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O plus E誌 2012年7月号掲載
 
 
 
 
『アメイジング・スパイダーマン』
(コロンビア映画
/SPE配給)
 
 
      (C) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. MARVEL, and all Marvel characters including the Spider-Man character (tm) & (C) 2011 Marvel Characters, Inc.

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [6月30日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2012年6月12日 SPE試写室(東京)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  リブートした新蜘蛛男は痛快,3Dスウィングも上々  
  アメコミの人気スーパーヒーロー・シリーズの4作目は昨年公開のはずが,1年遅れで,前作から5年も経ってしまった。主演のトビー・マグワイアの交替は早くから伝えられていたが,サム・ライミ監督まで降板し,スタッフもキャストも一新されている。題名も『スパイダーマン4』ではなく,3D化した新シリーズとしての再登場で,今風に言えば「リブート」である。
 ちょっと「リブート」と「リメイク」「プリークエル」等の違いを整理しておこう。同じ原作を,別の監督や俳優で再映画化することの総称が「Remake」で,脚本も書き換えることが多い。ヒット作の続編(Sequel)製作やシリーズ化は日常茶飯事だが,目先を変え,時代を遡った前日譚が「Prequel」である。『エクソシスト ビギニング』(04)や『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11)がその類いだ。この場合,シリーズとしての時間的連続性は保たれ,矛盾はない。
 これに対して,物語を一から仕切り直して,シリーズを再稼働させるのが「Reboot」である。『バットマン ビギンズ』(05年7月号) は,前日譚を含む形でのリブートの大成功例だ。007シリーズは,ジェームズ・ボンド役が何代も交替しているが,Qやマネペニー嬢は続投していた。21作目の『007/カジノ・ロワイヤル』(07年1月号) でリブートしたと考えて良い。今回のリブートは,この両シリーズの成功に影響を受けてのことだろう。表題の『The Amazing Spider-Man』は,マーヴェル・コミック誌でこのヒーローが最も活躍したシリーズ名であり,それだけで,気合いの入れようが感じられる。
 このリブートで起用された監督は,マーク・ウェブ。長編は『(500)日のサマー』(09年12月号)しか経験がなかったのだから,大抜擢と言えるだろう。それがこの娯楽超大作を見事に仕切って,傑作に仕上げるのだから,ハリウッドには才能ある映画人が溢れていると言わざるを得ない。ウェブ(Webb)監督ゆえに,インターネット(WWW)時代の蜘蛛の巣(web)の物語には最適だったというジョークも聞こえて来ている。
 主演のピーター・パーカー役に選ばれたのは,『ソーシャル・ネットワーク』(11年1月号)で共同経営者エドゥアルド役だったアンドリュー・ガーフィールド。トビー・マグワイアは名優ではあるが,少し陰気でスーパーヒーローらしくなかった。A・ガーフィールドのピーターは,シャイだが瑞々しく,適役だ。恋人のグウェン・ステイシー役には,『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』(12年4月号) のエマ・ストーン。前シリーズのMJ役のキルスティン・ダンストがおよそ可愛くなかったから,この交替も素直に嬉しい。
 超能力を得たスーパーヒーローの誕生は,どの作品でも最もワクワクする瞬間だが,本作の地下鉄車内での出来事も痛快そのものだ(写真1)。映画の冒頭から,このスパイダーマン誕生までの前半は軽快で,前シリーズとは違った描き方も楽しめる。中盤から終盤はアクション満載だが,これも期待に違わず,十二分に娯楽大作振りを堪能できる。以下,CG/VFXを中心とした感想である。
 
 
 
写真1 咄嗟に車両の天井に吸着。新蜘蛛男の誕生!
 
 
  ■ 3D演出はフェイクではなく,ジェームズ・キャメロンの手ほどきを受け,しっかり2台のカメラを使ったリアル3D撮影を採用している(写真2)。予想通り,スパイダー・スウィングは3Dに適していた(写真3)。その他のシーンでも,リアル3Dゆえの自然な立体感の出し方が感じられる。前半は3Dの必要性はあるのかと感じる大人しい構図だが,それだけ目に優しいとも言える。ところが,中盤はスパイダーマンの蜘蛛の糸が縦横に張り巡らされ,その3D効果に目を見張る。終盤,ビル屋上のクレーンを伝いながらの大スパイダー・スウィングは絶品だ(写真4)。眼下に見えるNYの街の夜景が頗る美しい。このシーンを3Dで観ない手はない。
 
 
写真2 しっかり2台のモニターで視差を確認している
 
 
 
 
 
 
 
写真3 スウィング姿(上)も決まっていて,3Dで魅力倍増。実際に宙吊りで撮影するとは,俳優業もなかなか大変。
 
 
 
写真4 そして,夜のNYで大スパイダー・スウィング
 
 
  ■ オズボーン社の超高層ビルの外観やその実験室内の描写もCG/VFXゆえの描写である。とりわけ,ホログラム風の3Dディスプレイ内のCGコンテンツのルックが素晴らしい。実験機材のデザインや配置,小物類も秀逸だ。このデザイン担当者の美的センスを称賛し,座布団2枚を進呈しておこう。
 ■ 本作のビラン(敵役)は,カート・コナーズ博士が生体実験の失敗で変身した大トカゲのリザードである(写真5)。顔立ちはゴジラに似ている(写真6)が,これは意図的に似せたようだ。表情や全身の動きはMoCapデータの利用,大きな尻尾の動きは物理法則によるアニメーションと見てとれた。
 
 
 
 
 
 
写真5 本作での強敵は,遺伝子操作で生まれた長い尾の大トカゲ男(上)。鋭く長い爪が凶器(下)。
 
 
 
 
 
写真6 表情は日本のゴジラに似ている
(C) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. MARVEL, and all Marvel characters including the Spider-Man character (tm) & (C) 2011 Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved.
 
 
   ■ 終盤のアクションは,ボリューム感はあるが,長過ぎなく,好感が持てる。複雑なカメラワークと構図は,当然しっかりプレビズした結果だろう。VFX主担当は当然Sony Pictures Imageworksだが,プレビズは専業のProof社が担当している。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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