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O plus E誌 2001年9月号掲載
 
 
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『エボリューション』
(コロンビア映画&ドリームワークス映画/SPE配給)
 
(c)2001 by Dreamworks SKG. All Rights Reserved.
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2001年6月11日 日劇プラザ(完成披露試写会))  
         
     
  ティペット・スタジオ製作のクリーチャーが冴える  
   写真だけを見たら,これもILMか,スタン・ウィンストン・スタジオ製作の恐竜かと思ってしまうだろう。確かに,本欄で紹介する怪獣系の特殊メイクやクリーチャー・デザインの多くは同スタジオの作だ。『エイリアン』『ターミネーター』『ジュラシック・パーク』シリーズでの実績は言うまでもなく,『シックス・センス』『ホワット・ライズ・ビニース』のコワ〜い死人メイクから,『エンド・オブ・デイズ』『ギャラクシー・クエスト』の悪魔やエイリアン,『A.I.』のロボットたちまでその腕のほどは確かだ。  
     
 
こちらはフィル・ティペット製作の怪獣
(c)2001 by Dreamworks SKG. All Rights Reserved.
 
     
   ところが,この作品はそうではなかった。こちらは,コマ撮りアニメーションの達人フィル・ティペット氏が興したティペット・スタジオの担当で,御大自らが視覚効果スーパバイザを努めている。もっとも,『ジュラシック・パーク』の恐竜のデザインはスタン・ウィンストンでも,その動きの監修はティペット氏が担当していたから,どことなく似ていても不思議はない。いずれも,ILMと共に歩み育ち,独立して行ったスタジオだ。
 この映画は,そのクリーチャー・デザインやアニメーションのセンスが遺憾なく発揮されたSFコメディだ。80年代は『ゴースト・バスターズ』(84),90年代は『メン・イン・ブラック(MIB)』(97),そして21世紀はこの映画という触れ込みだけあって,徹底的にその手のノリで攻めて来る。
 監督・製作は,その『ゴースト・バスターズ』のアイバン・ライトマン。主演は,『X-ファイル』シリーズのモルダー捜査官のディビッド・ドゥカブニー,ヒロインは『ハンニバル』でスターリング捜査官を演じたジュリアン・ムーア。FBI捜査官で名を売った2人が,この映画では生物学の大学教授アイラ・ケインと政府の科学担当官アリソン・リード博士の役どころで登場する。
 ケインの相棒は黒人で若手の地質学教授のハリー・ブロック(オーランド・ジョーンズ)で,この2人の掛け合いは明らかに『MIB』のトミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスのコンビを意識している。隕石の第1発見者,キャディの青年ウェイン(ショーン・ウィリアム・スコット)が加わってからの3人組のドタバタは,なるほど『ゴースト・バスターズ』そっくりだ。
 ある日アリゾナの砂漠に落下した隕石には,地球の生物には存在しないDNA構造を持つの生命の種が付着していた。この謎の生命体は,地球上では驚異的なスピードで進化し,アメーバから恐竜までをたった数日で到達してしまった。このペースでは,地球が46億年かけて歩んだ進化(エボリューション)の過程を1が月で済ませてしまう。このままでは,街が州が,やがては地球全体が征服されるのは明らかだ。それを防ぐには…というのがストーリーの骨格だ。
 単細胞の生命体から,次々と生まれる生命体,生物たちが実に楽しい。蜘蛛,トンボ,歩く丸太,触手をもった木,両生類ならぬ陸海空を生きる三生類トライフィビアン…。どれも愛嬌があり,ビジュアルとしてもいい出来だ。VFX担当は,他にSony Pictures Imageworks, Amalgamated Dynamics, Pacific Data Images社などで,かなりの視覚効果を生み出している。奇妙・奇天烈なクリーチャーたちが織りなすバイオ・ショーは,今年の夏の大味な大作群とは一風変わった味付けだ。
 
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  前半快調,後半はやや失速か  
 
この映画は意見が分かれましたね。私は,この映画のテンポと美術を買いますが,あなたはバカバカしくてツマラナイという(笑)。前半のノリの良さなど,この 夏一番の出来ですよ。
前半は快調でも,後半はいただけません。どんどん進化させたのはいいけれど,もうちょっとましな終わり方にして欲しいですよ。
うーん,確かにこの映画の締めくくり方は難しいな。でも,生命の進化は楽して,次はどうなるかとワクワクしませんでしたか?
それは理科系の好みですね(笑)。『MIB』に似ているといいますが,クリーチャーはいい勝負でも,キャスティングで負けてます。デビット・ドゥカブニーは『X-ファイル』みたいにシリアスな方が合っていて,コメディ向きじゃないです。
ジュリアン・ムーアは『ハンニバル』より良かったですよ。そう言えば,彼女は『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』にも女性科学者役で出てたんでした。こういう役が合うんでしょう。
あの進化のプロセスは科学的には正しいんですか?
最新の生命科学の成果も,ちゃんと反映させているみたいですよ。原作は生物学の教授が書いた真面目な物語で,科学的根拠に基づくエイリアンの恐怖を真剣に語っていたそうです。
それをライトマン監督が,おふざけ映画にしちゃったんですか。
何しろ,幽霊や悪魔退治を『エクソシスト』でなく『ゴースト・バスターズ』にしちゃった人ですからね。このライトマン節が好きな人にはオススメの映画です。
 
   
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