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O plus E誌 2003年6月号掲載
 
 
『ザ・コア』
(パラマウント映画/ギャガ-ヒューマックス配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2003年4月25日 ギャガ試写室  
  [2003年6月全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  導入部のパニックと地底描写のビジュアルがウリ  
   こちらもVFX満載の娯楽映画だ。突如判明した地球滅亡の危機に対して,これに立ち向かう科学者たちの冒険&パニック映画というと,『インデペンデンス・デイ(ID4)』(96)『ディープ・インパクト』(98)『アルマゲドン』(98)などを思い出す。一味違うのは,危機の原因が宇宙からではなく,地球内部に生じた異常だという点だ。
 地表の下にはマントルがあり,そのさらに下の中心部は核(コア)と呼ばれる鉄とニッケルの塊がある。この核は,強い圧力で固体化した内核と多少流動性のある外核に分けられる。この外核の回転・対流が地球の磁場を生み出し,それが宇宙からの放射線から地球生物を守っている。その外核の回転が停止してしまったことにより,あと1年で地球生命は滅びてしまう。それを防ぐ最後の手段として1,800マイルの地底に潜り,核爆弾の力で外核を再び回転させる計画が実行されるという訳だ。
 よって,地球物理学者や核兵器専門家など6人のチームが宇宙飛行士(アストロノーツ)ならぬ地底航行士(テラノーツ)として5,000℃の地底に送り込まれる。一見もっともらしいが,核(コア)には核(ニュークリア)をというのはシャレにもならない。荒唐無稽で非現実的ではあるが,所詮絵空事と分かっている映画にこの設定は悪くない。宇宙と違って,今までにほとんど描かれたことのない地底の様子は,基礎科学知識の勉強になるし,ビジュアル面でも大いに楽しみだからだ。
 監督は『エントラップメント』(99)のジョン・アミエル。主演の男女は,『エリン・ブロコビッチ』(00)でジュリア・ロバーツの恋人役を演じたアーロン・エッカートと『インソムニア』(02)でアル・パチーノ,ロビン・ウィリアムスと共演したヒラリー・スワンク。派手さはないが,いいキャスティングだ。脇役陣にも,デルロイ・リンドー,スタンリー・トゥッチ,リチャード・ジェンキンスといった渋いところを揃えている。
 映画全体のタッチとしては『ID4』に近いが,かつての名作『ミクロの決死圏』(66)や『アポロ13』(95)の緊迫感を彷彿とさせる場面もある。まず6人のテラノーツの専門分野や性格が紹介され,不測の事態で1人ずつ命を失って行くが,生き残って間一髪で使命を達成するのは誰か……,というのは誰でも予想できる定番のストーリーだ。評論家筋からの高い評価は得られまいが,この種の映画はこれで良い。人類への警告もなく,人間愛を気取らず,途中楽しませてくれて,妙な余韻を残さない凡庸な結末こそパニック映画の真髄だ。
 VFX担当は,CISハリウッド,シネサイト,コンピュータ・カフェ,3Dサイト等,10社が名を連ねている。こう分散させると,出来不出来にバラつきがあるのは止むを得まい。以下,その要点と見どころである。
 ■地球の異常現象を描く導入部が良く出来ている。ボストンで心臓ペースメーカーが一斉に乱れた後,ロンドンのトラファルガー広場で大量の鳩が暴れ始める(写真1)。この鳩はもちろんCG製だが,もうここまで自在に描けるようになったのかと感心するだろう。ついで,スペース・シャトルが大気圏突入時に軌道を外れ,ロサンジェルス市内の高速道路に不時着する(写真2)。このシャトルは大半がCGで一部がミニチュアだろうが,危機回避までのアクションが圧巻だ。テンポが良く,この導入部がこの映画の最大の美点だろう。
     
 
写真1 異常行動をとるCG製の鳩たち。これは秀逸。   写真2 大気圏突入で炎に包まれるスペース・シャトル。これは事故でなく普通の現象。
 
     
   ■地中の様子をどうビジュアル化するかが見せ場だ。溶岩,岩,地震は当然として,それだけでは単調になるのを,途中水晶の洞を登場させたり,ダイヤが飛来するシーンを考えたアイデアは秀逸だった。デザイン的には『ミクロの決死圏』ほどの驚きはなかったが,十分水準以上の合格点だ。
 ■地中探査艇バージル号は,みみずにヒントを得たという奇妙な形だ。当初設計が宇宙船に似すぎていたので変更したという。ユニークではあるが,もうちょっとエレガントに描けなかったのかと思う。
 ■パニックの第2段,ローマの古代遺跡への落雷(写真3),ゴールデンゲート橋の陥没(写真4)等も,多彩な視覚効果を駆使したスペクタクルとなっている。余り違和感を感じさせず,これも合格点の出来栄えだ。しかし,世界の名所ばかりに都合よく被害が集中するものだ。ならばいっそ,エジプトのピラミッドや中国の万里の長城も破壊すれば良かったのにと思うが,さすがにそれは予算不足だったのだろう。
 
     
 
写真3 これはどうみてもミニチュアがベース   写真4 CG製金門橋の陥没は背景の処理がいい出来
 
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