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O plus E誌 2008年11月号掲載
 
2D版
3D版
センター・オブ・ジ・アース』
(ニューライン・シネマ
/ギャガ配給)
 
    (C) MMVIII NEW LINE PRODUCTIONS, INC. AND WALDEN MEDIA, LLC.  
オフィシャルサイト[日本語][英語]
[10月25日よりTOHOシネマズ六本木ほか全国東宝洋画系にて公開中] 2D版 2008年9月1日 GAGA試写室(大阪)
3D版 2008年10月2日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
   
(注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)
90分楽しめる,良くできた3Dテーマパーク・ムービー

 この映画がどれだけ日本でヒットし,3D上映館が賑わうかに注目したい。米国の映画市場は,時ならぬ3D映画ブームである。既に3D上映可能な劇場は1000を超え,2010年には5000スクリーンに達すると予想されている。大型テレビやホームシアターが普及しつつある中で,映画館に観客を呼ぶ魅力的な題材として(両眼立体視による)3D映画に再び注目が集まっている。
 立体視のメカニズムは,従来からある偏光グラスや液晶シャッター眼鏡を利用するものだが,今回のブームは,デジタル上映のプロジェクタやサーバーと一体化した上映方式が導入されつつある点が特徴だ。既に『ルイスと未来泥棒』や『ベオウルフ/呪われし勇者』(いずれも07年12月号) といったフルCG作品が3D化され,日本でも一部のシネコンで3D上映された。
 そんな状況下で,当初から3D上映を大前提として企画・製作された実写映画の意欲作が本作品である。「初の長編デジタル製作3D劇場映画」との触れ込みだ。原題は『Journey to the Center of the Earth』で,ジュール・ヴェルヌの古典的SF冒険小説「地底旅行」(「地底探検」とも訳されている)の英題と同じである。
 最初に観た試写は2D版だった。大阪では,まだ3D試写上映できるシネコンが整っていなかったからである。3D版には字幕はなく,日本語吹替え版だけになるというので,まずは2D&字幕版から観ることにした。
 監督は,エリック・プレヴィグ。監督としてはデビュー作だが,古くは『アビス』(89)『トータル・リコール』(90)から,最近の『デイ・アフター・トゥモロー』(04年7月号)『アイランド』(05年8月号)まで数々の作品でVFXスーパバイザを務めてきたベテランである。ディズニーランドの立体映像アトラクション『キャプテンEO』(86)や『ミクロアドベンチャー』(94)のSFX/VFXも担当していて,本作品には最適な人物だ。
 主演の地質学者トレバー・アンダーソンは,『ハムナプトラ』シリーズのブレンダン・フレイザー。9月号で登場したばかりの考古学者オコーネル博士を,ちょいと地質学者に変えただけの役柄だ。甥っ子のショーン役は,『ザスーラ』(05年12月号)『テラビシアにかける橋』(08年1月号)のジョシュ・ハッチャーソン。こちらも冒険ものにはぴったりの配役だ。ヒロインの山岳ガイドのハンナ役は,劇中と同じアイスランド出身のアニタ・ブリエムだが,全編を通じてほぼこの3人しか登場しないことを考えると,もう少し魅力的で名の通った女優を配して欲しかったところだ。
 物語は,トレバーの兄(ショーンの父)マックスが残した手がかりを元に,地底世界の謎を解明すべくスネフェルス山に向かうが,3人はその廃坑の竪穴から落下し,地底160kmの広大な洞穴へとたどり着く(写真1)。後は,ほぼヴェルヌの「地底旅行」で描かれた世界をなぞる旅が始まる(写真2)。女性の同行者があるのは,1959年製作の同名映画を踏襲した形になっている。

   

写真1 白雲母が割れて大落下した先は,雄大な地底の世界

   

写真2 地底で遭遇した生物たち。左上から,大キノコ,ピラニア,海竜,人喰花。
(C) MMVIII NEW LINE PRODUCTIONS, INC. AND WALDEN MEDIA, LLC.

   
 2D版でも,元が3D映画用だとすぐ分かる。人物・事物が真ん中に配したデプスを感じさせる構図が続き,背景はパンフォーカスの画面が多用されるからだ。全編を通じて,CG/VFXの利用はかなりの比率に及ぶ。そりゃそうだ。地底に行く訳にはいかないから,模型やCGに頼らざるを得ない。3Dだとマット画や奥行きを誤魔化すテクニックは使えないから,VFX的にも苦労が多かったと想像できる。VFX担当には,Meteor Studios,Hybride,Frantic Filmsなどの名が並んでいる。
 正直なところ,この2D版はアクションも少なく,かなり大人しいファミリー映画だ。ジュール・ヴェルヌの描いた冒険は,現代から見ると,かくも単純でノンビリしたものかと感じた次第である。
 この評価は,3D版を観ると一変する。これまでに作られた中で最も優れた3D映像の1つと評価できる。坑道を走るトロッコのジェットコースターや浮遊する岩での移動は,3D-CGならでは魅力的なシーンだ。座席を揺らすギミックが欲しくなるくらいだ。光る鳥の飛翔やピラニアの攻撃も,立体映像の特性をよく計算して描かれている。突然飛び出す物体で脅す立体映像の定番シーンは少なく,背景の奥行き方向で自然な立体感を演出しているのが好ましい。何よりも,次はどんな冒険がやって来るのか待ち受けられる,そのテンポがいい。
 難点を言えば,試写会場のプロジェクタが暗かったことだが,これは地底探検と考えれば我慢できた。終わってから気がついたが,筆者はこの作品をアクション映画のリズムではなく,テーマパーク・アトラクションの映像として楽しんでいた。そう考えれば,90分も楽しめるライドムービーは,貴重なエンターテインメントである。この映画は是非3D版で観て頂きたい。
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(画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)
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