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O plus E誌 2005年7月号掲載
 
 
バットマン ビギンズ』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C)2005 Warner Bros. Ent  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月18日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にて公開中]   2005年5月27日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  バットマン誕生を語る5作目はシリーズ最高作  
 

 フォックスの『SWエピソード3』の観客動員が下降する頃を狙ってワーナーがこの夏にぶつけてきた話題作は,『バットマン』シリーズ久々の5作目だ。大富豪の息子ブルース・ウェインがいかにして「バットマン」となったかの誕生秘話を描くルーツものだ。世界同時公開で,日本ではこちらが先に公開される。
 オープニングはいきなりコウモリの大群で,舞台となるゴッサム・シティの偉容は,前作までとはスケールが違うなと感じさせる。監督ティム・バートン,主演マイケル・キートンで映画化された『バットマン』 (89)『バットマン リターンズ』(92)は,良くも悪くもティム・バートンらしい虚構の世界で,現実離れしたゴッサム・シティも筆者は好きになれなかった。監督ジョエル・シューマカー,主演ヴァル・キルマーに変わった『バットマン・フォーエバー』(95),同監督,主演ジョージ・クルーニーでの『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』(97)も,前作の強烈な印象を踏襲していた。
 3代目監督は『メメント』(00)『インソムニア』(02)のクリストファー・ノーランで,彼は見事にこの殻をぶち破り,スケールの大きなエンターテインメントに仕上げた。4代目バットマンのクリスチャン・ベールも,激痩せで臨んだ『マシニスト』(04)から生還したかのような生気で,若き日のブルース・ウェインを演じている。
 資産家の両親を亡くしたブルース少年が,悪を憎み,ヒマラヤの奥地で武術修行をし,戦闘力・ツール・テクノロジーを身に付けて行く過程が丁寧に描かれていて,「闇の騎士」が誕生する背景に説得力がある。アイスランド・ロケで撮影した氷上の鍛練シーンなどは出色だ。
 それゆえに,バットマン誕生時の爽快感は格別だし,後半のアクション・シーンの迫力も素直に受け止められる。ある意味では「スーパーマン」や「スパイダーマン」の作りに似てしまったとも言えるが,アメコミものはこれでいい。観客が娯楽大作に求めているのは,ヒーローが悪漢を倒す爽快感であり,奇妙な芸術性ではない。文句なしにシリーズ最高作と言っていいだろう。
 これまでも豪華キャスティングがウリだったシリーズだが,マイケル・ケインの執事アレックスははまり役だ。モーガン・フリーマン,リーアム・ニーソン,ゲイリー・オールドマンという芸達者な助演陣に混じって,我らが渡辺謙も登場する。今後もハリウッド映画出演が続き,抜群の存在感を示してくれることだろう。
 さて視覚効果はと言えば,コウモリの大群は勿論 CGだし,シカゴを下敷きにしたゴッサム・シティの描写にVFXはふんだんに使われている。それでいて,バットマンの飛翔シーンにトリックはなく,すべて実演だという(写真1)。名物のバット・モービルは,今回はまるで戦車かと思わせるデザイン(写真 2)で,これは5台もの実車が製作されたそうだ。

 
     
 

写真1 バットマンのこの飛翔はトリックなし

  写真2  戦車のような新バット・モービル  
 
 
(c)2005 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
 
     
 

 そのチェイス・シーンや,ウェイン家の炎上・倒壊の迫力は,勿論 VFXのなせる技だ。クライマックスでのモノレールの爆走・墜落シーンは,最近の迫力あるアクション・シーンを見慣れた目にも,これは凄いと感じさせる出来だ。それらのシーンのスチル写真が一切提供されないのが残念である。VFX主担当は筆者のお気に入りのDouble Negative(英)で,他にMoving Picture Co.(英), BUF Campagnie(仏),Rising Sun Pictures(豪)など,最近は米国外のスタジオの活躍が目立つ。
 バットマンと対峙する悪人が二段構えで,堪能するが.その分 2時間20分は少し長いなと感じる。それでも,退屈させずぐいぐいとバットマン誕生秘話から闇の騎士の活躍物語に没入させてくれるのは,ハンス・ジマーの音楽だ。爽快でありながら,バットマンらしい暗い闇の世界のフィーリングも残している。今や,ジョン・ウィリアムズと双璧かそれ以上の存在だ。この映画も,映像以上に音楽の善し悪しが,映画の成否を決めると感じた作品である。

 
          
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