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O plus E誌 2008年8月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『ドラゴン・キングダム』 :カンフー関連作品が溢れる今年の夏映画の中でも,極め付けの一作との触れ込みだ。米資本で言語は英語,中国で撮影した映画で,ジャッキー・チェンとジェット・リー初の競演作品である。アクション監督は,『マトリックス』シリーズ,『キル・ビル』2部作のユエン・ウーピンとくると,カンフー・アクションの派手さは相当なものだと想像できる。確かに期待通りに2人の対決シーンは大迫力だったが,ただそれだけの映画だ。ボストン在住の米国青年が突然古代中国にワープして騒動に巻き込まれる。4人の「旅の仲間たち」の「指輪物語」ならぬ「如意棒物語」だが,脚本がつまらない。ま,カンフー・ファンには,スカッと楽しめることだけは保証しておこう。
 ■『ハプニング』 『シックス・センス』(99)の見事な脚本・演出で,一級の脚本家として期待されたM・ナイト・シャマラン監督だが,その後は凡作の連続で,評価は下がるばかりだ。米国東海岸に恐怖の底に陥れた怪奇現象を描くこの最新作は,久々に演出の冴えを見せてくれる。一体どうなるのか,真実は何かと固唾を呑む。A・ヒチコックの崇拝者だけあって,怖がらせ方の演出はうまい。少なくとも『サイン』(02)ほどバカバカしくないが,結末はやや淡泊だ。メッセージ性もこんなものだろう。完全復活まであと一歩だ。
 ■『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』:世界中の日本製アニメのファンにとって教祖的存在である押井守監督の4年振りの最新作だ。原作は森博嗣の同名小説で,近未来の戦闘機パイロットを主人公とするシリーズの1作目に当たる。「キルドレ」なる永遠に歳をとらない子供たちを描くが,予想したほど難解でも思索的でもなく,淡々とした癖のない演出で,押井作品らしくないタッチだとも言える。「若い人に、生きることの意味を伝えたい」とのことだが,それほどのご大層な映画でもない。3D-CGで描く戦闘機や空はリアルだが,セル調の2Dキャラクタの登場場面はカメラ据付けで動きが乏しく,書き割りのように平板に見える。筆者には,その間の大きなギャップがかなり気になった。
 ■『闇の子供たち』: 衝撃の映画だ。原作は梁石日の同名小説で,監督・脚本は阪本順治。タイを舞台に,幼児売春,人身売買という目を覆いたくなる真実を描いた社会派映画である。骨太な作風の阪本作品の中でも出色で,よくぞタイに出向いてこんな映画を撮ったものだと感心する。不正臓器移植というテーマ通り,まさに胸をえぐられ心臓を鷲掴みされる思いがする。各国映画祭で話題沸騰し,アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされても不思議ではない。エンドロールに流れる桑田佳祐の主題歌も印象的で,この映画のもつ重み,メッセージをしっかり胸に刻み込む。とにかく凄い。必見!
 ■『アクロス・ザ・ユニバース』  :表題曲を含むビートルズ・ナンバー33曲を使ったミュージカル映画。英国のリバプールと米国のプリンストン,NYを舞台に,1960年代の若者の生態を描く。ジュード,ルーシー,セディ,ジョジョ,プルーデンスといった登場人物の名前を聞くだけで,ビートルズ・ファンは血が騒ぎ,ルーフトップ・コンサートでは感涙にむせぶ。挿入曲の歌詞が大きな意味をもつのはミュージカルなら当然だが,既存曲の歌詞を忠実に反映しようとしたために,物語の展開に制約があるのが苦しいところだ。主演のジュードを演じるジム・スタージェスは,6月号の『ラスベガスをぶっつぶせ』で述べたようにポール・マッカートニーに良く似ているが,それなら相棒のマックスにもジョン・レノン似の俳優を起用して欲しかったところだ。
 ■『ベガスの恋に勝つルール』  :この表題でキャメロン・ディアス主演と聞いただけで,他愛もないラブコメディだと想像できる。まさにその通り,何の思想性も政治的背景もない。今回のお相手は『守護神』(06)のアシュトン・カッチャー。さほどラスベガスのシーンは多くなく,大半はニューヨークが舞台だ。デートムービーとしては,入場料分は楽しめる。予備知識なしにこの映画を観て,監督が男性か女性かを当てることにしたが,これは当たった。やはり男か女かで,男性の描き方が違う。正解はオフィシャルサイト等で確認されたい。
 ■『俺たちダンクシューター』  :フィギュア・スケートの男子ペアという奇抜な着想の『俺たちフィギュアスケーター』(07年12月号)は抱腹絶倒もので,スマッシュヒットとなった。同じウィル・フェレルが主演で,バスケット・ボールが題材となると,同じレベルのギャグやくすぐりを期待するのは当然だろう。ところが,消滅の危機に瀕した弱小チームの再建を描くこの映画は,意外と真面目でオーソドックスなスポーツ映画だった。ダンクシュートの場面も少ない。その意味では期待を裏切られる。よくある人間ドラマで,凡庸だ。
 ■『カンフー・ダンク!』  :これもバスケ映画だが,表題に「!」があるように,決め技はこちらが数段上だ。台湾・香港・中国の共同製作で,『少林サッカー』(02)のバスケ版と考えて間違いはない。孤児でカンフーの達人の育てられた主人公が,大学のバスケ部に所属し,ダンクシュートを連発して大活躍する。ライバルチームは反則満載,カンフーの師父4人の妙技は絶妙,主将の妹が可憐な美女,探し求めた両親は大金持ち……と,どれをとっても定番の展開ならば,ワイヤーアクションやVFXの使い方も想定の範囲内である。映像は豪華,俳優はB級,脚本はC級だが,痛快さだけはA級だ。
 
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