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O plus E誌 2004年7月号掲載
 
 
デイ・アフター・トゥモロー
(20世紀フォックス映画 )
 
      (c)2004 Twenties Century Fox. All Rights Reserved.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [6月5日より日劇1ほか全国東宝洋画系他にて拡大公開中]   2004年5月21日 20世紀フォックス試写室(東京)    
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  VFXの能力を熟知した上での脚本と構図  
 

 最近本欄への登場が少なかった20世紀フォックスが放つ娯楽大作映画だ。「『インデペンス・デイ』監督最新作」というのが宣伝文句であるように,ローランド・エメリッヒが監督・製作・脚本・原案を担当し,CG満載で地球の危機を描くSFパニック映画だ。ただし,かつての相棒ディーン・デブリンの名はこの映画にはない。
 R・エメリッヒは,話題を呼んだ米国版『Godzilla/ゴジラ』(98)でこけた後,『パトリオット』(2000年9月号)で路線変更して成功したかと思ったが,『スパイダーパニック!』(2002年12月号)で徹底したB級映画ぶりを披露した。この映画もその路線の延長線上にあるが,大作らしく巨額の製作費の大半をCG/VFXに投じている。それだけのことはある一大スペクタクルで,VFX史の1ページを飾る一作である。
 主演の古気象学者ジャック・ホール教授には『オーロラの彼方へ』(02)で父親役を演じたデニス・クエイド,その一人息子サムには『遠い空の向こうに』(99)で息子役を演じたジェイク・ギレンホールと,父子愛もので実績ある組み合わせだ(題まで似ていてややこしい!)。そして,サムが想いを寄せる同級生ローラ役は『ミスティック・リバー』(03)のエミー・ロッサムというキャスティングだが,真の主役は異常気象による大災害だ。
 地球温暖化の影響で南極の氷が溶け始め,地球の天候システムのバランスが崩れて,グレープフルーツ大の雹,大型の竜巻,超弩級のハリケーン,津波が引き起こす大洪水…と世界各地で異常気象が続く。その様を,驚くばかりの迫力で,息もつかせず立て続けに描いて見せる究極のディザスター・ムービーだ。CG/VFXの出番がふんだんにあるのは言うまでもない。
 主担当はデジタル・ドメインで,副担当はILMだが,この他にもOrphanage,Hydraulx, Tweak Films等数社が参加している。エメリッヒ監督所有のセントロポリスFX社の名前がないのが不思議だが,どうしてだろう?視覚効果の出来栄えには多少のバラツキはあるが,総じて高水準だ。写真1のような鳥の群れをCG描くのは今や何でもない課題だが,浸水したニューヨークの街を大型船が進む光景(写真2)には驚いた。伝統的なSFXでは表現できないシーンだから,これは最新のVFXの実力を熟知していなければ書けないシナリオだ。

 
   
 
写真1 もうこの程度の鳥の群れを描くのは朝飯前
(c)2004 Twenties Century Fox. All Rights Reserved.
   写真2 浸水したNYの街を進むロシア船
 
 
 
   
 

 そんな場面が次々と登場するのが,この映画の最大の特長だ。写真3の竜巻シーンは『ツイスター』(96)を彷彿とさせるが,当時と比べると技術は格段に進歩したことが直ぐに分かる。大洪水のシーン(写真4)も圧巻で,この数年で水の描写が格段に進歩したゆえ可能になった光景だ。このニューヨーク市をミニチュアでなくすべてディジタルで作ったということに驚かされた。どう考えても,模型の方がコスト面でも品質面でも上のはずなのに,CGを選択した理由は後半に隠されていた。氷河期を迎えて凍りつくマンハッタンの光景を再登場させるには,CGの方が有利だったのである。エンパイヤ・ステート・ビルが最上階から順次凍って行く様は完璧だった。

 
   
 
 
 

写真3 『ツィスター』の頃に比べると一段と進化したCG製の竜巻。
「HOLLYWOOD」の文字周辺も町中の様子も,じっくり観察するに足るレベルに 仕上げられている。

     
 
 
 

写真4 マンハッタンを大洪水が襲う。なぜミニチュアでなく,CG映像で描いたかは後になって分かる。
(c)2004 Twenties Century Fox. All Rights Reserved.

 
   
 

 物語は凡庸で,父子愛の描写も薄っぺらだ。それに巻き込まれて死んでしまう他人はいい迷惑だ。パニック時の人間模様はもっとじっくり描くこともできただろう。しかし,そんなことはお構いなしに大災害の圧倒的な恐怖だけで迫ってくる。偉大なるB級映画の監督ローランド・エメリッヒならではの作品だ。脱帽だ。

 
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  観たことないのに本物らしく感じました  
 
久々に役の登場です。今回のお相手は,昨年秋から本欄を担当されている編集部のSさんです。
皆さん,初めまして。私はあまり映画を観ていないので,お役に立てるか不安なのですが…。
その素人目で観て,この映画はどう感じましたか?
何かスゴイものを観てしまったという感じですね。ストーリーは印象に残りませんが,ただただ洪水や氷のシーンには圧倒されました。あれは全部CGなんですか?
巨大セットで一部本物の水を流している以外は,そう考えていいでしょう(写真5)
氷河に覆われた北半球も印象的だったし,宇宙から眺めた渦巻き雲の映像も素晴らしいです。観たことないのに本物らしく感じますね。不思議です。
私はありますよ。といっても映像でですが…。スペース・シャトルから捉えたIMAX映像です。そういう素材を参考にして描いているからリアルなのでしょう。
CG映像は圧倒的なのに,日本の描き方には笑ってしまいましたね。あれで,東京都千代田区なのかと。
最近『ラスト・サムライ』(03)など日本を正確に描いた作品が多かっただけに,目立ちましたね。
パンフレットにはあるのに,東京,ロンドン,パリが凍りつくシーンは出て来ませんでした。楽しみにしてたのですが…。
前半でヘリが落ちるシーンなども,何のためのヘリなのか説明不足でした。上映時間が長くなったので,切ってしまったのでしょう。アメリカだけ助かれば,後はどうなってもいいと(笑)。
助かった後,最後に大統領が地球温暖化への配慮を述べます。あれが,この映画のメッセージですね。
アメリカの良心のつもりなんでしょうが,それならさっさと京都議定書を批准しろやと言いたくなりますね。でも,政治的意図はゼロの娯楽映画でした(笑)。
 
   
 
 
 

写真5 (左)図書館正面は水槽内に組み立てられた巨大SFXセット。(右)CG製の洪 水やデジタルマットの遠景も加えて合成シーン。
(c)2004 Twenties Century Fox. All Rights Reserved.

 
   
     
   
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