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O plus E誌 2004年6月号掲載
 
 
『トロイ』
(ワーナー・ブラザース映画 )
 
      (c)2004 Warner Bros. Ent.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [5月22日よりピカデリー&プラゼール系にて拡大公開中]   2004年5月13日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  スペクタクル巨篇に相応しい視覚効果の連続  
    本号が出る頃には日本でも公開されているはずだが,完成披露試写会は原稿締め切りの直前までなかった。カラーページは既に校了になっている。通常なら,詳しい情報が分かる来月まで待つところだが,やはりこの映画は速報で紹介しておきたい。  
 時代は古代ギリシャで,ホメロスの「イリアス」で有名なトロイ戦争を描く。ギリシャ軍最強の戦士アキレスに『セブン』(95)『スパイ・ゲーム』(01)のブラッド・ピット,対するトロイの英雄ヘクトル王子に『ハルク』(03)のエリック・バナ,その弟パリスに『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のレゴラス役でブレイクしたオーランド・ブルームという布陣だ。  
 大量のTVスポットCMでは,ものすごい数の船や兵士のシーンが流れ,『ロード…』調の大作だと訴えている。「3000年に1度の愛とスペクタクル」というが,監督が『U・ボート』(81)のウォルフガング・ぺーターゼンと聞くと,CG製の大嵐がウリだった『パーフェクト ストーム』(00)のように,中身がスカスカの虚仮おどしではないかとも疑ってしまう。  
 そんな事前予測を裏切り,結果はハリウッドらしい,いやハリウッド資本でしか作れない迫力ある大作に仕上がっている。ボディビルで肉体改造して臨んだB・ピットのアキレスは様になっているし,スタントマンなしで演じたヘクトルの対決も見ごたえあった。それに比べて女優陣がやや弱く,物語も凡庸だという声もあるが,この種の映画はこれで良い。古代ギリシャ,ローマ,エジプト等を描く映画は,いつの時代にもスペクタクル巨篇で男性中心の英雄物語であった。視覚効果は,そのスケールを間違いなく大幅に向上させている。  
 演技面で出色なのは,トロイの王プリアモスを演じるピーター・オトゥールだ。押し寄せるギリシャの大軍に対して見せる緊張感と威厳,実子ヘクトルの決闘を見守るいたたまれない表情は,ジェームス・ホーナーの音楽と相まって観客の感情移入を誘う。表情だけの演技でここまで見せてくれるのは,さすがだ。  
  衣装・甲冑類のデザインや古代都市の再現など,アートワークも見どころなのは言うまでもない。注目の的の1つは,有名な「トロイの木馬」だが,これまでに見慣れた木馬とは,かなりイメージが違う(写真1)。歴史上の資料から推測して,焼けた船の廃材で作ったというが,デザイン的にはかなり野心作だ。  
 もう1つの注目の的は,スパルタの軍船(写真2)で,こちらは撮影用途に応じて様々なタイプが用意された。エンジン機動式で実際に航行できるものも2艘建造されている。この船が千艘の船隊で進むのは勿論CG映像だが,これは圧巻,これぞVFXというお手本だ。ギリシャ軍野営地の海岸では,4艘の実物の船を何十,何百艘に見せるのにもVFXが用いられている。いい出来だ。  
     
 
 
写真1 これが焼けた木材で作った「トロイの木馬」
(c)2004 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
写真2 スパルタの軍船は航行可能なものも作られた
 
     
   5万人のギリシャ軍と2万5千人のトロイ軍の戦いにもCG映像はふんだんに登場する。『ロード…』の影響を受けていることは明らかだが,大軍の戦闘模様はそれを上回る進歩の跡が見受けられる。もう少し詳しく語りたいが紙幅が尽きた。次号で再度取り上げよう。  
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