head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
 
title
 
O plus E誌 2014年2月号掲載
 
 
マイティ・ソー/ダーク・ワールド』
(マーヴェル・スタジオズ/
ウォルト・ディズニー・
スタジオ・ジャパン配給)
      (C) 2013 MVLFFLLC. TM & (C) 2013 Marvel
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2月1日より丸の内ルーブル他全国ロードショー公開予定]   2013年12月18日 GAGA試写室(大阪)
       
   
 
キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』

(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)

      (C) 2013 Summit Entertainment, LLC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2月22日よりTOHOシネマズ有楽座他全国ロードショー公開予定]   2013年12月13日 東宝試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  それぞれのカラーをより鮮明にした続編2作  
  今月のまとめて紹介は,アメコミもの2本だ。いずれもシリーズ2作目だが,各々の前作に当欄では☆☆☆を与えている。1本はマーヴェル・コミックスの『マイティ・ソー』(11年7月号)で,単なるヒーロー活劇ではなく,北欧神話を基にファンタジー色をもたせた作品だった。もう1本は,ヒーローもののパロディとして登場した『キック・アス』(10年12月号)であり,青春映画としても通用する内容だった。数多いこのジャンルの大作の中で個性を持たせるべく,両続編は,それぞれのカラーをより強く打ち出している。
 
 
  大人気の弟ロキの存在感を前面に出した営業戦略  
  ソーの登場映画として,厳密に言えば,前作との間にマーヴェル・ヒーローが集結する『アベンジャーズ』(12年9月号)があった。地球の危機に際して,ソーが,アイアンマン,ハルク,キャプテン・アメリカらと共にNYの地で戦っただけでなく,ソーの義弟,敵役のロキや科学者セルヴィグ博士も登場した。このオールスター映画は大成功を収めたが,次回作『アベンジャーズ2』は2015年の公開予定だ。それまでは,それぞれの作品に戻って活躍させるという算段である。まるで,W杯の代表チームと各国のリーグ戦のような関係だ。
 昨年は『アイアンマン3』が先陣を切り,今年は本作の後に,『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』と『Guardians of the Galaxy』が控えている。2009年にディズニー傘下に入ってからのマーヴェルの積極攻勢には目を見張る。ここしばらく,集結と散会を繰り返すのだろうが,一度マーヴェルのシリーズを観たら,全部観たくなるファン心理を巧みに利用している。間に入る作品も,粗製乱造ではなく,各作品がヒーローの個性を活かした一大スペクタクルである。
 本作の監督は,ケネス・ブラナーからアラン・テイラーに変わったが,主要登場人物達は第1作に引続き出演している。主な新登場は,邪悪なダーク・エルフの長マレキスを演じるクリストファー・エクルストンくらいだ。むしろ注目は,ロキ役のトム・ヒドルストンの扱いだ。普通なら,前作や『アベンジャーズ』で主人公と戦って敗れたら,そこで落命するはずだが,生き残って再登場する上に,本作ではソー(クリス・ヘムズワース)と力を合わせて戦うという。ソー以上の人気者となったことを利用した,巧みな脚色であるとも言える。
 この映画でまず驚いたのが,映画の冒頭で,序章として,古代の戦闘シーンが延々と続く(写真1)。時代は5,000年前,ダーク・エルフなる種族とソー達の先祖らとの戦いらしい。まるで,『ロード・オブ・ザ・リング』の世界だ。この映画は前作以上にファンタジーとして描くぞとの宣言だと感じられた。ただし,元祖『ロード…』からは10数年経ち,MoCapデータで描かれた戦闘は,より幻想的かつ遥かに迫力ある映像へと進化している。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 オープニング・シーケンズで登場する古代の戦士たち。ゲーム・ムービー風のバトルが展開する。
 
 
  その後,物語はロンドンで見つかった重力異常に端を発し,中盤過ぎまでソーやロキの故郷,神々の国アスガルドを舞台として展開する。それゆえ,CG/VFXも前作以上に満載だ。前作同様,主担当はDouble Negativeで,その他でLuma Pictures,Blur Studio, Method Studios, Whiskytree等も参加している。
 VFXシーンは余りに多すぎて,一々語る気になれないが,既視感に溢れ,目新しさを感じなかった。本作は,斬新さよりも,一定水準以上のスペクタクルの連続で,ボリューム感を出すことを重視しているようだ。
 強いて挙げるなら,アスガルドの描写は一段と豪華になった(写真2)。この国での洪水や戦いのシーンは,徹底したプレビズの産物であると感じられた。古風で重厚な描写だけでなく,流行の半透明のホログラム型コンソールまで登場する(写真3)。これは『プロメテウス』(12年9月号)への対抗意識だろうか。
 
 
 
 
 
写真2 豪華で高精細になったアスガルドの描写
 
 
 
 
 
写真3 何と,神々の国でも透明ディスプレイが流行
 
 
  ソーは,物語の鍵を握る恋人ジェーン(ナタリー・ポートマン)をアスガルドへと連れ帰る。彼女を乗せた小舟が空を飛ぶシーン(写真4)は幻想的で,スーパーマンがロイス・レーンと飛行するシーンを思い出す。
 
 
 
 
 
写真4 ジェーンを乗せて航行するシーンは幻想的
 
 
  そして,最大の見どころは,終盤,戦いの場をロンドンへと移し,巨大なアーク・シップがグリニッジを襲来するシーンである(写真5)。このシップの造形は,なかなか斬新だ。Double Negativeなら,いつの時代のロンドンも自由自在に描く力を有しているので,本作の終盤の戦いは,CG/VFX的にもかなりハイレベルだった。
 
 
 
 
 
写真5 地球に戻り,グリニッジでの攻防が圧巻
(C) 2013 MVLFFLLC. TM & (C) 2013 Marvel. All Rights Reserved.
 
 
  意外性やパロディは半減したが,アクションは過激に  
   もう1本は,対称的な設定の作品だ。前作は短評でしか掲載できなかったから,少し主人公たちのキャラ設定や原作に関して紹介しておこう。こちらもコミックが原作だが,伝統ある人気キャラではなく,2008年から出版されたシリーズである。著名なコミック原作者のマーク・ミラーの新作で,すぐに映画化が企画されたが,結局は脚本・監督のマシュー・ヴォーン自身が投資し,自主製作して,公開にこぎ着けたようだ。
 主人公のデイヴ(アーロン・ジョンソン)は,コミックのスーパーヒーローに憧れる普通の高校生で,全くスーパーパワーはなく,身体能力が高い訳でもない。ネット販売でヒーロー・スーツを購入し,単なる正義感から「キック・アス」と名乗り,悪を退治するヒーロー活動を開始する。これだけなら,全くのお笑いのパロディなのだが,同じくヒーロー・コスチュームを着けた「ビッグ・ダディ」(ニコラス・ケイジ)と「ヒット・ガール」(クロエ・グレース・モレッツ)父娘が登場して,様相が一変する。妻(母)を自殺に追いやった犯罪組織を憎む彼らは,戦闘訓練を積んでいて,組織の売人たちを次々と殺して行く……。
 セリフは放送禁止用語の連発で,パロディとしての楽しさに加え,ヒット・ガールの過激なアクションが痛快だった。その反面,11歳の少女ミンディに殺戮行動をさせるのは不道徳だとの批判も出た。それでも公開週の興行成績はトップであり,この大ヒットにより,続編はメジャーのユニバーサル作品として製作された。
 M・ヴォーンは製作に廻り,監督にはジェフ・ワドロウが抜擢されている。主要登場人物は続投しているが,ビッグ・ダディは前作で死んでしまったので,N・ケイジに代わり得るビッグ・ネームとして,ジム・キャリーが起用され,正義の男・スターズ&ストライプス大佐を演じる(写真6)。副題の「ジャスティス・フォーエバー」とは彼が率いる(自称)ヒーロー軍団の名前だ(写真7)
 
 
 
 
 
写真6 「正義は永遠だ!」と,大佐とガッチリ握手
 
 
 
 
 
写真7 これが,ジャスティス・フォーエバーの面々たち
 
 
  前作以上に,青春映画としてのカラーが強くなり,高校生になったデイヴとミンディは,互いに意識し合う関係に設定されている。クロエちゃんも出演時には既に15歳。小さな少女が悪人を倒す意外性もパロディの面白さも半減したが,続編ゆえに,これは止むを得ない。劇中ヒット・ガールとしての行動を慎むよう制限されているが,前作の批判をかわすためだろうか。ところが,アクション自体は過激になっている。後半,予想通りにヒット・ガールが復活して,スカッとして終わる(写真8)
 
 
 
 
 
写真8 やっぱり,クロエちゃんの武闘がないと面白くない
 
 
   さて,当欄のお目当てのCG/VFXは,スバリ物足りなかった。写真9のような,すぐそれと分かる合成シーンで利用されていたが,質・量ともに特筆するほどではない。わずかに,パトカーの衝突・炎上シーンだけは楽しかった。前作のフレッシュさが望めない以上,もっとこの種のVFXで盛り上げても良かったかと思う。
 
  ()
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真9 足下に見え,やがて落下して行くエレベータ坑は,勿論デジタル合成
(C) 2013 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved.
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next