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O plus E誌 2009年12月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『理想の彼氏』 :2児を抱えて離婚したばかりの40歳の女性(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)が,目立たない24歳の青年(ジャスティン・バーサ)に惹かれ,恋が芽生えるという話。表題通り徹底した女性側視点の作りで,魅力的な熟女+草食系年下男性の組合せというのも,『あなたは私の婿になる』(09年10月号)と同じだ。最近この組合せが多いのは,実際にそうした男女関係が進行しつつあるからなのか,主たる観客層であるアラフォー世代の女性を狙った営業戦略なのか,考え込んでしまう。オヤジ世代はC・ゼタ=ジョーンズが目当てだが,うーむ,確かに熟女になってしまった。
 ■『ニュームーン/トワイライト・サーガ』:『トワイライト~初恋~』(09年4月号)の続編だが,米国で凄まじい興行成績を上げている。ヒット作の2作目の観客動員がいいのは当然だが,ここまでとは思わなかった。美しきバンパイアと女子高生のラブ・ロマンスは,敵対関係にある狼一族を巻き込んだ物語にスケールアップしている。ただし,監督は変わっても,展開も音楽も平板で,なぜこんな作品に人気がでるのか理解できない。この種のファンタジーは嫌いではないのだが,本シリーズは全く面白いと感じない。Tippett Studio担当の狼の出来映えも感心しない。好みには合わなくても,若い世代の共感を呼ぶ作品なら,少しは理解しようと努めたが……。やっぱり,ダメだ。米国の批評家筋の評価がそう低くないのが不思議なくらいだ。
  ■『カティンの森』 :『戦場でワルツを』の前年のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督が,第二次世界大戦中にソ連の捕虜となったポーランド軍将校が虐殺された「カティンの森事件」を描く。こんなすごい事件が長い間封印されていたとは知らなかった。何と,ワイダ監督の父親もこの事件の被害者だという。それを単なる真相解明,歴史的告発に留めず,家族の帰還を待ちわびる女性の視点から捉えた脚本と演出は,さすが巨匠だ。観賞後,この事件の資料を読むにつれ,改めてエンディング・シーンが胸に迫る。老監督が両親に捧げたこの作品は,同時に祖国ポーランドの戦没者に向けた鎮魂歌だ。
 ■『パブリック・エネミーズ』:1930年代前半,大恐慌時代の米国で銀行強盗と脱獄を繰り返した指名手配犯ジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)と愛人ビリー(マリオン・コティヤール)の逃亡劇を描く。彼らを追うのはFBIフーバー長官がシカゴ支局長に抜擢したパーヴィス捜査官(クリスチャン・ベイル)だ。まるで『俺たちに明日はない』のボニーとクライドと『アンタッチャブル』のエリオット・ネス隊長を組み合わせたかのようだが,その想像通りで間違いない。監督・共同脚本は,シカゴ出身で『インサイダー』(99)『マイアミ・バイス』(06)のマイケル・マン。有能な監督が,大スターたちを起用し,じっくりメジャー系娯楽作を撮ったらこうなるという見本のような映画だ。
 ■『ジュリー&ジュリア』:米国の食卓に一大革命をもたらした料理研究家ジュリアと,彼女の残したレシピを忠実に再現し,その記録をブログで発進する若い女性ジュリーの2つの実話がもとになっている。『ダウト~あるカトリック学校で~』(08)で共にオスカー・ノミネートされたメリル・ストリープとエイミー・アダムスの再共演というのが嬉しい。50年の時を隔てているので2人が対面することはないが,パリとニューヨークを舞台に別々に展開する物語の組み合わせが上手い。すべての女性への応援歌というが,脇役である男でもこの2人ならしっかり応援したくなる。唯一の欠点は,登場する料理がさほど美味しそうに見えないことだ。
 ■『インフォーマント!』:経済もの社会派コメディとでもいうのだろうか,ユニークな映画だ。大手穀物商社の不正を内部告発し,FBIと連携してスパイ気取りで証拠を探す主人公をマット・デイモンが演じる。元CIAエージェントで身体能力抜群のジェイソン・ボーンとは大違いで,アクションは全くなし。事実と空想の区別がつかない稀代の告げ口屋ゆえに,全編セリフだらけの映画だ。108分の長さだが,通常の2倍以上の密度で飛び出す言葉の山に,字幕翻訳家はさぞかし苦労しただろう。筆者もそのペースについて行けず,スティーブン・ソダーバーグ監督描くこの情報過多映画を全部は理解できなかったと白状しておこう。もう一度観るかな?
 ■『(500)日のサマー』:サンダンス映画祭で熱狂的支持を受け,全米の若者たちのハートを掴んだ話題作らしい。恋する男の愚かさと誠実さを等身大で描いたというが,単なる軟弱男が彼女をモノにできなかった敗戦記録じゃないか。本邦のケータイ小説に毛が生えた程度の青春映画だ。世界中で若い男の非力化が進行している証拠だとしたら,嘆かわしい。500日間の交際期間の時間軸を往き来する語り技法は『メメント』(00)を真似たのだろうが,監督が自画自賛するほどの出来ではない。音楽が良かったので,評点は+だけオマケだ。  
 
  (上記のうち,『ニュームーン/トワイライト・サーガ』はO plus E誌には非掲載です)  
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