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O plus E誌 2003年8月号掲載
 
 
『ターミネーター3』
(インターメディア・IMFプロダクション作品/東宝東和配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2003年6月30日 銀座ガスホール  
  [7月12日より全国東宝洋画系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  脚本は無難だが,新登場のT-XはExcellent!!  
   映画を愛するCG関係者にとって『ターミネーター2(T2)』は特別な存在の作品だ。『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』ではなく,いわんや『マトリックス』でもない。今日のVFXの隆盛やCGクリエータ達が多数存在し得るのも,すべてこの『T2』から始まったと言って過言ではない。
 『T3』が企画される前に,ユニバーサル・スタジオの目玉アトラクションとして「T2:3D」が実現した。ジェームズ・キャメロン自身が脚本を書き,当時自らがオーナーだったデジタル・ドメイン社を使ってあの魅力あふれる短編3D映像を製作した。シアター機材込みとはいえ,総予算約60億円というのはハンパではない。これは続編というより,番外編というべきものだろう。当初フロリダでだけ体験できた「T2:3D」が,今ではハリウッドや大阪でもオープンしているのはご存知の通りだ。
 権利関係で揉めた『T3』がいよいよやって来る。熱烈なT2ファン(筆者もその1人だが)にとっては複雑な心境だった。レベルの低い妙な続編は作って欲しくないし,その一方でこの間のCG/VFXの進歩がどのように反映されるか見てみたい。J・キャメロンは,監督どころか製作にも参加しないと聞いてガッカリした。シュワは出ると聞いて,こちらは一安心だ。渥美清抜きの『男はつらいよ』はないのと同様,アーノルド・シュワルツェネッガーなしの『ターミネーター3』もないだろう。監督は『U-571』(00)のジョナサン・モストウに落ち着いた。ストーリーテラーの彼なら,何とか許せるレベルの映画に仕上げてくれるだろう。
 製作側にもプレッシャーだったに違いない。未来の登場人物は決まっている。安易なクリーチャーは出せない。前作までとの整合性は当然だ。安定収入が見込める映画ゆえに,大きな冒険もできない。『マトリックス リローデッド』ほど斬新,難解ではないが,一級のアクションと最新VFXの利用は当然求められる。そんな制約の中での続編だから,安全な企画に違いないと予想した。
 結論を先に言うなら,まさにそのレベルを達成した映画だ。見て損はない。いや,ファンなら必見だ。日本では『マトリロ』と人気は二分するだろう。しかし,何とか合格点はクリアしたが,特別な存在から普通のアクションVFX大作になったという感じに留まっている。ジョナサン・モストウは無難な脚本を精一杯魅力的に演出しているが,ジェームズ・キャメロンならもっとあっと言わせる『T3』になったのではないかと想像してしまう。
 舞台は10年後の2004年。サイバーダイン社を破壊し,T-1000を葬り去った事件から3年後に,戦う母は白血病で死んだが,審判の日(ジャッジメント・デイ)は回避され,ジョン・コナーは23歳になっていた。またしても彼を抹殺する使命を帯びた女性型ターミネーターT-Xが未来から送り込まれ,それを追ってシュワ演じる旧式のT-101もやって来る。「審判の日は回避されたのではなく,先延ばしにされただけだ。核戦争による人類の破滅は必ず起こる」と彼は言う……。
 T-101に再び守られるジョン・コナー役には『イン・ザ・ベッドルーム』(01)のニック・スタール。幼なじみの獣医助手で,未来では彼の妻となるというケイト・ブリュースター役には,バズ・ラーマン版『ロミオとジュリエット』でヒロインを演じたクレア・デーンズ。ケイト役はともかく,ジョン・コナーはノーブルな美少年だったはずが,このサル顔はいただけない(写真1)。これではジョン・コナーには見えず,本作品最大の欠陥だ。2人とも『T4』以降を意識して選んだ演技派ということなのだろうが,やっぱり勘弁して欲しい。
 今回の敵T-Xには,スーパーモデル出身のクリスタナ・ローケン。T-1000と同じ液状金属ロボットで,多くの内蔵武器と他のマシンを制御できる能力を持つ。このキャラ設定とこのキャスティング。これは見事だ。デアデビル張りの赤いレザー・スーツ姿が決まっていて,こちらは本作最大の美点だ。ターミネーターのターミネーターらしくニコリともしないが,おそらく素顔の笑顔はさぞかし可愛い女性だろう。次の出演作が楽しみだ。
     
  S・ウィンストンの造形とメイクを楽しもう   
   以下,アクションとVFXの見どころである。
 ■核爆発による都市破壊のシーンは,この映画の定番だが,今回はさらに磨きがかかっている。映画の最初と最後に登場するが,そのクオリティが素晴らしい!CG/VFXの主担当はILMに戻り,他にデジスコープ社,R!OT社等の数社が参加している。
 ■アクションの見どころは2箇所。T-Xが巨大クレーン車で2人を追う市街地カーチェイスと,彼女とシュワが戦うトイレのシーンだ。いずれも第一級のアクションで,『T3』に相応しくVFXを駆使したこれまでにないシーンを作り上げている。
 ■前者は,黄色のクレーン車が他のクルマや街路樹や周りの家屋をなぎ倒し,縦横無尽に走り回る(写真2)。勿論実物が中心だが,一部はCGだろう。振り回すクレーンの重量感や破壊される物体とのバランスが難しい。最後はこのクレーン車も追いかけるシュワの消防自動車もバラバラになるが,剛体の破壊シミュレーションがこの数年で急速に進歩したゆえのVFX映像だと言える。
 
 
写真1 このサル顔のJ・コナー(左)は何とかしてよ!
 TM(c)2003 IMF3
 
写真2 黄色い大型クレーン車のど迫力
 
     
   ■後者のトイレでのバトルでは,壁や便器もかなりの部分はCGに違いない。『T2』ですでにシュワやT-1000のR・パトリックの精巧なパペットがあったから,今回はT-XのC・ローケンのパペットやCGモデルも当然用意されただろう。CG映像一辺倒でなく,本人,スタント代役,パペット,CGを見分けがつかないくらい自由に使い分けられるのがILMの強みだ。
 ■T-Xの右腕がさまざまな武器に変わる(写真3)。そのデザインや技が楽しい。これもCG合成と各種メカの腕を装備したパペットとの両刀使いだ。写真4なども,パペット操作でガラスを破壊させたか,CGのウィンドウを破壊して見せたか,区別はつかない。どちらであっても不思議はない。T-Xの首がぐるっと1回転したり,溶けて破壊されるシーンなどはCGならではだ。
 ■T-101のスケルトン・モデルは『T1』(84)以来のお馴染だ(もっとも,『T2』ではT-800と呼ばれていて,元に戻った感じだ)。これも金属メカのパペットとCGの両刀使いだろう(写真5)。アップのシーンはパペット,多数体はCGというのが素直な発想だ。
 ■クリーチャー・デザインと特殊メイクは,1作目からずっと担当のスタン・ウィンストン・スタジオだ。原デザイナーゆえに,今回はT-101の身体内部を見せてくれるなど,手の込んだサービスをしてくれる。ファンにはこれが嬉しい。意志をもって人間を侵略し始めた最初のT1型ロボットもお目見えした(写真6)。今改めて確かめると,『T2』の未来シーンで登場したハンター・キラー戦車にも似ている。その種の整合性はデザイン面でもしっかり踏襲している。
 
     
 
写真3 この美貌と右腕の武器に注目
 
写真4 これはパペットか,それともガラスがCGか?
 
 
写真5 お馴染みの未来シーンも今回はCGが主力?
 TM(c)2003 IMF3
 
写真6 T1型ロボットのデザインも見どころ
 
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