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O plus E誌 2001年10月号掲載
 
 
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『ワイルド・スピード』
(ユニバーサル映画/UIP配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語   (2001年8月28日 UIP試写室)  
         
     
     
 
 
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『ソードフィッシュ』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
(c)2001 Warner Bros. All Rights Reserved.
       
  オフィシャルサイト[英語   (2001年8月28日 ワーナー試写室)  
         
 
   
  いずれもワクワクする悪漢映画  
   ちょっと変則だが,この2本はまとめて語りたい。大作ではないものの,どちらもロサンゼルスが舞台のよくできたバイオレンス・アクションだ。筆者好み,男性好みの映画ではあるが,ともに全米公開でボックスオフィス1位となったのも頷ける。
 まず『ワイルド・スピード』は,暴走族の無法ストリート・カー・レースが舞台で,爆走する改造スポーツ・カーのスタントが売りだ。暴走族が犯人と目される高級品積載のトラックジャックを追う潜入刑事がこのレースに参戦する。『60セコンズ』(00)では,マニア垂涎の名車・高級車が多数登場したが,この映画に登場するは小型軽量の日本車を特別チューニングしたスペシャル・カーだ。三菱・エクリプス,トヨタ・スープラ,マツダ・RX-7,日産・スカイライン,ホンダ・インテグラといったインポート・カーは,NOS(ニトロ噴射装置)を装備されて,火を吹き爆走する。
 この映画の刺激を受けた若者の過熱暴走を恐れたロサンゼルス警察は,厳戒態勢で特別取締りを行ったという。それもいい宣伝効果となったことだろう。なるほど,この映画を見た帰りには,若者ならずともぶっ飛ばしたくなるに違いない。カー・スタントも素晴らしく(写真1),筋書きも『ドリヴン』よりずっと面白い。監督は『デイライト』『ドラゴンハート』のロブ・コーエン。前述のコーエン兄弟とは無関係だ。
 
     
 
写真1 ほれぼれする深夜のカー・レース
 
     
   一方の『ソードフィッシュ』は,政府の不正な闇資金95億ドルを,コンピュータ・ネットワークに侵入して奪い去ろうとする,大胆かつ巧妙な犯罪の物語だ。世界のテロリスト撲滅のため,この資金を強奪し,人質をとったり爆破事件を起こすのだから皮肉な設定である。天才ハッカーのキーボード操作,モニター画面のデザインも見ものだ。監督は,『60セカンズ』のドミニク・セナ。なるほど『60セカンズ』が好みだったなら,この2本にもワクワクするのも無理はない。
 男2人と女1人のバランス,キャスティングの妙も似ている。『ワイルド・スピード』は,カー・レース仲間のボス,ドミニクに『ピッチブラック』(00)のヴィン・ディーゼル,若手刑事ブライアン役にポール・ウォ−カー,ドミニクの妹役にジョーダナ・ブリュースターだ。一方の『ソードフィッシュ』は,天才犯罪者ガブリエルに『フェイス/オフ』(97)のジョン・トラボルタ,天才ハッカーのスタンリーは『X-メン』(00)で抜擢されたヒュー・ジャックマン,そしてガブリエルの愛人,実は麻薬取締局捜査官ジンジャーに,同じく『X-メン』でストーム役を演じたハル・ベリーである。
 坊主頭,太い声のヴィン・ディーゼルの貫録はまさにはまり役,トラボルタの悪ぶりも見事に決っている。最高だ。正義感溢れる2枚目の2人は実にカッコよく,それぞれに恋するヒロインは片や楚々とした魅力,片やセクシー&ファッショナブルで男心をくすぐる。映画はこうでなくっちゃ,という手本のような配役だ。
 
     
  VFXにも,VFXなしにも驚き!  
   さて本時評の要のVFXはというと,『ワイルド・スピード』のカー・レースは,『ドリヴン』に負けず劣らずの多彩な特殊撮影,視覚効果でパワー・アップされている。今や高度なスタント・シーンの大半は,ディジタル合成や特殊メカの消去で描かれていると考えていい。
 ニトロ噴射シーンの流れをCG映像でたどるシーンも印象的だった。ドライバーのシフト操作から,ドライブ・シャフト,燃料噴射エンジン,NOSの爆発,排気管からリア・バルブへと至る一連の流れを,1つのカメラが追うかのように描いている。悪くない。
 味のあるVFXという点では『ソードフィッシュ』も負けていない。『マトリックス』を凌ぐ「マシンガン撮影」というから,またまた例のぐるっとスパイラル状に回るカメラワークかと思ったら,カメラ配置も対象素材もぐっと大規模になっていた。市街地での爆発シーンで,閃光とともに跳ね上がるパトカー,吹き飛ばされるSWAT隊員,飛び散るクルマの破片やガラスが,例の独特のスロー・モーションで表現されていた。ただし,カメラの配置は遥かに複雑で,一旦店舗内に入って再び屋外に出て行く凝りようだ。パトカーや隊員等の素材も別々に撮影し合成・部分消去したようだ。
 同じアイデアの二番煎じであっても,これだけスケール・アップしていれば十分合格点を与えていいだろう。ここでスチル写真を数枚載せても迫力は伝わらないので,これは http://www.swordfish.jp/vfx_f.html を見ることをお勧めする。  むしろ驚いたのは,バスの宙吊りシーンだ。犯人と人質を乗せた大型バスがシコウスキー型ヘリコプターで吊るされ,ロサンジェルス高層ビル街を通過する。途中,片側のワイヤーが外れ,バスは垂直状態に。このまま,ビル屋上の看板や給水塔などをなぎ倒して進む。ヘリはCG,バスは精巧な模型のクロマキー合成かと思って見ていたのだが,何とこれがすべて実写だという。
 コストや危険度を考えれば,どう考えてもここはSFX/VFXので出番なのだが,完全に予想を裏切られた。よくぞまあ,3トン以上もあるバスを市街地でこんな高さまで吊り上げて移動することを許したものだ(写真2左)。恐れ入る。さすがにビル屋上への着地シーンは危険というので,郊外の山の上にセットを組んで撮影したらしい(写真2右)。これとてミニチュアではなく,実物大だから呆れ返る。
 
     
 
写真2 このバスの宙吊りシーンが特撮でなく本物とは!!
(c)2001 Warner Bros. All Rights Reserved.
 
     
   この魅力ある作品が,残念なことに日本での公開が危ぶまれている。米国の同時多発テロのあと,この種のバイオレンスもの,市中での爆発シーンのある映画は,しばらく自粛ということらしい。国防総省へハッキングは時節柄マズイが,この映画の主人公は,世界中のテロリストの根絶やしにしようというのだから,いいじゃないかとも思うのだが,さて。  
   
     
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