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O plus E誌 2007年8月号掲載
 
 
 
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
      (C)2007 Warner Bros. Ent., Harry Potter Publishing Rights (C) J.K.R.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [7月20日より丸の内ピカデリーほか全国松竹・東急系にて公開中]   2007年6月26日 なんばパークスシネマ[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  最終の魔法戦争に備える5作目は,少々退屈  
 

 早いもので,もうシリーズ5作目である。当初年1作のペースで,ハリーを演じるダニエル・ラドクリフの実年齢は小説中と同じであるはずが,3作目以降は1.5年に1作のペースとなってしまい,既に1.5年間のタイムラグが生じている。もっとも,原作の出版も遅れ,前作の公開以降から現在までに第7巻(最終巻)が刊行されることはなく,ようやくこの映画の公開日の翌日(7月21日)世界一斉発売となる手はずだ。
 5作目の監督は,デイビッド・イェーツ。これまで聞いたことのない名前だが,英国のTV界で活躍し,数々の賞に輝く実力派らしい。主要出演陣は前作までと同じだが,途中からダンブルドア校長を引き継いだマイケル・ガンボンもこれが3作目で,すっかりこの役が板について来た。第3作『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(04年7月号)に登場した,ハリーの名付け親であるシリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)が再登場し,重要な役をなすのは喜ばしい。そして,本作品での新登場人物は,意地悪な女教師のドローレス・アンブリッジ先生で,英国ベテラン女優のイメルダ・スタウントンが存在感のある演技を見せている(写真1)
 この映画の上映時間は2時間18分,本シリーズ最短である。毎度少年少女には長過ぎるとの評判だから,少しは短くする努力をしたのだろう。原作の翻訳書は上下2巻でかつ一番厚いから,脚本家泣かせで,エピソードをかなり割愛せざるを得なかったと思われる。
 闇の帝王・ヴォルデモートが蘇った事実(写真2)を訴えるハリーは,復活を信じない魔法界から白眼視され,ハリーを支持するダンブルドア校長もまた窮地に陥る。やがて,ロンやハーマイオニーの協力の下,立ち上がった「ダンブルドア軍団」の助けにより彼の主張が正しいことが証明される。いよいよ勃発する魔法戦争に向けての準備が進む中,ハリー自身は自分の「過酷すぎる運命」を知らされて衝撃を受ける。というのが,あらすじだ。
 結論から先に言えば,全体に物語が暗く,つまらない。最終巻の全面戦争に向けて,物語の展開上,避けて通れない準備の巻ということだろうが,これでは少年少女は退屈してしまう。いや,大人だって退屈する。楽しいはずのクイディッチのシーンは,ばっさりカットされている。子供たちがワクワクするのは,ハリーのファースト・キスのシーンくらいだろうか。それでも興行的には成功するだろうから,あえて捨て石で繋ぎの作品と位置づけたのかも知れない。

 
     
 
写真1 5作目の主役の1人は,このアンブリッジ先生
 
     
 
写真2 復活したヴォルデモートの力は強大
 
     
 

 賛否両論必至と思われるので,これ以上その話題は避け,本時評では以下VFXに関する話題のみを概観する。
 ■ CG/VFXの登場シーンは全編に及び,かなりの分量に達している。担当は,Double Negative,Moving Picture Co., ILM, Framestore CFC, Cinesite Europe等々で,この順にクレジットされている。英国勢が力をつけて来たとはいえ,老舗ILMを従えてDouble Negativeが筆頭で登場するとは,早くから同社を応援してきた筆者としては感慨新ただ。
 ■ 本作で新登場のクリーチャーは2つある。馬と竜の混血のような「セストラル」と,森の番人・ハグリットの半弟の「グロウプ」だ。広げた翼が10mに及ぶ前者は,勿論フルCGの産物だが,身長5mの巨人の後者は,トニー・モーズリーなる俳優をMoCapして作られている。いずれも悪くない出来映えだが,驚きはない。
 ■ サービスカットとも言えるのが,ハリーやロン達が箒に乗ってロンドン市内を巡る飛行シーンだ。昼も夜も美しいが,ライトアップされた国会議事堂は絶品だ。ピンク一色のアンブリッジ先生のオフィスとその壁に掛かった猫の皿も楽しい(写真3)。いずれも座布団1枚進呈だ。
 ■ デザインが出色で特筆すべきは,地下都市と魔法省の建物だ(写真4)。幅36m,高さ9mというロビーも素晴らしい。いずれも視覚効果の威力によるもので,このビジュアル担当者には,座布団2枚だ。

 
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写真3 壁の皿にいる猫が1匹ごとに動くのは,なかなか壮観
 
 写真4 これが魔法省のある地下都市。いいデザインだ。
(C)2007 Warner Bros. Ent., Harry Potter Publishing Rights (C) J.K.R. Harry Potter characters, names and related indicia are trademarks of and (C)Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加してします)  
   
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