だった。それから四半世紀以上経った実写リメイク作では,想像通りの豪華なシーンになっている(写真4)。ボールルームは大型セットを組み,シャンデリア10基も実物が配されていたらしい。アニメ版を進化させたカメラワークでの映像を見る限り,随所でCG/VFXの力も借りている。2人並んで見る雪景色も,VFXの威力を感じさせる美しい幻想的なシーンであった(写真5)
 
 
 
 
 
写真4 伝説のボールルームでのダンスも完璧
 
 
 
 
 
写真5 雪景色の庭園や池の眺めもCGならではの光景
(C) 2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
 
 
   ■ クライマックスの野獣とガストンの闘いは,ハリウッド大作に相応しいクオリティで迫ってくる。城をバックに,CG/VFXをたっぷり使った激しいバトルが展開する。完成披露試写会は2D版であったが,IMAX 3D版ならさぞかし大迫力だろうなと想像できた。どんなミュージカル舞台でもこれは真似出来ない。CG/VFXの主担当はFramestoreで,副担当としてDigital Domain, Method Studiosの2社が参加している。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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