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O plus E誌 2009年2月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『エレジー』 :教養ある老教授と30歳年下の魅力的な女子学生の恋の物語。筆者の年齢からすれば,羨ましく感じていいはずが,今一つ乗れなかった。若い男女のラブロマンスは第3者視点で応援できるのに,大人の恋は難解で,理解に苦しむ言動も多い。そもそも,何でこんな禿ジジイ(ベン・キングズレー)がもてるのか理解できない。完璧な美貌のヒロイン(ペネロペ・クルス)にも,恋する気分になれない。これは,男に感情移入できなかったからか,それともこの女性監督の感性や視点が,私と根本的に違っていたためだろうか?
 ■『マンマ・ミーア!』 :全曲ABBAの曲でつづる人気ミュージカルの映画化作品。既存曲を使う「ジュークボックス・ミュージカル」は,オリジナル曲の作品に比べて物語性で劣り,感情移入度も低くなる。これは,美しいギリシャの海の景観と立体音響で大コーラスを楽しむ映画だ。生の舞台でも味わえない魅力である。大女優メリル・ストリープが海辺の崖でピアース・ブロスナン相手に浪々と歌う「ザ・ウィナー」には熱がこもっていた。ステージ風衣装で歌うアンコールの2曲が楽しそうで,改めて名曲だなと感じる。ABBAをまた聴きたくなり,サントラ盤も欲しくなること必定だ。
 ■『チェ 39歳 別れの手紙』:つらい映画だ。2部作の後編は,カストロに別れを告げたチェ・ゲバラが,ボリビアで革命に失敗し,処刑されるまでを描く。淡々とした平板な描写が延々と続き,緊迫感が増すのはラスト30分だけだった。この映画は極端に音楽が少なく,ほとんど話し声と効果音だけしか入っていない。数分間のエンドロールも完全に無音だった(黙祷のつもりか?)。その方が生々しくリアルだという計算だろうが,それは作り手の独りよがりというもので,映画としては不親切だ。それでも,退屈な前編を観てしまった観客は,最後の30分のために映画館に足を運ぶしかない。
 ■『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』:閉園寸前の状態から奇跡の復活を遂げ,日本一の入場者数を記録した日本最北の動物園の物語。TV版で名物園長を演じた津川雅彦が,監督マキノ雅彦としての3作目のメガホンをとる。題材がいい,脚本がいい,役者がいいの三拍子揃った上に,監督として映画化を熱望した作品とあっては面白くないわけがない。前2作よりずっといい出来だ。脇を固める長門裕之・岸部一徳・柄本明といった助演陣もいいが,西田敏行の園長役が光る。欲を言えば,再生し始めてからぐんぐん入場者が増える成功譚をもっと克明に描いて欲しかったところだ。
 ■『余命』  :再発した乳癌の治療と出産の狭間で苦悩するヒロインの外科医を『フラガール』の松雪泰子が演じる人間ドラマ。前評判通りの力作で,期待を大きく裏切らない。難を言えば,外科手術,夫婦のベッドシーン,妊婦の表情と歩き方,出産シーン等の場面でリアリティが低く,随所で凡庸さを感じてしまう。脚本・演出・音楽等の詰めが甘く,これが日本映画の平均的実力か。この単調さで131分は長過ぎる。前半と中盤のテンポを速め,クライマックスだけじっくり描くべきだ。後日談も短い方が余韻が続き,感動も増すはずだ。
 ■『ヘブンズ・ドア』  :突然余命3日間だと宣告された28歳の青年(長瀬智也)が,同じく死期が迫る14歳の少女を病院から連れ出し,様々な騒動を引き起こす青春ロードームービーだ。前半快適なペースで期待したが,後半の脚本が弱く息切れだ。警察を狂言回しに使うのはいいが,コメディに徹し切っていない。
 ■『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』  :米国のディズニー・チャンネルで大人気を博した学園ミュージカル・シリーズで,第3作目が劇場公開作品として製作された。若い世代向きの音楽で綴られているので,年配のミュージカル・ファンには少々騒々しく感じられ,対象観客層が限定されそうだ。試写会場は若い男女が沢山いて,隣席の若い女性は夢中だった。「1作目も2作目も観たんです。何といっても,ストーリーがいいですよねぇ」と言うが,さほどのものでもない。ただし,主演のザック・エフロンは爽やかなイケメン青年で,その点は中高年女性も納得だろう。  
 ■『フェイク シティ ある男のルール』  :キアヌ・リーブスが規則無視の荒くれ刑事を演じ,LA市警内部の悪と対峙する物語。キャラ的には,当然ハリー・キャラハンなのだが,途中から中村主水のように見えてくる。前半から快適に飛ばし,中盤からの謎が深まる展開もいい語り口だが,最後は定番の決着に落ち着く。悪人を倒しに乗り込む場面では,K・リーブスが健さんに見えた。そーか,これは仁侠映画だったのだ。
 ■『ディファイアンス』  :ナチの迫害下で,ユダヤ人3兄弟が森の中で同朋の1200人を匿い,生き延びる物語。余り知られていないこの実話を,『ラスト サムライ』(03)のE・ズウィックが骨太のヒューマンドラマとして描く。兄弟の両親を殺された冒頭以降,ずっと森を逃げ惑うだけの物語展開なのに,136分を飽きさせない。脚本の力だ。長兄でリーダーのトゥヴィアを演じるD・クレイグは,銃を構えたポスターだと007に見えるが,ずっと重厚な好演だった。不況下の企業の経営トップは,このリーダー像に学ぶと良い。 
 ■『7つの贈り物』  『幸せのちから』(07年2月号)の監督が,再びウィル・スミス主演で描く感動の物語。前半の余り愉快でない描き方に,2匹目のドジョウはないなと感じたのだが,中盤以降,ミステリータッチの展開でぐいぐい惹きつけられる。同じ謎めいた存在でも『アイ・アム・レジェンド』(08年1月号)の竜頭蛇尾とは雲泥の差だ。途中でテーマと結末が読めてしまうが,それでも最後までしっかり事の推移を見守り,予定通り感動する。脚本もいいが,共演にロザリオ・ドーソン,ウディ・ハレルソンを選んだキャスティングも成功している。ウィル・スミスは,もうアクション路線は要らないんじゃないかと感じさせる一作だ。
   
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