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O plus E誌 2010年4月号掲載
 
 
 
スパイアニマル・Gフォース』
(ウォルト・ディズニー映画)
 
 
      (C) Disney Enterprises, Inc. and Jerry Bruckheimer, Inc.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [3月20日より丸の内ピカデリー3他全国ロードショー公開中]   2010年3月2日 角川試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  技術的には見どころ満載,動物目線の実写3D映像  
   この映画の北米公開は昨年の7月24日だから,日本公開まで8ヶ月もかかっている。本映画時評欄としては,この大きなタイムラグがとても惜しいと感じる作品だ。ディズニー作品は,映画の性格と観客層の関係上,春休み・夏休み・冬休みの公開で,家族連れを狙った営業政策をとっている。時期だけを考えれば,昨年末公開で十分だったが,そこには『カールじいさんの空飛ぶ家』(09年12月号)が控えていた訳だ。
 なぜそれほど公開時期にこだわるかといえば,3D作品ブームの中で,製作順序や市場戦略をきちんと踏まえておかないと,その技術評価を誤ってしまうからである。本作品は,3Dへの積極展開を図るディズニー作品系列の中では,フルCGアニメの『ボルト』(同8月号)『カールじいさんの空飛ぶ家』と『Disney'sクリスマス・キャロル』(同12月号)の間に位置しているが,実写作品であることが大きなウリである。この作品のステップを踏んだ上で,大作『アリス・イン・ワンダーランド』(来月号で紹介予定)に臨んでいる訳である。
 実際,昨年のSIGGRAPH 2009ではその3D制作技法の詳しい解説講演があり,ぎっしり満席の盛況だった。前週に公開され,No.1ヒットとなっていたから,注目度が高かったのも当然である。この時点では,メジャー系の実写3D作品は,前年の『センター・オブ・ジ・アース 3D』(08年11月号)と人形劇の『コララインとボタンの魔女 3D』(10年2月号)くらいしかなかったから,主人公たちがCGキャラで,かつ激しいアクションを演じるとなると,その3D制作手法は大いに語るに値した訳である。それが,その後公開の超大作『アバター』(同号)より後の本邦公開とあっては,当欄とて評価の筆も少し鈍らざるを得ない。
 主人公は特殊訓練を受けたモルモットたちで,超ハイテクアイテムを備えたFBIのスパイチーム「Gフォース」として秘密任務に就くという設定だ(写真1)。彼らの仲間のハムスター,モグラ,ハエなどがCGで描かれ,他の登場人物や背景世界は実写である。動物目線の下からのアングルや実世界をかなりのアップで撮影しているのが特長で,当然ながらカメラワークは目まぐるしく,それに見合うように主人公たちの動きも素早い。これを3D映画として撮るのは,かなり挑戦的である。
 
   
 
写真1 ハイテクアイテムを装備したスパイたち
 
 
 
   監督・原案はホイト・H・イエットマン,JR.で,これが初監督作品だが,『アビス』(89)『アルマゲドン』(98)等の視覚効果を担当したVFX界のベテランだ。実写の敵役レナード・セイバー役は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでデイヴィ・ジョーンズを演じたビル・ナイだ。動物たちの声の出演者には,ニコラス・ケイジ,ペネロペ・クルス,サム・ロックウェル等を配した豪華キャスティングである。
 スパイアニマルというだけあって,著名なスパイ映画のパロディ・シーンが随所に見られる。水中を進んで敵地に潜入するのは007ばり(写真2),高い天井からワイヤーで吊るして降下するのはイーサン・ハント風(写真3),といった具合だが,マニアしか気付かないシーンも多々あるのだろう。彼らのアクションは相当なもので,とても普通の俳優には演じられない。正直言って,ちょっとやり過ぎで,これじゃ目が疲れる。  
 
   
 
写真2 水中シーンはまるで『007/サンダーボール作戦』
 
   
 
写真3 このジャンプシーンもなかなかキマっていた
 
   
   VFXの主担当は,Sony Pictures Imageworksだが,一作毎に系列のImageworks Indiaの参加人員も増えている。陰影の使い方が巧みで,しっかりと動物たちの毛並みの微妙な表現を強調している。背景もそれに見事にマッチしたライティングだが,HDRI(High Dynamic Range Imaging)とIBL (Image-Based Lighting)が多用されているようだ。SPIWの過去の技術蓄積がフルに活かされているようだ。
 筆者がいつも注目する情報機器(写真4)や近未来メカ(写真5)のデザインもハイレベルだった。スパイチームのゴーグル,ヘッドホン,マシンガンなど,小物に至るまで手抜きなしにデザインされているのは嬉しい。これだけの配慮をしながら,映画として観た場合の満足度が今一歩なのは,技術が勝ち過ぎて,観客視点に立っていないからかと思う。いや,それ以前に,どの年代の観客を主対象とするかの設定を誤ったと言うべきだろうか。
 SPIWが本作品で磨いた実写3D制作の技は,『スパイダーマン4』で活かされることを期待したい。
 
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写真4 小物やIT機器のデザインも水準以上の合格点
 
   
 
 
 
 
 
写真5 こちらは球体ハイテクカーRDV。最後のチェイスシーンは『トイ・ストーリー』を思い出す。
(C) Disney Enterprises, Inc. and Jerry Bruckheimer, Inc. All Rights Reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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