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O plus E誌 2001年9月号掲載
 
 
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『ジュラシック・パークIII』
(ユニバーサル映画/UIP配給)
 
(c)2001 Universal Studios and Ambin Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2001/7/28 相鉄ムービル先行レイトショー)  
         
     
  SSからJJへの監督交替  
   先月号に間に合わなかったが,本時評としては紹介しないわけには行かないお馴染みシリーズの3作目である。視覚効果におけるCGの地位を不動のものにした『ジュラシック・パーク』(93),続編の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97)の前2作は,全世界で15億ドル以上の興行収入を得たという。となると,ユニバーサルとしては,テーマパーク運営上も不可欠のこのネタをシリーズ化しない手はないし,クオリティを維持するには,VFX担当はILM,恐竜のデザインはスタン・ウィンストン・スタジオの常連メンバーに落ち着いてしまう。
 ところが,4年おきのペースを守ろうにも,S・キューブリックに捧げるため『A.I.』を2001年中に出したいスティーブン・スピルバーグは塞がっていた。このため,彼は製作総指揮に名だけ留め,監督はルーカス・ファミリーのジョー・ジョンストンにバトンタッチされた。なるほど,南カリフォルニア大学映画学科の先輩G・ルーカスを慕ってILMに入社し,『スター・ウォーズ』『インディ・ジョーンズ』両シリーズのSFXを手掛け,監督としても『ミクロキッズ』(89)『ロケッティア』(91)『ジュマンジ』(95)で実績のあるJJなら安心だ。最近は,ヒューマン・ドラマ『遠い空の向こうに』(99)で監督としての進境著しく,アニメ『アイアン・ジャイアント』(99)の主役ロボットのデザインも手掛けるなど,知名度急上昇のこの監督が,人気シリーズをどう料理するか興味深かった。
 2作目では,第1作の途中で姿を消したに天才数学者マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)が主役として登場したが,今回は第1作の主役,古代生物学者のアラン・グラント博士(サム・ニール)が再登場だ。その時のパートナー,エリー(ローラ・ダーン)も少し顔を出し,重要な役を演じる。いかにも続編だと思わせる手配りだ。
 物語の設定は,コスタリカ沖でパラセイリング中の12歳の少年エリック(トレヴァー・モーガン)が事故で,サイトBがあった恐竜の島イスラ・ソルナへ流され,両親(ウィリアム・メイシーとティア・レオーニ)や救出チームとともにグラント博士と助手のビリー(アレッサンドロ・ニヴォラ)が島に向うというもの。そこに待ち受けていたのは,これまでに見たこともない新種の大型恐竜や知的に進化した恐竜たち……,というのは観客の誰もが予想するパターンだ。
 実際,探索の飛行機が島に近づき,お馴染みのテーマ曲にととも恐竜たちが見え始めるとワクワクさせられる。この種の映画では,チームの何人かは途中で命を落とし,主要人物は幾多の危機を乗り越えて,最後には救出されることは,観客の誰もが諒解している。後は,どれだけ工夫を凝らして恐竜を登場させ,恐怖とスぺクタクルを演出し,定番のエンディングにもって行くかだ。
 
     
 
T-レックス(左)は,この主役交替場面だけ
友情(?)出演
今回の大看板のスピノサウルス
知的にパワーアップしたお馴染み
ベロキラプトル
トリは翼のあるプテラノドン
(c)2001 Universal Studios and Ambin Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
 
     
  緩急をつけたテーマパーク感覚の快い演出  
   お目当ての恐竜はというと,前2作の主役T-レックスはほんの少しカメオ出演するだけで,今回はスピノサウルスにその座を譲る。T-レックスより大型で背中にヒレ上の突起がある肉食恐竜だ。前2作にも登場のラプター(ベロキラプトル)はさらにパワーアップして引き続き主役級だが,もう1種類,前作の最後に少しだけ現れる翼竜プテラノドンが本格的に登場し暴れ回る(写真)。ゴジラに対するラドンやモスラのようなもので,空を飛べる存在は映像作りに幅が増すので好都合だ。
 4年間でCGもアニマトロニクスも進歩しているので,主役級恐竜は実写かCGかまず区別できない。目を凝らして見分けようとしても無駄だ。一般の予想に反してCG映像の出番は少なく,第1作目は50%,2作目は35%だったというから,この作品でもその伝統に添って,カット毎に実写とCGを巧みに使い分けていると思われる。
 息をつく暇もないのノンストップ・アドベンチャーを予想したが,J・ジョンストンの演出は緩急が巧みで,疲れさせずかつ楽しませてくれる。危機を乗り越え一息ついたところで,安全な恐竜ショーが登場する。人気者の小型恐竜のコンピー,草食恐竜のステゴサウルス,トリケラトプス,ブラキオサウルスなど,お馴染みの面々が順次顔見せしてくれ,さながらテーマパークのライドツアー風の演出だ。
 味付けとして挿入される人間ドラマも,わざとらしくなく淡泊で好感がもてる。スピルバーグなら,家族愛や科学者の師弟関係のセリフがもっと臭かっただろう。
 93分という上映時間は大作にしては短めで,もう終わりなのかと感じたが,これ以上あっても同じだろうから腹8分目で丁度いい。見終わった時の気分は「あー面白かった。さあ次はどのアトラクションへ行こうか」という,まさにテーマパーク感覚だ。このレベルをキープしてくれるなら,ファンにとっては4作目以降も満足度保証付きである。
 さて次回作で抜擢されるのは,エリック少年か助手のビリーか,リピータ獲得のツボまで心得た作りに,製作総指揮のスピルバーグの影を感じてしまった。
 
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