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O plus E誌 2013年4月号掲載
 
 
ライジング・ドラゴン』
(角川映画配給)
      (C) 2012 Jackie and JJ International Limited, Huayi Brothers Media Corporation and Emperor Film Production Co Limited
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月13日より角川シネマ有楽町他,全国ロードショー公開予定]   2013年3月8日 角川試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  JC流娯楽アクションが全開。これは,見逃せない。  
  何とも個性のない邦題で,ポスターも黒地に黄金の龍の頭部が炎と化したものを描いただけのシンプルなものだった。その炎の中に見える男の横顔がジャッキー・チェン(JC)だと知ったのは,試写会当日である。そして,受け取ったプレスシートのキャッチ・コピーを見て驚いた。「ジェッキー・チェン,最後のアクション超大作!!!」というではないか。こうした場合の「最後の」は大抵客寄せの文句なのだが,どうやらこれは本気らしい。映画俳優自体をやめるという訳ではないが,JCからアクションを取ったら何が残るんだ? と誰もが思うから,やはりこれは一大事である。
 本稿を書くに当たり,当欄における彼の出演作紹介を辿ってみた。前作までで彼の出演映画は101本,内63が日本で公開されている。1999年の連載開始後,『シャンハイ・ヌーン』(00)『タキシード』(02)『シャンハイ・ナイト』(03)『80デイズ』(04)等,ハリウッド出演作の試写を観ていたのだが,積極的に紹介する気にはなれなかった。彼の場合,生身のアクションがウリで,VFXは用いていても,ごく僅かであり,敢えて語るほどではなかった。それが一気に評価を変えたのは,香港に里帰りし,自らの製作会社を設けて作った『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(05年3月号)だった。1980年代の人気シリーズに原点復帰した同作は,CG/VFXも巧みに挿入し,キレのいいアクション大作だった。
 続いて,『THE MYTH/神話』(06年3月号)も紹介し,短評欄を設けてからは『プロジェクトBB』(06)『ラッシュアワー3』(07)『ドラゴン・キングダム』(08)『ダブル・ミッション』(10)を取り上げている。いずれもサービス精神に富んだ娯楽作品だが,JCの映画作りが明らかに変わったと感じたのは,『ベスト・キッド』(10年8月号)と『1911』(11年11月号)である。前者はかつての名作のリメイク,後者は辛亥革命100周年を記念した史劇で,自ら総監督を務めている。それぞれ,ジェイデン・スミス,ウインストン・チャオを主役に据え,助演に回っていたのが印象的だった。なるほど,来年で還暦を迎えるジャッキーも体力の限界を感じる年齢であり,助演と映画製作者としての道を志向し始めたとしても無理はない。そこで,アクション満載,サービス精神満点の娯楽作品の集大成として企画されたのが本作である。製作費は,70億円とも,80億円ともいう。
 原題は『十二生肖』,英題は『Chinese Zodiac』で,日本でいう「十二支」のことである。19世紀に欧州列強により強奪された円明園の国宝,十二生肖獣首銅像を巡るトレジャーハント物語として描かれている。ジャッキー自ら製作・監督・脚本・主演を務め,役名もJCである。共同脚本,編集,美術から,共演者も気の合うJCチームで結成されている。嬉しいのは,JCガールズとして,美女3名(ジャン・ランシン,ヤオ・シントン,ローラ・ワイスベッカー)が配されていることだ。
 たっぷり金をかけただけのことはあり,豪華で,頗る楽しい作品に仕上がっている。この一作を見逃す手はない。以下,その見どころである。
 ■ メイン・ストーリーが始まる前に目を惹くアクション・シーンがあるのが普通だが,JCがローラーブレード・スーツを身に着け,道路や壁を縦横にすり抜けるカー・チェイスが出色だ(写真1)。少しトリック撮影もあるのだろうが,大半は生で演じていると思われる。チェイス・シーン史上に残る逸品と言えよう。
 
 
 
 
 
写真1 地を這い,壁を伝うチェイス・シーンが見もの
 
 
  ■ その後も目まぐるしい(写真2)物語展開で,ノンストップ・アクションが計70分も続く。屋根の上を飛んだり跳ねたり,ポータブル・パラグライダーも登場し,南海の孤島での大落下シーン等々が盛り込まれている。電子小道具を使ったお遊びも楽しい。その1つずつのアイデアが凄い。よくぞここまで色々思いつくものだ。後半では,商売仇のハゲタカ(アラー・サフィ)との対決シーン(写真3)が楽しい。常にソファにタッチしながらの格闘は,まさにゲーム感覚だ。
 
 
 
 
 
写真2 勿論,スタントは全部自分でこなしている
 
 
 
 
 
写真3 お遊び感覚の,この息の合ったアクションもアイデアが秀逸
(C) 2012 Jackie and JJ International Limited, Huayi Brothers Media Corporation and Emperor Film Production Co Limited All rights reserved
 
 
  ■ 最後はさらにスケールアップし,イタリアの火山上空からのスカイダイビング,そして火口近くから大斜面を転がり落ちるシーンで締め括っている。エンドロールのメイキング映像からも分かるように,この空中戦の部分だけはVFXの活躍シーンだ。それでも,身体的バトルは本物だ。これが,最後だという迫力は充分に感じられる。同じハード・アクションでも,トム・クルーズ,ジェイソン・ステイサム等とはだいぶ違う。肩の凝らない娯楽大作こそ,ジャッキー・チェンの真骨頂だ。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分を入替・追加しています)  
   
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