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O plus E誌 2002年12月号掲載
 
 
『スパイダー パニック!』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
       
  オフィシャルサイト[英語]   2002年9月18日 ワーナー試写室  
  [12月14日より全国松竹・東急系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  この動き,この遊び,掘り出し物!  
   今年になって3本目の「スパイダー」という名のつく映画が現われた。1本目はいうまでもなく大ヒットとなった『スパイダーマン』(2002年6月号参照)。2本目は本欄では紹介しなかったが,モーガン・フリーマン演じる犯罪心理捜査官アレックス・クロスのシリーズ2作目のサイコ・サスペンス『スパイダー』だった。原題の『Along Came a Spider』は,マザーグースの「クモがやってきた」という一節を暗示しているらしいが,日本人にはピンと来なかった。これをこういう邦題で『スパイダーマン』公開と同時期にぶつけるとは,何やら首長選挙の泡沫候補のようで,少し卑しい感じがした。
 最もまともに蜘蛛が登場するのがこの3本目で,原題は『Eight Legged Freaks』(8本足の化け物たち)。原題も邦題もいかにもB級娯楽映画だが,Dr. SPIDERたる私としては(最近はあまりそう名乗らなくなったが),見逃すわけには行かない。
 製作は『インデペンデンス・ディ』,米国版『ゴジラ』のローランド・エメリッヒとディーン・デブリンのドイツ人コンビだが,エメリッヒは製作総指揮にまわり,監督・脚本にはニュージーランド出身の若手エロリー・エルカイエムを起用している。配給会社はキャッチコピーに「一流の製作者たちが最新技術を駆使して遊んじゃいました!」と書いているが,まさにその通りのお遊び満載で,文句なく面白い。B級と割り切って期待せずに観れば観るほど,掘り出し物と感じること請け合いだ。
 とあるのどかな田舎町でトラックの積み荷から産業廃棄物が湖に落下し,流れ出た有害物質は町外れに住むクモ・コレクターが飼っていた数百のクモを巨大化させる。この異変にいち早く気付いた「少年クモ博士」が警告を発するが,笑って取り合わなかった大人たちも,もの凄いスピードで増殖し町全体を襲い始めたクモ達の未曾有の恐怖に慄然!というのが,まぁいかにもB級怪獣映画にありそうなストーリーだ。キャストも輪をかけてB級で紹介するほどではなく,製作費の大半は真の主役たる5種類のクモのCG生成に回したという感じだ。
 とにかく登場するクモの数に圧倒される。最初の紹介場面のみ小さな本物で,巨大化したものはすべてCGだろう。初めは控え目で,何だこの程度かと思った頃にどっと増え,その後はウヨウヨこれでもかとばかりに現われる。CGなら何匹でも描けるとはいえ,この数は凄い。VFX担当は言うまでもなく,エメリッヒ&デブリン両氏所有のセントロポリスFX社。最新のVFX技術なら驚くほどではないとはいえ,3〜4年前なら感動もの,アカデミー賞ものだ。以下,その要点である。
 ■数が凄いだけでなく,膨らんだり,砕け散ったりとCGならでの表現・演出も冴えている。子守蜘蛛(ウルフ・スパイダー)とやらの動きの早さにも驚いた。
 ■砂地にめり込んだ足や,舞い上がる砂煙等,物理シミュレーションもかなりのレベルだ。
 ■クモの車体に落とす影や写り込み(写真1),その逆に光沢のあるクモの体表面への周囲の写り込み,パトカーの窓越しに見えるクモ,全体に照明がよく,丁寧な仕上げだ(写真2)。
   
 
 
写真1 装甲車を襲うタランチュラ。毛づやも,影も,写り込みも丁寧な処理。
 
写真2 クモ軍団の勢揃い。このシーンも照明,陰影処理が丁寧。
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 こんなB級映画にVFXをふんだんに使っていいの? 
 
同じ巨大化した怪獣ものでも,昨年の『エボリューション』(2001年9月号)よりずっと面白かったです。
調べてみると,巨大クモの襲撃だけでも過去に何本もあったんです。『世紀の怪物/タランチュラ』(55)『吸血原子蜘蛛』(58)『ジャイアント・スパイダー大襲来』(76)『巨大クモ軍団の襲撃』(77)に,最近では『スパイダーズ』(00)『スパイダーズ2』(01)です。
よくぞまぁ,そんなB級の定番ネタにこんなにふんだんに大作並みのVFXを使ったものですね。
それが彼らの真骨頂なのでしょう。とにかく映画好きの2人は,過去のB級映画を徹底的に調べた上で,自分たちが得意なCGを使って遊んでみたかったようですよ。立派です(笑)。
『ジュラシック・パーク』の恐竜に負けずに,色々な種類のクモを登場させていますね。
タランチュラはともかく,あとは知りませんでした。もうちょっとクモ図鑑風に長い解説をつけ,それぞれの特性にあったパニック・シーンがあった方が面白かったと感じました。
ポスターやTVスポットでは滑稽さを打ち出していますが,アメリカのお馬鹿映画のイヤミはなく,素直なパニック調で好感がもてました。
ふざけた感じは,妄想家のラジオ・キャスターくらいでしたね。クモが主役ですから,人間は脇役なんでしょう。
もうちょっとギャグはあっても良かったかと。
いや,セリフの英語が分からず,字幕スーパーではおかしな感じは伝わって来なかったんじゃないですか。「あれは,何だ?」「スパイダーマンだ」なんてギャグがあったのに,訳されていませんでしたから。
ともあれ,掘り出し物でした(笑)。
 
   
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