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O plus E誌 2005年3月号掲載
 
 
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『香港国際警察/NEW POLICE STORY』
(JCEムービーズ /東宝東和配給 )
      (C)2004 JCE Movies Ltd.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語    
  [3月5日より有楽町スバル座ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2005年1月28日 東宝東和試写室(大阪)  
       
     
     
 
 
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『ナショナル・トレジャー』
(ウォルト・ディズニー映画 /ブエナビスタ配給 )
      (C)Disney Enterprises, Inc.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語    
  [3月19日より全国東宝洋画系他にて拡大公開予定]   2005年1月13日 東宝試写室(大阪)  
         
 
   
  香港復帰したジャッキー・チェンの真骨頂  
 

 国籍もジャンルも違う2作品だが,まとめて紹介しよう。共通点は,娯楽映画のお手本のような作りで,難しいことは考えず,素直に楽しめる作品という点だ。
 まず,香港・中国合作の『香港国際警察』だが,最近ハリウッド出演作の続いたジャッキー・チェンが久々に里帰りしての意欲作だ。若い頃の彼は,コミカルな味を出しつつも颯爽としたアクション・スターで,実にカッコ良かった。ところが,ハリウッドでの主演作はといえば,『シャンハイ・ヌーン』 (00)『タキシード』(02)『80デイズ』(04)…,いずれもフニャけた中年デブ東洋人で,どこが魅力的なのか,なぜハリウッドが彼を起用するのか,さっぱり理解できなかった。この映画のジャッキーは格段に違う。笑いは少なめだが,演技力もある一段成長したこれぞヒーローという役どころだ。そのせいか,カンフー・アクションも小気味よく,香港映画の面目躍如だ。
 監督は中堅どころのベニー・チャン。ニコラス・ツェー,ダニエル・ウーなど,香港映画界の若手が競演している。 1985年から始まる『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(警察故事)シリーズが4作あって,題名が紛らわしいが,同じ香港警察の刑事役でも,それとは別の設定になっている。問題を起こして停職中のチャン刑事が,警察組織に挑戦する犯罪集団と対峙して難事件を解決する典型的な「はみ出し刑事もの」だが,これが実に良くできている。『ダーティ・ハリー』『リーサル・ウェポン』シリーズのファンなら,気に入ること必定だ。
 VFXは随所で使われているが,2度の大きな爆発シーンのうち,最初のは本物で,2度目はCGだろう。この映画の特徴は,大半のアクション・シーンは生身の演技だという点だ。ロープを利用したビルからの落下も大型バスが坂を駆け降りるスタント(写真1)も全部本物で,しかも旧シリーズの名物シーンを継承している。ジャッキー映画の名物,エンドロールでのNG集は,同時に見せ場のシーンのメイキングを兼ねている。CG/VFXは激しいスタントを補うことはできても,本物の迫力には及ばないことをこのNG集は如実に物語っている。
 前半は,小さな香港の町や迷路のような敵のアジト内での展開で,やたらスケール感を強調するハリウッド流とは異なる描写が,背伸びしない等身大の表現で好ましかった。チャン刑事と相棒のシウオンを見守る警察内の暖かい眼差しは,『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』の湾岸署の雰囲気を思い出させてくれる。それでいて,中盤以降の畳みかける派手なアクション展開と海を見下ろすクライマックス・シーンのスケールの大きさが心地いい。最後にホロリとさせる味つけも用意されている。
 娯楽映画はこういう風に作るんだという教本になりそうな一作だ。

 
     
 
 
 
写真1 本作では2階建てバスが坂を駆け降りる
(C)2004 JCE Movies Ltd. All Rights Reserved.
 
       
  監督・主演は脇役で,脚本の魅力だけで押す  
 

 一方の『ナショナル・トレジャー』は,ジェリー・ブラッカイマー製作,ニコラス・ケイジ主演のアドベンチャー・アクションで,典型的なハリウッド資本のブロックバスター映画だ。
 紀元前 2000年エジプトのファラオの墓に,1世紀エルサレムのソロモンの神殿に,14世紀フランスのテンプル騎士団アジトに,1492年コロンブスのサンタマリア号に…登場した歴史的な「秘宝」は,1779年アメリカの独立戦争の混乱期にその痕跡を絶った。その謎に挑む天才的歴史学者にして冒険家のベン・ゲイツ(N・ケイジ)…と聞けば,誰でも「インディ・ジョーンズ」シリーズを思い出すではないか。
 監督は『キッド』 (00)のジョン・タートルトープというが,余り知らない名前だ。相手役女性のアビゲイル博士に『トロイ』(04年6月号)で王妃役を演じたダイアン・クルーガー。ベンの父親役を名優ジョン・ボイト(アンジェリーナ・ジョリーの父)が演じて,後半再三登場するとなると,完全に『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(89)のショーン・コネリーを意識した設定だ。これは,オマージュというレベルを超えている。
 大きく異なるのは,予想(?)に反して,海外観光地巡りをせず,徹底してアメリカ国内を舞台にした「宝探し」物語だという点だ。それも,ワシントン,フィラデルフィア,ニューヨークの東部 3都市に集中し,国立公文書館,リンカーン記念館,独立記念館,トリニティ協会と,何やら社会科見学のような感覚で合衆国独立期の短く浅い歴史を反芻してくれる(写真2)。
 絵は鮮やかで,アクションはそこそこ。他愛もない話なのだが,これが結構面白い。小学生高学年の頃読んだ冒険小説のようで,差し詰め「新宝島国内編」といったところだろうか。セックスも残虐シーンもなく,ここまで引っ張れるのは大したものだ。よほど脚本がいいからだろう。全くファミリー向きで,気がつけばこの映画のブランドは,「タッチストーン・ピクチャーズ」ではなく「ウォルト・ディズニー映画」だった。なるほど。
 VFXの主担当はAsylum Effects社だが,あえて特筆するほどのシーンはない。大作に珍しく,VFXは控え目だ。
 この映画は,監督は勿論,主演の男女も誰でも良かったのではないか。実際,ニコラス・ケイジはそれほどこの役に似合っていないが,ブラッカイマーはそこそこ名の通った主演俳優として気心の知れた彼を選んだだけだろう。『香港国際警察』がジャッキー・チェン抜きで考えられないのとは対照的だ。
 ジャッキーの昔の姿と比べたくなって,「ポリス・ストーリー」シリーズの 1作目(85)とミッシェル・ヨーが登場する3作目(92)をDVDで観た。ジャッキーは若々しかったが,何とストーリーも映像も小粒で貧弱なことか。10数年を経て,映像のスケールもアクションの派手さも格段にアップしている。もはや,娯楽作品はこのレベルから後戻りできない。ただし,VFXはその主役ではなく,スパイスに過ぎないことは,この2作品からも感じ取れる。

   
     
 
 
 
写真3 何やら小中学生の社会科見学風
(C)Disney Enterprises, Inc.
 
   
     
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