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(注:本映画時評の評点は,上から,,,の順で,その中間にをつけています。) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
半世紀余の映像表現技術の進歩は十分感じられるが… | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
例によって日米ほぼ同時公開で,関西地区では試写会もなく,O plus E 誌新年号で紹介できなかった作品である。表題だけで,地球破滅の危機を描くパニック映画だと分かる。『マトリックス3部作』のキアヌ・リーブスが宇宙からの使者で,人類に警告を与えるため地球にやって来たという。派手なCGシーンを含むTVスポットがじゃんじゃん流れていたから,なるほど正月映画らしい雰囲気が漂ってくる。筆者などは,この種のCMを観ると,映画通には「いつもの大味で,派手なだけの虚仮威しか」とバカにされ,またCGが悪者になるのではと危惧する次第である。 |
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映像としてのスペクタクルは期待通りだった。映像としてはお粗末極まりない旧作を前夜に観ていただけに,映像表現技術の圧倒的な進歩が強烈に感じられた。いや,映像以上に音響面,映画音楽の創造力向上も相当なものだ。劇場公開映画とTV映画やアマチュア作品との差が最も出るのが音の迫力だ。その差は年々広がっていると感じる。この音と映像ならば,人類の危機は伝わって来る。パニック映画としては十分に合格点だ。 約500カットというCG/VFXの主担当は『ロード・オブ・ザ・リング3部作』や『キング・コング』(06年1月号)のWeta Digital社だ。視覚効果部門のオスカーを4度も獲ったスタジオが約300人を投入したのだから,質・量ともに不足な訳がない。他には,Flash Film Works,Cinesite,CosFX,Hydraulx,Digital Dimension等も参加している。以下,その見どころである。 ■ 球形の宇宙船はシンプルかつ神秘的だが,表面の模様が色々変化する様がなかなか良い。テクスチャには気象衛星画像を使っているようだ。どの方向から見ても同じ形で大きさを感じにくいのを,この模様や構図で巧みにそれを補っている(写真3)。 ■ ロボットのゴートは,旧作では不細工なボディスーツを着ただけの人型ロボットだった。これをどう作り替えるのかも楽しみだったが,そのままのイメージを踏襲し,サイズをぐんと大きくしただけだった。この大きさはCGゆえの実現とはいえ,期待外れで,ちと残念である。 ■ 見落としがちだが,随所に見える背景としてのNYの街(写真4)も様々な表情を見せる。人1人居ない光景や一斉停電のシーンまでを描き分けられるのは,言うまでもなくデジタル技術のお蔭だ。今やこの種の光景を描くのは,特別な技術ではない。ヘリやミサイルの描写も同様である。 ■ 後半のCG/VFXの見どころは,宇宙小生物の大群が地球上を襲うシーンだ。静止画(写真5)だと雲や砂嵐のように見えるが,動きはそのいずれでもない。写真6は予告編でもちらっと登場するシーンだが,大型トレーラーがまさに食べられるかのように崩壊して行く。単なるパーティクル処理やMassiveによる群集シミュレーションでもないようだから,おそらく独自ソフトでこの動きを作ったのだろう。 |
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誌上での紙幅制限がないので長々と書いてしまったが,結論に入ろう。映画史の中で映像表現技術がいかに進歩したかを比較するには,間違いなく恰好の題材の1つである。現代の観客は,同じような入場料で随分贅沢なエンターテインメントを楽しんでいることになる。願わくば,数十年後に同じ題材でどう変化するのか試してもらいたいものだ。 では,この映画だけ観る観客にとっての価値はと言えば……。『インデペンデンス・デイ』(97) 『ディープ・インパクト』(98) 『デイ・アフター・トゥモロー』(04年7月号)等を観た後では,衝撃度は小さく,同工異曲に思えてしまう。結末として旧作を大きく崩さなかったことが,最近のSF大作としてはアクション度は高くないレベルに留めている。映像としてのリッチさ感じるが,感動はない。 ところで,映画の後半で「危機に瀕すれば,人間は変われるのだ」というメッセージが何度も繰り返される。「We can change」というセリフは,何やら次期米国大統領に地球環境を守る姿勢を期待しているかのようだ。でも,ちょっと待ってくれ! 地球環境も大切だが,それは1, 2年遅れてもいいから,金融危機対策の方が急務だろう。勝手にサブプライムローンを破綻させて,世界経済を大恐慌に陥れた責任もあるのだから。 |
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