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O plus E誌 2010年12月号掲載
 
 
 
 
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
 
      (C) 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [11月19日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2010年11月15日 東映試写室(大阪)   
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  大団円に向けての助走ながら,3人のドラマは上質  
   ようやく,最終章の入口にさしかかった。全7巻で毎年1冊刊行される世界的ベストセラーを,映画は2001年から3年遅れで追いかけたので,当初予定では2007年に完結しているはずだった。3作目から既に遅れが生じて1年半毎の公開になり,5作目と6作目の間は2年間を費やしている。原作本の邦訳自体が4作目から上下2巻に分かれる大部であるから,映画も前後編に分けることを当欄では再三提案していたのだが,ようやく最終章にして,これが実現した(当欄の意見を取り上げてくれた訳はないが……)。
 振り返ってみると,1作目『賢者の石』(01年12月号),2作目『秘密の部屋』(02年12月号) は,まだ手探り状態で,お子様映画を豪華に脚色しているという域を出なかった。監督に『ホーム・アローン』(90)のクリス・コロンバスを起用したことからもそれが伺える。同時期公開の『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(01〜03)とは,明らかに対象観客層が違う,もっと下の年齢層とそのファミリーを狙っている,と言わんがばかりだった。当時のCG/VFX技術も未熟で,利用するシーン自体が手探り状態だった。
 それが一変したのは3作目の『アズカバンの囚人』(04年7月号) からで,作品自体もVFXも俄然充実する。。『炎のゴブレット』(05年12月号)も上出来で,この2作は独立した作品としても面白かった。ところが,5作目『不死鳥の騎士団』(07年8月号) ,6作目『謎のプリンス』(09年8月号)となると,作品としての完成度が急落する。大団円に向けての繋ぎであることは止むを得ないとしても,原作のボリュームを2時間半の枠に収めるのに相当苦慮している感が否めなかった。
 この2作に比べると,この最終章のPART 1はかなりデキが良い。2つに割ったのだから,当然,結末らしきものはなく,PART 2への助走に過ぎない。それでも満足度が高いのは,題材の圧縮に苦労せず,物語をじっくり描き込めたからだろう。刻々と迫る終章の緊迫感の中で,ハリー,ロン,ハーマイオニーの3人の個性を存分に描き切り,脚本と演出の巧みさを感じた。
 当初3D版の公開が宣言されていたのに,本作は2D版しか登場しなかった。PART 2は3D版もあるというから,単に「2D→3D変換」が間に合わず,断念したのだろう。この映画は,似非3Dで観る必要など全くなく,2D版で十分である。以下,VFX論議を含む雑感である。
 ■ 最終章のイニシアティブを取るのは,何と言っても,闇の帝王・ヴォルデモート様だ(写真1)。その個性的で気味の悪い面相は,勿論,特殊メイクでの登場だが,そのアップの横顔を見る限り,VFXの力も借りているように見える。きっちり冒頭と最後に登場して存在感を示すが,彼自身の出番は意外と少ない。
 
   
 
写真1 最終巻は,いよいよこの人が本格的に登場?
 
   
   ■ VFXの前半の見どころは,7人のハリーが登場するシーンだ。ハリーの存在を隠すため,不死鳥の騎士団の仲間の顔をハリーの顔にすげ替える場面で,このシーンは笑える(写真2)。勿論,デジタル処理のなせる技だが,7人ともなるとしっかりプレビズしてあったと思われる。これに続く空中の格闘シーン(写真3)からは派手なアクションが続くのかと思わせるが,後はハリー達3人組が分霊箱を追うロードムービー風の展開となる。   
   
 
 
写真2 これは3Dでもっと観ていたい
   
 
写真3 夜の空中シーンは,なかなかの見もの
 
   
   ■ VFX担当は,MPCがトップで,Double Negative, Cinesite, Framestore,Rising Sun Pictures, RISE-FX等々のスタジオ名が並ぶ。実は予告編やTVスポットはインチキで,PART 2の見せ場までも含めてしまっている。PART 1のVFXは,もっと大人しい上品なVFXばかりだ。強いて言えば,既登場の大蛇やドビーが目立つ存在だろうか。第2作で初登場した「屋敷しもべ妖精」のドビー(写真4)が本作では重要な役どころを演じる。デジタル・キャラクターとしては,いい出来だ。最新技術をもってすれば何のことはないのだが,第2作と比べてみれば,改めてCG技術の進歩に気付くことだろう。その他,死喰い人(写真5),地下の魔法省の内部(写真6),呪文や杖で引き起こされる魔法の数々(写真7)等,描き慣れたシーンは上質だ。     
   
 
写真4 地味なドビーも本作では重要な役を担う
 
   
 
写真5 空から登場の邪悪な存在は,前作でもお馴染み
 
   
 
写真6 壮大なセットをVFXで加工
 
   
 
写真7 この程度のちょっとした魔法シーンが多数登場
 
   
   ■ 主人公3人が,これだけじっくり登場するのも珍しい。ロードムービーとしても上質で,皆気合いが入っている。ハリーを演じるダニエル・ラドクリフは,すっかり大人の顔になり,髭剃り跡が目立つ(写真8)。ハーマイオニーのエマ・ワトソンはさらに美形になり,将来大女優になる風格すら漂う(写真9)。逆に,ロン役のルパート・グリントには,やんちゃ坊主らしい風貌が戻ってきた。        
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写真8 すっかり大人の顔に。マイケル・ダグラスに似てる?
 
   
 
 
 
写真9 まだ20歳でこの貫録。将来は,大女優に。
(C) 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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