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O plus E誌 2013年5月号掲載
 
 
L.A.ギャングストーリー』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2012 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [5月3日より丸の内ルーブル他全国ロードショー公開予定]   2013年4月10日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  正統派ギャング映画の系譜をひく男の映画  
  この表題と画像からは,どんな映画を想像するだろうか? ロサンジェルス市庁舎のビルをバックに古風な帽子姿で並ぶ5人の男たちからは,ブライアン・デ・パルマ監督の『アンタッチャブル』(87)のポスターを思い出す。ケヴィン・コスナーがエリオット・ネス隊長を演じてブレイクし,渋い脇役を演じたショーン・コネリーが,ゴールデングローブ賞,アカデミー賞で助演男優賞を得たあのギャング映画である。いま改めて調べ直すと,あちらは4人で銃をもっている点が違うが,同じように背景にシカゴ市内のビルが写っていた(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 ケヴィン・コスナー主演の『アンタッチャブル』
 
 
  原題は『Gangster Squad』で,「ギャング団」ではなく,警察側の特命チーム「ギャング(対応)部隊」の意で,写真の5人はそのメンバーだ。映画は,1940年代から50年代にかけて,ロサンジェルスの裏社会を牛耳っていた実在のギャング,ミッキー・コーエン一味とロス市警特命チームの攻防を描くクライム・アクションである。「L. A.」を冠したのは,単なる地名ではなく,1997年の名作『L.A.コンフィデンシャル』を意識させようという意図だと思う。ミッキー・コーエン逮捕後の暗黒街の混乱と警察内部の腐敗を描いた作品で,ラッセル・クロウとガイ・ピアースの出世作となった。
 本作で伝説のミッキー・コーエンを演じるのは,オスカー俳優のショーン・ペン。実際のミッキー(写真2)とは似ても似つかないが,サスペンダー姿,機関銃を構えたポーズなどは,TV版『アンタッチャブル』でエリオット・ネスを演じたロバート・スタックを彷彿とさせる(写真3)。もう半世紀も前のことだが,エミー賞を受賞し,米国でもファンは多かったから,意図的に似せたメイクにしたとも考えられる。そうしたギャング映画の系譜をひく,正統派の作品だと印象づけたかったに違いない。
 
 
 
 
 
写真2 実在のミッキー・コーエン。いかにも悪。
 
 
 
 

写真3 左:本作のショーン・ペン,右:ネスを演じたロバート・スタック

 
  監督は,『ゾンビランド』(10年8月号)のルーベン・フライシャー。特命チームのリーダー,ジョン・オマラ巡査部長役には,『メン・イン・ブラック3』(12)で若き日の"K"を演じたジョシュ・ブローリン。この数年『ミルク』(09年5月号)『ウォール・ストリート』(11年2月号)『トゥルー・グリッド』(同年3月号)と話題作での好助演が続いていたが,堂々と主演が務まる売れっ子に育ってきた。他には,イケメンの一匹狼ジェリー・ウーターズ巡査部長役に『ドライヴ』(11)のライアン・ゴズリング,ミッキーの愛人グレイス役に『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』(12年4月号)『アメイジング・スパイダーマン』(同年7月号)のエマ・ストーンと,売れっ子俳優を配してきた。
 ミッキー・コーエンは,ハリウッド地区に住み,フランク・シナトラ,サミー・デイヴィスJr.,マリリン・モンローらの大スターとも交流のあった派手好みの人物である。その一方で凶暴かつ非情なギャングであり,暴力・強盗・違法賭博・脅迫・賄賂は日常茶飯事で,殺人も厭わなかったという。長年,その極悪非道振りを看過してきたロス市警が反撃に出る決意をし,ギャング顔負けの手荒な手段でコーエン一味を追い詰めた様子を,ロサンジェルス・タイムズ紙の編集者ポール・リバーマンが調べ上げ,実録ルポを出版している。このノンフィクション作品に触発され,映画化されたのが本作である。
 さて,当欄の関心事であるCG/VFXは,こうした時代ものである以上,当然随所でインビジブル・ショットが使われているはずだ(写真4)。ただし,さして昔のことではなく,かつハリウッド近郊が舞台であるなら,まだ記憶も新しく,そのまま現在の光景が使える場所も少なくないに違いない。そうした観点から,VFXシーンの使われ方に関心をもって本作を注視した次第である。
 
 
 
 
 
 
 
写真4 何げないシーンの窓の外(上)にも,デジタルマット画(下)が合成されている
 
 
  1949年当時の市電やクルマが大通りを往来するが,いずれも本物であるように見えた。ハリウッドであれば,わずか60年前程度のものは,多数保存しているに違いない。それでも,夜間のカーチェイスの様は,CGで描かれているようだ(写真5) 。夜にクラシック・カーを走らせて,危険なスタントをやるよりは,もはやCGの方が安上がりという訳である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真5 夜間のカーチェイスは,かなりの部分がCGでの表現(上:幾何モデルデータ,中:その完成映像,下:接近戦の火花に注目)
 
 
  サンフェルナンド・バレーに大掛かりなオープンセットを組んだ上に,ソニー・スタジオ内にもセットを組んだというから,LA市内シーンの大半は,純然たる実写撮影であったと思われる。それでも,写真6のような屋外の光景では,VFX補強することにより,当時の家屋や街の様子を再現している。実物セットを組むにも,街をCG化して再現するにも,まだ当時の様子を覚えている観客の目を気にせざるを得なかったと言える。 
 
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写真6 上:撮影した映像,中:まずCGの住居を合成,下:背景はマット画合成(完成映像)
(C) 2012 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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