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O plus E誌 2014年4月号掲載
 
 
ロボコップ』
(MGM&コロンビア
映画/SPE配給)
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月14日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2014年2月18日 松竹試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  20余年ぶりのリメイクだが,大きなサプライズはない  
  リメイクが待ち遠しかった一作だ。『ターミネーター』(84)に続いて,低予算ながら斬新なSFアクション映画として登場した旧作は,1987年(本邦では翌1988年)に公開された。「サイボーグ」の概念はとっくに存在していたが,殉職した警官の生体部品を利用したロボット刑事が,在職時の記憶を取り戻すという設定が面白かった。悪人たちと戦う不死身のヒーローの活躍が,ポール・バーホーベン監督の過激なアクション描写と相俟って,マニアックな人気を得ていた。別監督で『ロボコップ2』(90)『ロボコップ3』(93)も製作され,後にTVシリーズ,TVアニメ,アメコミ,ゲーム等も作られている。
 ロボットのサッカーW杯が「ロボカップ(RoboCup)]と命名されたのは,この映画にちなんでいた。その一方で,ロボコップの製造元の巨大企業オムニ社が悪の権化のように描かれていたことから,一時オムニホテル・チェーンの客数が減ったという笑えぬエピソードもあった。暴力シーンが過激過ぎるという理由でR指定されていたようだが,今回ディレクターズ・カット版をDVDで再見したところ,全くそうは感じなかった。既に映画のテンポもスケールも大きく変貌している証しだ。
 旧作では,特撮はあったが,ロボットの表現にまだCGは利用されていなかった。主演のピーター・ウェラーは,ロボット・スーツを着て,意図的にぎこちない動きで演じていた。余りの重さと暑さに失神したという。2作目から軽量化され,水冷冷却機能が導入されたというほどだ。SF大作の大半が,CG/VFXのパワーを借りて次々とリメイクされる中で,本作が遅れたのは,製作権を有するMGMが経営破綻したことにもよる。007シリーズと同様,コロンビア映画(ソニー・ピクチャーズ)の援助を得て,今回陽の目を見た次第だ。
 本作は,流行の「リボーン」と称されているが,これはピンと来ない。ずっと続編が作られているシリーズが,目先を変えるため,話を原点に戻して再出発する場合(『007』シリーズや『スター・トレック』シリーズ等)ならともかく,20年以上も空いた本作の場合,やはり「リメイク」と呼ぶべきではないかと思う。
 時代設定は近未来の2028年で,旧作と同様デトロイト市が舞台だ。現在既に2足歩行ロボットや筋電制御によるパワーアシスト器具が実用化されている以上,どんなデザインのロボコップが再登場するかが見ものである半面,旧作のイメージを壊さずにスケールアップして欲しいとの想いのファンも少なくない。デザイン的には『アイアンマン』シリーズ,ロボコップの人間的葛藤に関しては,『バットマン/ダークナイト』シリーズを相当意識していると見てとれた。
 監督は,ブラジル出身のジョゼ・パジーリャ。ドキュメンタリー映画でデビューした監督だが,こうしたSF大作への抜擢起用は,一味違ったものを期待してのことだろうか。主演のアレックス・マーフィ刑事を演じるのは,スウェーデン人俳優のジョエル・キナマン。こちらは,旧作のP・ウェラーのイメージを残しているのが,少し嬉しい。ロボット配備を主張するジャーナリスト役にサミュエル・L・ジャクソン,ロボコップの生みの親のD・ノートン博士役にゲイリー・オールドマンを配しているのは,上述の2シリーズを意識させる戦略だろう。極め付けは,オムニコープのCEO役で『バットマン』(89)のマイケル・キートンが登場することだ。
 予定通りCG/VFX満載のアクション大作だが,以下,当欄の視点での見どころである。
 ■ 新生ロボコップは,脳,心臓,(そして,なぜか)右手だけ人間で,他がマシンという設定だ(写真1)。腕はなくて,掌から先だけだ。それでいて,後半,肺の部分も生きているようなシーンが登場する(写真2)。ま,固いことは言わずに,身体の大半はロボットで,心は人間だというコンセプトは守っているのでOKとしよう。
 
 
 
 
 
写真1 意識が戻り,残った右手を見る印象的なシーン
 
 
 
 
 
写真2 残った生体部品。どう観ても肺もあるのだが…。
 
 
  ■ ロボット・スーツは,最初のモデルが旧作(写真3)のイメージを残したシルバー基調であり,後半登場する新スーツはブラックでカッコいい(写真4)。この姿でバイクを駆って疾走するシーンは,バットマンを彷彿とさせる(マントはつけてないが)(写真5)。ウェストもスリムで機能的に見えるが,では,このスーツを本当に着用したのだろうか? アイアンマンから想像できるように,主演俳優の薄着での演技にCGスーツを後から描き加えたものだろう。丸ごとCGのボディや,顔だけ嵌め込んだと思しきシーンもしばしば登場する(写真6)。顔を保護するフェイス・バイザーはON/OFFできる想定だが,素早く覆える様子から,CGで描き加えたケースが多いと想像できる(写真7)
 
 
 
 

写真3 旧作のスーツとピーター・ウェラー。これじゃ,重くて暑いだろう。

 
 
 
 
写真4 新デザインのブラックスーツはスリムで機能的
 
 
 
 
 
写真5 このバイク姿は,バットマンを彷彿とさせる
 
 
 
 
 
写真6 このシーンは,CG+MoCapに顔だけ合成?
 
 
 
 
 
写真7 モードONにすれば,バイザーが降りて来て顔を覆おう
 
 
  ■ CG/VFXの主担当はFramestoreで,他に数社が参加している。オムニコープ本社ビルを含むデトロイトの光景(写真8)や,道路上のクルマ,オフィス内の什器・機器類は,ほんの少し近未来風に描かれている。戦車風の法務執行ドロイドED-209は,旧作ではストップ・モーションでコマ撮りされていたが,本作ではその動きのイメージを残しつつ,新規設計のED-208と共にフルCGで描かれている(写真9)。悪くはないが,SF大作の標準レベルであり,サプライズはなかった。
 
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写真8 オムニコープ(画面左)はデトロイト市にある設定
 
 
 
 
 
写真9 殺人マシンのED-209(中央)は旧作のイメージを残し,ED-208(右下)は新たにデザイン
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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