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O plus E誌 2010年12月号掲載
 
 
 
 
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』
(東宝配給)
 
 
      (C) 2010 SPACE BATTLESHIP ヤマト製作委員会

  オフィシャルサイト[日本語]  
 
  [12月1日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国東宝系にて公開予定]   2010年11月2日 東宝試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  レトロなタッチとCG製のヤマトの雄姿に感激  
   奇妙な題がついているが,1970年代後半から1980年代前半にかけて,社会現象と言えるブームを巻き起こしたアニメ・シリーズ『宇宙戦艦ヤマト』の実写映画化作品である。国際的展開を意図して英語を冠したというが,ただの直訳に過ぎない。 監督は,戦艦もの得意の樋口真嗣氏の予定だったのが,ヒューマンドラマを重視して『 ALWAYS 三丁目の夕日』(05年11月号) の山崎貴監督にスイッチされたと聞く。そう言えば,山崎作品は初監督作品『ジュブナイル』(00年7月号)以外,すべて英単語が付されている。これは山崎氏の好みなのだろうか? いや,英語は全く苦手だと公言する同氏ゆえに,彼の希望とは思えない。製作委員会の誰かが,こんなセンスのない題名にしてしまったのだろう。
 なぜそんなに題名に拘るかといえば,我が国のアニメ・ブームを引き起こし,膨大なファンをもつシリーズを,現代風の浅薄な解釈で,見るも無残な作品にしてしまっていないかという危惧を感じたからだ。話題のもう1つは,主演の男優・女優のキャスティングである。艦長代理のヒーロー古代進役に,少し薹が立ち始めた木村拓哉を起用しただけで,ネット上では賛否両論が渦巻いた。加えて,ヒロイン森雪役に決まったお騒がせ女優・沢尻エリカが,種々の騒動で自ら降板してしまい,代役には沖縄出身の黒木メイサが選ばれたという顛末である。
 そうした週刊誌ネタをたっぷり振り撒いてクランクインした本作の出来映えを,試写を観る前にいくつか予想してみた。まず考えられるのは,ドラマ性を強調しようとするも,大人気シリーズと知名度が高い男優の縛りに圧倒されて身動きが取れず,演出もCGも中途半端な凡作に終わってしまうケースだ。大作によくあるパターンである。もう1つは,今でも「監督・VFX」という表記に拘る山崎氏ゆえに,キムタクもメイサもそっちのけで,徹底的にCG製の「ヤマト」の描写に注力したパターンだ。これなら『スター・ウォーズ』シリーズ同様,ヤマト・ファンに満足感は与えられるはずだ。
 結論を先に言えば,見事に後者のパターンに仕上がっていた。筆者はそれほどのファンではなく,日曜夜のTV放映時には,裏番組の『アルプスの少女ハイジ』や『フランダースの犬』を観て過ごした派に属する。それでも,このCG製ヤマトの雄姿は見惚れてしまった。戦闘シーンも見応えがある。この映画はもうそれだけで良い。古代進は,キムタクでも誰でもいい。以下,素直な感想のオンパレードである。
 ■ 22世紀末,ガラミス帝国に侵略され,放射能汚染された地球を救うため,宇宙戦艦ヤマトは放射能除去装置を求めて遠いイスカンダル星に向かうという設定はオリジナル版そのままだ。勿論,結末は違うが,松本零士が描いたヤマトを見事に3D-CG化しているし (写真1) ,クルーの制服デザインもそのまま踏襲しているので,ヤマト・ファンは素直に入り込めるに違いない。
 
   
 
写真1 地球をバックにしたヤマトの雄姿にうっとり
 
   
   ■ ヤマト艦内も物語のタッチも,とにかくレトロだ。このチープな感じは,1970年代のTV番組そのもので,実写ゆえに,むしろTV版『スタートレック』シリーズを思い出す。この映画全体も,昨年公開され,大成功を収めた『スター・トレック』(09年6月号)を相当意識しているように感じられた。ヤマトの建造シーン (写真2) などは,規模は違えど,エンタープライズ号のそれを彷彿とさせる。ファンならずとも雲を割いて浮上するヤマトの姿 (写真3) に胸がときめくのは,日本人が根っから戦艦大和に思い入れがあるためだろうか。     
   
 
写真2 エンタープライズ号の建造シーンを思い出す
 
   
 
写真3 雲の下から始動する姿もいい出来映えだ
 
   
   ■ 宇宙を進むヤマトの姿が美しい。船体の傷や光沢の表現も見事で,砲撃や爆発もCGの威力を感じさせてくれる (写真4) 。『THE LAST MESSAGE 海猿』(10年10 & 11月号)でなく,この映画こそ3D化する価値があったのではないかと感じた。他のSF映画へのオマージュだと感じるシーンが多々登場する。例えば,分析ロボットのアナライザーは,元々頭部はR2-D2に似ているが,立ち上がってのアクション姿は,まるで『トランスフォーマー』(07年8月号)だ。意図的なオマージュでないとしたら,山崎監督や白組のスタッフは,数々のSF映画の洗礼を受け,体内にそのDNAが染みついているのだろう。数々の宇宙艇やクリーチャー類のCG化もしっかりしていた。残念なのは,そのスチル画像が提供されないことである。     
   
 
写真4 砲撃シーンも美しい。CG担当者に拍手!
 
   
   ■ なるほど噂通りキムタクの容色は落ち,かつて同性にもイケメンだと感じさせた昔日の面影はない。洋風の美女だと思っていた黒木メイサは,本作ではかなり地味で,まるで伊達公子だ。筆者には,2人の制服は30年前のスキーウェアに見えたが,女性記者たちは,その下に見えるウェアが安っぽく,まるでユニクロ製品みたいだと話していた (写真5) 。一方,山崎努演じる艦長・沖田十三はアニメのイメージ通りで,堂々たる貫録だった (写真6) 。      
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写真5 なるほど,ユニクロで1000円で売ってそう
 
   
 
 
 
写真6 艦内はチープだが,艦長だけはイメージ通り
(C) 2010 SPACE BATTLESHIP ヤマト製作委員会
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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