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O plus E誌 2012年7月号掲載
 
 
 
 
『スノーホワイト』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)
 
 
      (C) 2012 UNIVERSAL STUDIOS

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [6月15日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2012年5月24日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新解釈のお伽話は,躍動感,ボリューム感たっぷり  
  お馴染みの「白雪姫」の実写映画である。予告編を観た観客たちの印象では,『アリス・イン・ワンダーランド』(10年5月号)にそっくりと感じるようだ。それもそのはず,共にベテラン・プロデューサー,ジョー・ロスが企画した作品であり,衣装デザイン担当のコリーン・アトウッドらも引続き登板している。慣れ親しんだ童話の題名を使わず,カタカナ表記にしたことまで同じだ。ただし,配給会社は異なり,監督も違っている。本作はCG/VFXを多用したアクション大作でありながら,2D作品に留めている。
 監督は,英国出身の映像作家ルパート・サンダース。CM映像分野では相当の実績をもつ有名人のようだが,これが長編映画監督デビューである。なるほど,ビジュアル・センスは抜群で,物語は分かりやすく難解ではないが,映像的には様々な冒険を行っていて,CG/VFX的には見どころ満載である。
 主演の白雪姫(Snow White)を演じるのは,『トワイライト』シリーズのクリステン・スチュワート。若い女性に大人気のヒロイン,ベラを演じる彼女を選んだという時点で,同シリーズの人気に便乗した作戦であることが分かる。最終作目前の最新作Part 1のラストは, 妊娠・出産後に眠り続けていた彼女が,カッと目を見開いて覚醒するシーンであったから,毒リンゴを食べた白雪姫も同じように目覚めることを想像してしまう。ただし,本作でのSnow Whiteは,ベラほど可憐でなく,少し険しい表情の闘う女のイメージである(写真1)。実際,物語の終盤では甲冑姿で登場し,ジャンヌ・ダルクを彷彿とさせる存在だ(写真2)。「この夏,世界は始めて出会う。戦う白雪姫と……」なるキャッチコピーを使っているように,ディズニーアニメが描いた『白雪姫』のイメージとは相当違うことを強調している。
 
 
 
写真1 吸血鬼と狼に慕われて,こんな険しい顔立ちに 写真2 後半は甲冑姿で,軍勢を率い,城を攻める
 
 
  王妃となって義母となり,やがて王を殺して女王となる魔女のラヴェンナは,『モンスター』(03)のシャーリーズ・セロンが演じる。演技派開眼し,最近汚れ役が多かった彼女だが,この王妃役は相当に美しい(写真3)。これでは,鏡に「誰が一番美しい?」と問いかけ,「貴女より白雪姫の方が美しい」と答えられて,怒るのも当然だ。そうそう,お馴染みの鏡のシーンや毒リンゴを食べるシーンは存在し,森の小人たちもしっかり登場する。ただし,鏡はまるで『ターミネーター2』(91)に登場する液状金属ロボットT-1000のようであり(写真4),小人たちは,後述のようにVFXを目一杯使った表現である。
 
 
 

写真3 義母で王妃のラヴェンナの方がずっと美しい?

 
 
写真4 お馴染みの語りかけの相手は液状化した鏡男(ミラーマン)
 
 
  では,白雪姫にキスをする白馬に乗った王子様はといえば,ハモンド公爵の息子で幼なじみのウィリアム王子が,そのイメージなのだろう。『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(11) で人魚に恋する宣教師役だったサム・クラフリンが演じている。なるほど,ディズニー流王子様のノーブルなルックスだ(写真5)。ところが,白雪姫が恋する相手は,逃亡の道案内をする樵夫のエリックで,クリス・ヘムズワースが『マイティ・ソー』(11年7月号)そのままの精悍な役柄で,女心をくすぐる(写真6)
 
 
写真5 幼なじみのウィリアム王子 写真6 精悍なイメージは,マイティ・ソーそのもの
 
 
  原作はグリム童話らしく,少し暗く,恐ろしいお伽話風の味付けになっているが,脚本も絵作りもしっかりしていて,中盤のロードムービーも,終盤のバトル・アクションも,十二分に楽しめる。以下,CG/VFXシーンに関する解説と感想である。
 ■ 森の小人たちは,いわゆる小人俳優を起用しているのかと思ったら,演じているのは英国の名優たちだそうだ。上半身しか登場させないシーンが多いが,全身の場合は,CG/VFXで加工して胴体や脚を短くしたり,小人俳優を起用し,頭部だけをすげ替えたようだ(写真7)
 
 
 
 
写真7 小人たちの登場場面は,数々のトリック撮影の産物
 
 
   ■ 上記のミラーマンの他,多数の兵士,森に住むクリーチャー等々でCG/VFXは多用されている(写真8)。Rhythm & Hues, Double Negative, Pixelmondoの3社が主担当だが,The Mill,BlueBolt,Baseblack, Lola VFX,Hydraulx等々の名も見える。黒い森のおどろおどろしい表現から,妖精が住む森の明るく陽気な雰囲気への転換は中盤の見ものだ。終盤,ラヴェンナが分身であるカラスに変身したり,彼女の影の軍隊が変幻自在に戦う様は躍動感に溢れている。いずれも,この監督のビジュアル・センスの良さが感じられるパートだ。
 
 
 
 
 
 
写真8 粉々に砕け散る多数の戦士(左)や森の住人トロール(右)など,VFXシーンもきっちり水準以上
(C) 2012 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
 
 
   ■ 白雪姫の父,マグナス王が築いた城のシルエットは,ディズニーランドのシンボルである「シンデレラ城」に似ている。城の内部は大型セットでの撮影というが,外観はCGによる描写だろう。新しい解釈と言いつつ,ディズニーアニメの偉大さに対して,敬意を表したのだろうと思われる。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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