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O plus E誌 2002年2月号掲載
 
 
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『美女と野獣(ラージ・スクリーン・フォーマット版)』
 
 
(c)Disney Enterprises, Inc.
         
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2002年12月20日 東京アイマックス・シアター)  
         
     
  大スクリーンで甦る名作アニメ・ミュージカル  
   この号が出る少し前に,東京アイマックス・シアターが2月1日で閉館になっていることだろう。東京で唯一のIMAX専用映画館がなくなるのは残念至極だ。人気作品以外はエアコン代をまかなうのがようやくとの噂だったから,親会社が天下のソニーといえども,新宿副都心の一等地での経営は苦しかったのだろう。もはやIMAX映画興行は,シネコンの一部として他の収入に寄生するか,遊園地や科学博物館内でしか無理なのかも知れない。  その最後の1ヶ月間の上映作品が,ディズニー・アニメの名作をIMAX化したこの映画だった(大阪,札幌,穂高の3劇場では,2/1以降も上映される)。ディズニーとしては,『ファンタジア/2000』の成功に気を良くしてのIMAX利用なのだろうが,それとて採算度外視のボランティア的行為に違いない。世界中のIMAXシアターから良質コンテンツの供給要望があるのだろう。来年正月にはIMAX版の『アラジン』が登場するというから,今後も順次IMAX化されるのかも知れない。
 10年前に公開された35mmフィルム・オリジナル版は,ゴールデン・グラブ賞の最優秀作品賞に選ばれ,アカデミー賞でも作品賞にノミネートされ,『アラジン』(92)『ライオン・キング』(94)と続くディズニー・アニメの第2期黄金時代のきっかけとなった。音楽も,上記両映画祭でオリジナル作曲賞,主題歌賞を受賞し,いまやスタンダード・ナンバーとなっている。
 IMAX化作品を観る前日に,レーザーディスクからダビングしたビデオを見直した。最初の10分を観ただけで,「何と古い。これは数十年前のアニメか?」と感じてしまった。キャラクターは,デザインも動きもかつてのセルアニメ・キャラクターだし,音楽も名曲とはいえ,べたっとした典型的ディズニー・サウンドだ。フルCGアニメではなくても,『ターザン』(97)あたりまでに,動きも背景も音楽も現代向けに変わってしまったことを再認識した。
 ところが,翌日観たIMAX版は,これが同じ映画かと思うくらいに素晴らしく甦っていた。もともと,単純ではあるが美しいラブ・ストーリーであり,ミュージカルとして優れた脚本である。IMAXの大スクリーンと立体音響で観るこの映画は,ストーリーを楽しむというより,音と絵の調和,生のミュージカルとはまた違った臨場感での感動を味わうためにある。
 このラージ・フォーマット版の意義は2つある。オリジナル版をディジタル処理して,キャラクターの顔や姿がよりクリアな色になっている。背景はややぼかしたままで残すことにより,より前景のキャラクター生きている。IMAXのアスペクト比は,オリジナル版より家庭用ビデオに近いが,大画面であるだけに動きがダイナミックに感じられる。絵は書き割り調ではあっても,カメラがズームアップするシーンは,運動視差の大きさにより,かなりの立体感を感じてしまう。これが大音響と上手くマッチして,独自の映画芸術を形成している。『ファンタジア/2000』のファンなら,このバージョンの素晴らしさが理解できるはずだ。
 もう1つの話題は,ストーリーボード段階までは存在したが,オリジナル版からは割愛された『ヒューマン・アゲイン』のシーンの復活である。ブロードウェイ・ミュージカルでは歌われているこの軽快なナンバーと,それに付随したシーンの新規製作が話題作りに一役買っている。ティ−ポットや時計や燭台が「もう一度人間に戻れたら…」と歌うこのシーンは,むしろ他の部分との違いを目立たせないように作られたというだけあって,初めての観客は特別な存在であることに気付かないだろう。
 この映画のエンドクレジットは,オリジナル版とこの新版に大別されていて,新版だけでもディジタル加工やイフェクト処理にかなりの人数が関与したことが分かる。オリジナル・スタッフの中には,既にピクサー社の名前が見える。この頃から,ディズニー・アニメのディジタル化やCG導入に参加した縁で,後の『トイ・ストーリー』(95)の制作を任される関係へと進んだ。
 この映画での3D・CGの利用は,公開当初から主人公の男女が踊るボール・ルームのシーンが有名だった。他のシーンは昔風のアニメであるだけに,天井のシャンデリアや視点の回り込みは,改めて見てもCGの威力が感じられる。一方,追加の『ヒューマン・アゲイン』の部分には,最新のCGならではの斬新な描写を期待したのだが,それほどでもなかった。多数の箒が舞い踊るシーンや噴水の描写(写真)には3D・CGの存在を感じたが,驚くほどではない。ここでもう少しサービスしてくれれば,完璧だったのだが。
 
   
     
 
写真 背景の噴水や彫像はCGで製作
(c)DisneyEnterprises, Inc.
 
   
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