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O plus E誌 2010年8月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『ゾンビランド』:題名からはおそよ食指が動かなかったのだが,興行成績はゾンビ映画史上No.1とのことで,重い腰を上げた。なるほど,これは面白い。地球人類の大半がゾンビと化した世界で,前半はゾンビを遠慮会釈なく薙ぎ倒す,痛快丸かじりのアクション・コメディだ。ジョークもパロディも満載で,スパイスもたっぷり利いている。ビル・マーレイが本人役で登場する下りは,まさに抱腹絶倒ものだ。ロードムービーとしても秀逸で,終盤は青春ラブストーリーと化す。クライマックスの夜の遊園地の光景が美しい。続編は3Dで制作中というから,これは観なくっちゃ!
 ■『小さな命が呼ぶとき』:実話ベースの極めて真面目な社会派映画だ。「ポンペ病」なる難病に冒された子供達の命を救うため,エリートビジネスマンの職を捨て,新薬の製薬会社まで設立した父親の奮闘を描く。一直線に描いても感動作にはなっただろうが,製薬ベンチャービジネスの内幕話と絡めたことでストーリーに幅ができた。映画とはいえ,会社の思考回路はこんなものかと呆れる。ハリソン・フォードに偏屈な博士役は似合わないが,この物語に惚れ込んで製作総指揮を務めたくらいだから,自ら出演するのは止むを得ないところか。主演は『ハムナプトラ』シリーズのブレンダン・フレイザー。前半はただのデブ男にしか見えなかったが,後半,存在感のある父親役を好演する。
 ■『ジェニファーズ・ボディ』:『トランスフォーマー』シリーズのミーガン・フォックスの美女ぶりとカラフルなファッションからはレディース・ムービーかと思うが,実は凄惨な殺人事件を描くサスペンス・ホラーだった。語り部の内気な親友役には,『マンマ・ミーア!』のアマンダ・セイフライド。マンネリ傾向にあるホラーものとして,工夫を凝らしたいのは分かるが,怖くもなければ,設定や展開に魅力もない。こんな映画,一体誰が観るのだろう? 2人の美女の存在だけが救いだが,とても高校生には見えないのが大きな欠点だ。
 ■『ソルト』:痛快で,躍動的で,結末も大満足。深刻な経済不況も将来の年金不安も,憂き世の煩悩をすべて忘れて楽しむ娯楽映画はこうでなくっちゃいけない。アンジェリーナ・ジョリーがCIAエージェントを演じるスパイ・アクション・ムービーだが,元はトム・クルーズの主演を想定していたらしい。なるほど,小気味いいアクションの連続は,彼にピッタリの脚本だ。ただし,トム・クルーズがそのまま演じたのでは凡庸な映画に終わっただろう。女性を主役に据えたのは大正解だ。『トゥーム・レイダー』シリーズや『ウォンテッド』(08)で鍛えたアンジェリーナのアクションは一段とスピーディーになり,堂々たる主役をはった上で,神秘的ですらある。これが『チェンジリング』(09)で母親役を好演したのと同じ女優なのか。硬軟を見事に演じ分けられる好い俳優に成長したものだ。
 ■『ヤギと男と男と壁と』:題もユニークだが,かなりスパイスの利いた軍隊風刺映画だ。アメリカ軍内に実在したエスパー戦士の育成計画と聞いても,俄には信じ難いが,ノンフィクション「実録・アメリカ超能力部隊」が基だそうである。随所で笑いを誘うものの,トータルではさほど面白くない。ジョージ・クルーニー,ジェフ・ブリッジス,ユアン・マクレガー,ケヴィン・スペイシーという豪華キャストは,ちともったいない感じがする。E・マクレガーを前にG・クルーニーが「ジェダイの戦士」を名乗る下りは,ウケを狙っての楽屋ネタだが,何度も出て来ると嫌みだ。評論家の点数は高そうだが,一般観客には今イチと感じる映画だ。
 ■『ベスト・キッド』:1984年のヒット作で,続編も数本作られた『ベスト・キッド』のリメイクもの。ひ弱な高校生が空手の達人の教えの下,心身ともに成長して行く様を描いた名作であったが,中国に転校した黒人中学生がカンフーを学ぶ設定に変わっている。ウィル・スミスが製作総指揮で,『幸せのちから』(06)の父子共演でデビューしたジェイデン・スミスの次なる売り出し作戦に見える。かつてパット・モリタが演じた師匠役を,何とジャッキー・チェンが演じてアシストする。こんな抑えた演技の渋いジャッキーは初めてだ。紫禁城,万里の長城,武当山等,中国観光も楽しめる。肉体改造までして訓練に耐えたジェイデンは根性も座っていて,相変わらずの芸達者だ。いい俳優に育つだろうが,このリメイク作出演はもう数年先が良かったかと思う。
 
  (上記のうち,『ソルト』はO plus E誌には非掲載です)  
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