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O plus E誌 2007年5&6月号掲載
 
 
スパイダーマン3
(コロンビア映画
/SPE配給)
 
      c 2007 Sony Pictures Industries, Inc.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [5月1日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2007年4月16日 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  3作目も文句なく楽しめる盛り沢山の娯楽大作  
 

 数年前から,日米同時公開,世界同時公開が増えている。字幕翻訳者泣かせであり,当欄のような月刊誌の評も公開に間に合わないことを,過去にも何度かボヤいてきた。それが何と,本作品は米国での5月4日よりも早く,日本で5月1日世界最速,全国一斉公開だという。今やコロンビア映画のドル箱中のドル箱作品にそんな我が侭が通ったなと驚いたが,親会社はソニーだから,それも罷り通ったのだろう。好い宣伝材料だ。
 過去2作で知名度も格段に向上した。CGのレベルも作品のスケールも1作毎にパワーアップして行くのがよく分かる。広告宣伝費やタイアップ・ビジネスはそれ以上で,映画館ではかなり早くから予告編が流れ,TVでは5社のタイアップ商品のCMが流れている。
 監督のサム・ライミは再続投で,スパイダーマン/ピーター・パーカー役のトビー・マグワイア,彼女のMJ役のキルスティン・ダンスト,親友のハリー役のジェームズ・フランコも変わりない配役だ。
 公開までストーリーも徹底した箝口令が敷かれているが,2つ事前情報がある。第1作目の敵,グリーン・ゴブリンはハリーの父親だったが,本作ではハリー自身が父の敵を打つべくニュー・ゴブリンとして登場することが,前作から暗示されていた。もう1つ事前情報は,予告編やポスターで黒いコスチュームのブラック・スパイダーマンが描かれていることだ。悪の手で,邪悪な心をもったスパイダーマンが登場するというのでは,『スーパーマンIII/電子の要塞』(83)と同じ着想で能がない。それをどう処理するかが腕の見せどころである。
 さて,たった1回限りというマスコミ用試写会は肌寒い月曜日の朝,TOHOシネマズ 六本木で行われたが,開場前から長い列ができていた。予想通り,録音・録画機能のある携帯電話や電子機器はすべて召し上げ,厳しいボディチェックの厳戒態勢は米国の空港並みかそれ以上だった。これで映画がつまらなければ,批評家たちからは通常以上の酷評を浴びるはずだが,それを跳ね返すだけの自信があるのだろう。
 この種の娯楽大作なら,派手なアクション・シーンは3回か4回あることが予想できる。ニュー・ゴブリンとの戦い(写真1)は,予想以上に早い時点で登場した。まだパワー全開ではないのに,かなり小気味いい派手なアクションの演出だ。全身スキャンのデジタル・ダブルとMoCapデータなしでは実現できない動きや構図で,一昔前の映画では有り得なかったアクションだ。大型クレーンがビルを舐めて破壊するシーンも絶品で,随所でVFXの威力を見せつける(写真2)。他作品にはないアイディアであるのが嬉しい。蜘蛛の糸を使ってのジャンプやスウィングもますます磨きがかかっている。
 黒いコスチュームのブラック・スパイダーマン(写真3)の原因は,惑星外からの正体不明の漆黒の生物(写真4)に取り憑かれたためだった。というとスーパーマンと同じように聞こえるが,少し役割を変え,まずまず上手く処理されていた。むしろ見ものは,予告外の恐怖の砂男(サンドマン)の登場である。身体に穴が開いたり,自在に砂になって崩れたり(写真5)というのは,『ターミネーター2』の液状金属ロボットT-1000の亜流であるが,映像表現そのものは相当高度になっている。さすが,製作費3億ドル(357億円)だけのことはある。Sony Pictures Imageworksの実力も上がったなと感じられるシーンの連続である。
 中盤までの展開はめまぐるしく,3つの敵が相手では複雑過ぎて消化不良を起こしそうだったが,クライマックスで2:2の対戦に持ち込む筋立てはなかなか見事だ。(ネタバレになるので詳しくは書けないが)ニュー・ゴブリンとの壮絶な対決を想像させておいて,見事に矛先をかわしてくれるとも言える。
 単なるスーパーヒーローではなく,素顔のピーター・パーカーは少しドジで人間味がある。褒められて図に乗る様は滑稽で,親しみがもてる。そうした時のフニャけた顔は三浦和義(知良ではない!)に似ているかと思えば,ブラック・スパイダーマンのスーツを着て,冷徹で凄みのある顔はマイケル・ダグラスにも似ている。この使い分けは,さすが俳優だ。しばし忘れていたが,トビー・マグワイアは有望な若手演技派俳優だった。
 人気シリーズの3作目は,期待にたがわず盛り沢山で入場料分はしっかり楽しませてくれる。GWのデート・ムービーにはぴったりだ。もっとも,『バベル』(07年4月号)と比べてどちらが面白いですか,と問われて驚いた。全く比較対象じゃないのに……。
 この映画を比べるなら,相手は他の人気シリーズの最新作である。『M:i-3』(06年7月号)『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(同9月号)よりも上に評価できるが,『007/カジノロワイヤル』(07年1月号)には負ける。『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(06年8月号)とは好い勝負だ。

 
     
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写真1 早々に登場するニュー・ゴブリンとの戦い   写真2 こうしたデジタル合成も随所に登場
 
 
写真3 これがブラック・スパイダーマン   写真4 粘着性の漆黒の生物がスパイダーマンを襲う
 
 
 
 
写真5 変幻自在に砂になれ,人間の形に戻れるサンドマンが登場
(C)2007 Sony Pictures Industries, Inc.
 
   
   [注]試写会と原稿締め切り日の関係で,予め冒頭部を書いておき,観賞後に評点を与え,後半は次号に掲載しました。このページでは両者を統合し,多数の画像データを載せています。   
   
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