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O plus E誌 2007年4月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『ホリデイ』:英米間で自宅を交換してXマス休暇を過ごす女性2人(C・ディアス,K・ウィンスレット)が遭遇するラブ・ロマンスを描く。徹底して女性中心の描写だから,デートムービーとして付いて行く男はいいが,間違っても男同士で観る映画ではない。可もなく不可もないが,春休みに公開せずに,今年の暮れまで待った方が雰囲気は盛り上がったのに。
 ■『ラブ・ソングができるまで』:こちらもラブ・コメディだが,往年のポップスターが作詞才能のある女性と新曲を作りながら恋に落ちる設定なので,80年代サウンド満載で,ミュージカル並みに歌が多い。『チャーリーズ・エンジェル』ではC・ディアスの引き立て役だったドリュー・バリモアが,こうして別々の作品で観ると,ぐっとチャーミングだ。一度書きたかったのだが,彼女の表情は若き日のエルヴィス・プレスリーに似ている。娘のリサ・マリーよりもずっと似ていると思うのだが…。
 ■『プロジェクトBB』:金目当てで誘拐した赤ん坊の育児騒動を描くジャッキー・チェンのアクション・コメディで,出世作『プロジェクトA』(83)をもじっている。ハリウッドから香港に戻っての一作『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(05年3月号)と同様,持ち味のコミカル・カンフーが堪能できる良質の娯楽映画に仕上げている。ギャグとアクションとヒューマニズムのバランスがとてもいい。相棒はかなりのイケメン,ヒロインは清楚な美形,物語を支配するベビーは頗る可愛く,サービス精神も満点だ。定番のNG集も楽しい。
 ■『オール・ザ・キングスメン』:野心家で危険なルイジアナ州知事(ショーン・ペン)と貴族階級出身のジャーナリスト(ジュード・ロウ)を中心に,出世・名誉・愛・嫉妬・裏切りが渦巻く人間ドラマをミステリー仕立てで描く。S・ペンの大げさな演技,J・ホーナーの仰々しい音楽は,胃にもたれる濃厚な料理風で,同じ素材でももっと淡泊な味付けで食したかった。J・ロウの元彼女役のK・ウィンスレットが美しい。
 ■『ブラッド・ダイヤモンド』:またアフリカが舞台で,社会的メッセージ性の強い映画だ。シエラレオネ共和国で産出されるダイヤモンドの密輸問題を機軸に,小国内での内乱の不毛さ,難民の悲惨さをストレートに伝えてくる。L・ディカプリオは『ディパーテッド』よりも,この映画の方が遥かに素晴らしい。オスカーは逃したが,本当にいい俳優に成長したものだ。長い別れのセリフは絶妙で,『タイタニック』(97)のクライマックス・シーンを彷彿とさせる。映像も音楽も素晴らしく,壮大な自然風景も随所にちりばめられている。
 ■『クィーン』:一方,こちらはエリザベス女王を演じたヘレン・ミレンが主演女優賞部門でオスカーを得た。なるほど,主演男優賞のF・ウィテカーのアミン大統領と好一対だ。ダイアナ元妃の事故死直後のロイヤル・ファミリーの混乱という素材を捌いて,楽しい「王室アルバム」に仕立てている。随所で笑いを誘うが,最後は国民に愛され威厳ある女王を見事に演じている。髪形も体形も歩き方も女王様にそっくりだ。ブレア首相夫妻もそこそこ似た俳優を起用している。日本人は同夫人に安倍首相夫人アッキーを重ねて見てしまうだろう。惜しむらくは,チャールズ皇太子役がまるで似ていない。これなら,フィリップ殿下役のJ・クロムウェルをVFXで若返らせた方がずっと似ていたと思うが,現状技術はまだ全編利用に耐えられるレベルにない。残念!
     
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