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O plus E誌 2006年3月号掲載
 
 
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『PROMISE/無極』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C)Beijing 21st Century Shanghai, China Film Group and Moonstone Productions, LLC  
  オフィシャルサイト[日本語    
  [2月11日よりサロンパス ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にて公開中]   2006年1月30日 リサイタルホール(大阪)  
       
     
     
 
 
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『THE MYTH/神話』
(ユニバーサル映画 /UIP配給)
      (C)2005 JCE Movies Limited  
  オフィシャルサイト[日本語    
  [3月18日より日比谷みゆき座他全国東宝洋画系にて公開予定]   2006年2月2日 UIP試写室(大阪)  
         
 
   
  中国製の大作2本だが,いずれもちょっと大味  
 

 2 本まとめて紹介しよう。両作品ともチャン・イーモウ監督の『HERO』(03年9月号)『LOVERS』(04年9月号)に続く大作だと謳っているが,直接の関係はない。中国映画の日本公開に,いつまでこんな無粋な英語の題をつける悪習を続けるのだろう。英語にすればハリウッド資本で製作し,スペクタクル巨編の香りがするとでもいうのか。なるほど『HERO』『LOVERS』は興行的に成功したが,作品として見るべきものはなかった。
 『PROMISE』の原題は『無極』で,監督・脚本は『さらば,わが愛/霸王別姫』 (93) 『始皇帝暗殺』 (98) のチェン・カイコー。中国では,チャン・イーモウと並び称される実力派監督である。主演は,日本から真田広之,韓国から『ブラザーフッド』( 04 年 6 月号)のチャン・ドンゴンの 2 大スターを招き,香港映画界の新進俳優セシリア・チャン,ニコラス・ツェーらが共演する。
 時代も場所も不祥で,基本的には花の甲冑を身に付けた大将軍・光明(真田広之),その俊足の奴隷・昆崙(チャン・ドンゴン)が,王妃・傾城(セシリア・チャン)との 3 角関係をなす愛の物語なのだが,明らかに『HERO』を意識したカラフルな衣装や大仰なカメラワークで大作ぶりを強調する。この映画の最大の欠点は,男を狂わすはずの傾城役のセシリア・チャンが,およそ魅力的でないことだ。これでは 2 人の男の命をかけた行動にリアリティは感じられない。
 一方の『THE MYTH /神話』は,お馴染みジャッキー・チェンの最新作だ。こちらのお相手役キム・ヒソンはなかなかの美形で,これなら納得できる。監督・脚本のスタンリー・トンはスタントマン出身の武闘派監督だが,共演陣も小粒で,すべてはジャッキー・チェンのワンマン映画を引き立てるための脇役だ。
 ジェッキーの前作『香港国際警策/NEW POLICE STORY』(05年3月号)は良質の娯楽映画だったが,本作品はちょっと大仰な設定に出た。考古学者のジャックが,夢の中で秦の始皇帝を警護する近衛将軍・蒙毅にタイムスリップし,悲劇の王女・玉漱を守るという役柄だ。この古代のシーンはスケールも大きく,現代との間を往き来する脚本も悪くない。意欲作ではあるが,最大のミスキャストはジャッキーそのものだ。あのフニャけた顔は滑稽以外になく,大作映画がブチ壊しだ。

 
       
  2作ともVFXの使い方が間違っている  
 

 CG/VFX はと言えば,『PROMISE』はデジタル視覚効果満載で,全編これケレン味の連続だ(写真 1)。ここまで視覚効果で目まぐるしく画面を切り替える必要があるとは思えない。ようやく落ち着いた演技が見られるのは,王殺しの大罪を犯して王妃を救った秘密が明かされる 3 人の絡みのシーンくらいだ。これでは,真田広之もチャン・ドンゴンもその演技力を発揮できない。

   
     
 

 

 

 
写真1 こうしたVFX多用シーンが,これでもかと目まぐるしく登場する。落ち着かない。
(C)Beijing 21st Century Shanghai, China Film Group and Moonstone Productions, LLC
 
   

 

 
 

 『HERO』を観た時,『初恋のきた道』 (99) のチャン・イーモウが何でこんな駄作を作ったのかと残念だったが,今回も同じだ。『北京ヴァイオリン』 (02) のチェン・カイコーまでこんな映画を作るなんて,彼らは共にデジタル技術の活用方法を誤っている。
 一方の『THE MYTH/神話』は,CGに頼らず,実写の味わいを生かしたことを強調する。なるほど,古代の合戦シーンはスケールの大きな屋外ロケが中心だ(写真 2)。崖から馬車が落下するシーンでは,監督もカメラを抱えて落下しながら撮影したことをウリにしているが,ここはむしろ CG を使った方が迫力ある映像になっただろう。後半の地下魔宮のシーンとなると,むしろ CG 満載の映像で,その美的センス,デザイン力も出色だ。どこか,セールスポイントを間違っている。
 この映画では,古代で蒙毅将軍を演じるジャッキーのアップの場面はすべて縦長に変形されている。少しでも細身で凛々しく見せたかったのだろうか。単純に縦長にしたのでは,甲冑も馬も不自然極まりない。どうしてもスリムにしたかったのならば,こうした箇所こそ最新のデジタル技術で加工すべきだったと思う。大製作費をかけておきながら,どこか杜撰だ。 

     
   
       
 
 
 
写真2 古代のシーンは大掛かりなロケを敢行
(c)2005 JCE Movies Limited. All Rights Reserved.
 
     
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