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O plus E誌 2010年4月号掲載
 
 
『シャーロック・ホームズ
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2009 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月12日より丸の内ルーブルほか全国ロードショー公開中]   2010年3月3日 御堂会館
 
         
   
 
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ウルフマン』

(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)

      (C) 2009 Universal Studios
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月23日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー公開予定]   2010年2月23日 TOHO シネマズ 梅田[完成披露試写会(大阪)]
 
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新しいホームズ像は賛否両論だが,映画は愉しめる
 
 

 公開時期もかなりずれているし,一見繋がりのない2本だが,いくつも共通点がある。まず,ともに何度も映画・テレビに取り上げられた著名なネタであり,それぞれ結構ユニークな組合せの二大スターの共演となっている。そして何よりも,19世紀末のロンドンを舞台にしているという点が最大の共通項と言えるだろう。
 1本目は,先月号で試写会のタイミングが合わず,紹介し損ねた『シャーロック・ホームズ』である。当欄としては,見逃せない大作だ。原作は今更触れるまでもないだろう。この映画を観た観客の反応は,
(A) 熱心なシャーロキアンで,こんなものにシャーロック・ホームズの名前を使うなと怒る
(B) 原作は全く未読で,知識すらなく,純粋にこの映画だけを愉しむ
(C) 原作や過去の作品を熟知した上で,これは新しいホームズ&ワトソン像だと喜ぶ
(D) 映画としては評価するものの,やはりこれはシャーロック・ホームズじゃないなと少し残念がる
に大別できるかと思う。もうお分かりのように,原作のイメージとはかなり違うシャーロック・ホームズが登場するが,映画としての出来映えは上々なのである。
 監督は,『スナッチ』(00)『ロックンローラ』(09年3月号)のガイ・リッチー。生粋のロンドンっ子であるが,この人選を見ただけで,素直なホームズ譚ではなく,新感覚のホームズ像に挑戦させる気だなと理解した。主人公の名探偵を演じるのは,『アイアンマン』(08年10月号)の ロバート・ダウニー・Jr。彼の風貌を想像しただけで,従来のクールで女嫌いのホームズとはイメージが違う。果たせるかな,この異才俳優の魅力を十分に出したアクション大作に仕上がっている。
 ホームズ以上にイメージが違うのが,友人で相棒のジョン・H・ワトソン博士だ。温厚だが少し鈍い感もあった中年紳士に,何とイケメン俳優のジュード・ロウを配した。脇役で語り部のはずが,この映画では体育会系とも言える奮闘振りで,時にはホームズよりも前面に出て活躍する(写真1)。敵役の連続殺人犯・ブラックウッド卿にマーク・ストロング(写真2),レストレード警部のエディ・マーサンという布陣だが,事件のスケールが大きく,世界を転覆させようかという企みに巻き込まれる。
 ハンス・ジマーの音楽に合わせて快適に飛ばすが,謎解き部分は最後に一気に登場する。よく観ていないと,伏線が分かりにくい。そして,宿敵モリアーティ教授の名前が飛び出し,続編への期待させるエンディングとなる……。筆者の反応はと言えば,タイプ(D)だ。

   
 
写真1 原作のイメージと異なり,アクションもこなす新コンビ
(手前:ワトソン,後:ホームズ)
 
 
   
 
 
 
写真2 これが敵役のブラックウッド卿。死んだはずだったのだが……。
(C) 2009 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
 
   
   
  重厚過ぎるくらい重厚で暗いサンペンス・ホラー
 
 

 もう1本の『ウルフマン』は,カタカナで書かれるとアメコミのヒーローかと錯覚するが,満月の夜になると凶暴な殺人鬼と化す古典的な「狼男」のことである。映画史の中では,『倫敦の人狼』(35)『狼男』(41)が特殊メイクの代表例として名高いが,筆者は未見である(さすがに,生まれてもいなかった)。その後も『狼男アメリカン』(81)『ティーン・ウルフ』(85)等々が作られているし,『ヴァン・ヘルシング』(04年9月号)ではドラキュラ伯爵,フランケンシュタインと並んで3大モンスターとして登場する。『ハリー・ポッター』シリーズで第3作目以降に登場する魔法使いルービンも,正体は狼男だという設定である。
 この呪われた宿命を背負うタルボット卿父子を,『羊たちの沈黙』(91)『ハンニバル』(01年4月号)のアンソニー・ホプキンスと『トラフィック』(00)『チェ』(09年1&2月号) のベニチオ・デル・トロが演じる。この2人のオスカー男優の共演に加えて,ヒロインのグエンに『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(10年1月号)で堂々たる女王ぶりを発揮したエミリー・ブラントという豪華なキャスティングだ。監督は,ILM出身で,『遠い空の向こうに』(99)『ジュラシック・パークIII』(01年9月号) を手がけたジョー・ジョンストン。VFXの効用を知り尽くした上で,重厚な物語を演出できる監督として起用されたのだろう。
 物語は,父親との相克,狼男に変身する主人公の苦悩を描くサスペンス・ホラーで,重厚過ぎるくらいに重厚だ。まるでシェークスピア劇で,ここまで暗い物語にする必要があったのかと思う。風格ある絵画調の映像も演出の腕も評価しながら,好きになれない一作だ。

   
   
  今やどんな時代のロンドンも描けるDN社の腕
 
 

 映画の総合評価としては辛めの点数をつけた両作品だが,VFX的にはともに見どころの多い作品だった。
 注目は,両作品のVFXに参加したDouble Negative (DN)が描くロンドンの街の描写である。盟友のMoving Picture Co. (MPC)とともに,今や『007』シリーズや『ハリー・ポッター』シリーズをはじめ,ロンドンを舞台とする作品のほとんどを担当しているから,ロンドン市街地は完全に手の内に入っている。少なくとも,エリザベス1世の時代から現代まで,どの地区の街並みでも描き分けられるだけのデータと腕をもっているようだ。19世紀末のウェストミンスター橋の人通りや建設中のタワー・ブリッジの上からの景観など,本物そっくりに描いているはずだ。その前提の上で,架空のベーカー街221B付近がしっかり登場するから,思わずニヤリとするファンが沢山いたことだろう。
 もう1本の『ウルフマン』も,時代背景は全く同じヴィクトリア朝の1891年だ。VFXには,DN, MPCの他にPeerless Camera,Rhythm & Huesも参加している。こちらはロンドンだけでなく,霧深いブラックムーアの村も主たる舞台なので,その描写も大きな課題だ。タルボット城自体は15世紀建設の大きな館を使用したが,その周りをブラックムーアの村に見せるのに,DN社のノウハウがふんだんに使われている(写真3)。ちょっと変なのは,MPC担当のタワー・ブリッジのシーンだ(写真4)。『シャーロック・ホームズ』ではまだ建設中だったはずなのに,この映画ではもう完成しているように見える。実際は1886年に着工され,1894年に完成のはずだから,このシーンはMPCの勇み足なのだろうか?

   
 
写真3 堂々たる館は本物だが,周辺はVFXで加工  
 
   
 
写真4 本作では既にタワー・ブリッジが完成している  
 
   
 

 狼男のメイク(写真5)は,お馴染みのリック・ベイカーが担当している。『グリンチ』(01年1月号) 等で6回もオスカーを得ている特殊メイクの達人だ。そのメイク顔への変化や狼男の素早い動きはR&Hの手なるVFXである。手が変形して,みるみる内に爪が伸びてくるシーンなどは,見事な出来映えだ(写真6)。これだけ最高峰のVFXを駆使しながら,映画としては今イチなのが残念至極だ。  

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写真5 この顔はまだ変身途中のメイクアップ  
 
   
 
 
 
写真6 掌が膨らみ爪が伸びてくるシーンは、なかなかの見もの
(C) 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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