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O plus E誌 2014年6月号掲載
 
 
ポンペイ』
(コンスタンティン・フィ ルム/
ギャガ配給 )
      (C) 2014 CONSTANTIN FILM INTERNATIONAL GMBH AND IMPACT PICTURES (POMPEII) INC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月7日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2014年4月24日 松竹試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  史劇としては軽めだが,古代都市や噴火の描写は秀逸  
   イタリア南部のナポリ近郊にあり,火山の大噴火で地中に埋没した古代都市として知られる「ポンペイ」を舞台に,若い男女の恋愛劇やコロシアムでの格闘技,そして大災害の様子を描いたディザスター映画である。ポンペイ市の埋没を描いた映画としては,過去に同じ『ポンペイ最後の日』の表題で4作製作されていて,これが5作目のようだ。本作を当欄のトップ記事に据えたことからも,火山の大噴火,溶岩と津波で都市が破壊される様子を最新のCG/VFXを駆使し,スペクタクルをウリにしていることが容易に想像して頂けるだろう。
 記録に残された史実を記すと,西暦79年8月24日の正午過ぎ,ヴェスヴィオ火山が大噴火し,噴煙は上空30kmに及び,数時間以内の間にポンペイ市は火山灰に埋め尽くされたという。今でいう火砕流が押し寄せ,ナポリ湾からの津波に飲み込まれ,数千人が命を落とした。その後,海岸線も灰で埋まり,港町であったポンペイは内陸部に埋没したというから凄まじい。長らく伝説だけでその場所すら特定されていなかったが,18世紀になって発掘作業が始まり,現在ではこの伝説の町を散策できるだけでなく,当時の生活を再現した遺跡も復元されていて,1997年には世界遺産に認定されている。
 さて,話題を本作に戻すと,この手の災害映画なら,監督は「破壊王」のローランド・エメリッヒかと思ったが,さすがに約半年前に『ホワイトハウス・ダウン』(13年9月号)を撮り終えたばかりであるから,それはなかった。本作の監督・製作は,『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン。なるほど,彼もまたCG/VFXの使い方を熟知していて,ビジュアルで物語を盛り上げるのが巧みな監督の1人である。
 主人公は,奴隷の剣闘士マイロで,『サイレントヒル:リベレーション3D』(12)などのキット・ハリントンが演じている。ヒロインは,彼が恋する裕福な商人の令嬢カッシアで,『エンジェル ウォーズ』(11年5月号)のエミリー・ブラウニングが配されている。組み合わせとしては悪くないが,大作にしては小粒と言わざるを得ない。助演陣にもさしたる俳優は登場せず,カッシアの母親役で『マトリックス』シリーズのキャリー=アン・モスが登場するのが目に付いた程度だ。どう見ても,出演料を低額で抑え,その分をCG/VFXに回したと思われる。当欄としては,歓迎だが……。
 俳優も軽めなら,物語の描き方も軽い。ギリシャ,ローマ時代を描いた物語は何度も映画化され,その大半は重厚な史劇であった。本作にそれを期待したら見事に裏切られる。CG重視の『グラディエーター』(00年7月号)『トロイ』(04年6月号)と比べても軽めだが,若い男女のラブストーリーとしてはこれくらいで良いのかと思う。欧米の批評家たちの評価は辛めだが,筆者の周りからは「ポンペイものでは,過去最高」との声も耳にした。素直にスペクタクルを楽しめたからだろう。
 以下,当欄の視点での見どころである。
 ■ CG/VFXの主担当は,Mr. X,Inc.だ。カナダの中堅VFXスタジオで,最近は『パシフィック・リム』(13年8月号)『ロボコップ』(14年4月号)『ノア 約束の舟』(次号で紹介)に参加し,実力向上が目覚ましいが,本作が同社の歴史で最大の挑戦だったろう。副担当は,Scanline VFX。元々破壊シーンが得意なスタジオゆえ,後半の災害シーンの多くを担当したのだと思われる。これまで二流と思われていたこの2社が,これだけの量と質を達成したことに,当欄として驚きを禁じ得ない。技術的にさほど目新しくないが,ビジュアル・センスが良く,見せ方に一工夫も二工夫も凝らしている。
 ■ デザイン・センスの良さが発揮されているのは,ポンペイの市街地のデザインだが,とりわけ港のシーンが素晴らしい(写真1)。街を上空から捉えたシーケンスも秀逸だ(写真2)。『グラディエーター』を意識していると感じるが,それより数段斬新であり,3D上映も意識したカメラワークだ。コロシアムは,上空から全体を収めたシーンも,内部から背景の火山や観客席を捉えたシーンも上々の出来である(写真3)。市内の家屋は一部だけがセットで,背景の大半はCGの産物だ(写真4)
 
 
 
 
 
 
 
 
写真1 ポンペイの市街地も港のデザインも良い出来だ。緑地や海面の描写も素晴らしい。
 
 
 
 
 
 
写真2 3D上映を意識した空中からの市街地観光も楽しい
 
 
 
 
 
 
 
 
写真3 もちろん,コロシアムの建造物(上)も観客(下)もCG/VFXの産物。これも良い出来だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真4 市街地のセット(上)はごく一部で,火山も含め遠景はVFXで描写(下)
 
 
 
  ■ 中盤以降の火山の大噴火が見せ場だが,噴煙も飛来する火山弾もよく描けている(写真5)。地割れ,家屋の倒壊,津波,船が沈没する様……と息をつく暇もない。まるでテーマパークの人気アトラクション風だ。カメラワークもさることながら,アングルの切り替えも上手い。編集担当の腕がいいのだろう。いや,最近なら大半はプレビズ段階で決められていることだろう。

 
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写真5 美しかった港町(上)が,火山大噴火の噴煙と溶岩の襲われた(下)
(C) 2014 CONSTANTIN FILM INTERNATIONAL GMBH AND IMPACT PICTURES (POMPEII) INC.
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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