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O plus E誌 2003年4月号掲載
 
 
『ネメシス/S.T.X』
(パラマウント映画/UIP配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2003年2月17日 UIP試写室  
  [4月12日より全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  物語もVFXもただただ圧倒させられる  
   この邦題だけを見るとどんな映画か想像がつかないが,原題は『Star Trek: Nemesis』。世界中に熱狂的ファンをもつ「スター・トレック」シリーズの劇場用映画第10作目とのことだ。Xは10だから,これで「S.T.X」の意味が理解できた。マニアには分かるが,一般映画ファンには何だろうと思わせる営業戦略のようだ。
 過去にもその前歴がある。日本ではアメリカほどファンがいないためか,7作目からの新シリーズで『ジェネレーションズ』(94)『ファースト・コンタクト』(96)と一般的な表題を使ってシリーズ名を隠した。9作目は『スター・トレック/叛乱』(98)だったが,また逆戻りだ。ファイナル・ファンタジーの10作目が「FFX」と略したと同じノリを期待したのだろうか。
 実をいうと,評者も劇場サイズのスクリーンでこのシリーズを観るのは初めてだ。これまでは,機内ビデオで3,4本観たに過ぎない。一般映画ファンも同程度かそれ以下の経験・知識だと想像し,にわか勉強したこの大シリーズの歴史を簡単に紹介しておこう。
 まず最初のTVシリーズは1966〜69年の3シーズンに79話放映され,後に「The Original Series (TOS)」と呼ばれるようになった。日本では1969〜74年に放映され,その邦題は「宇宙大作戦」と「宇宙パトロール」。何とも,古き良き時代の題名である。アポロ計画華やかなりし頃の製作で,映画『2001年宇宙の旅』(69)と同時代の作品である。23世紀にU.S.S.エンタープライズ号が宇宙調査旅行で遭遇する冒険譚が描かれている。劇場用映画シリーズは1979~91年に6本製作され,カーク船長以下の乗組員はTVシリーズと同じ俳優が登場している。中でも,レナード・ニモイ演じる「ミスター・スポック」の印象が強烈で,今でも「スタートレック」というと彼の顔を想像する人が大半だろう。
 約20年後の1987~94年の7シーズンに176話放映された新シリーズは,「The Next Generation: (TNG)」と呼ばれている。日本放映題名は「新スタートレック」だ。エンタープライズ号の名前は同じだが,時代も24世紀で,宇宙船もピカード艦長以下のクルーも一新されている。TNGの劇場用映画もTVと同じメンバーで1994年からスタートし,本作品が4作目ということになる。
 TNGが好評であったため,派生して同時期に「Star Trek: Deep Space Nine (DS9)」(1993〜99)と「Star Trek: Voyager (VGR)」(1995〜2001)の2シリーズが製作され,現在は「Star Trek: Enterprise 」(2001〜)が製作・放映されている。
 40年近く前のTOSシリーズはいかにもちゃちなTV番組だったが,劇場版TOSは映画『スター・ウォーズ』(77)の影響を受け,同じメンバーでスケールアップした映像をアピールした。やがて,TV版TNGにILMも参加するようになり,SFXを駆使した新シリーズとなる。ミニチュアやモーション・コントロール・カメラといった伝統的な手法が主流であったが,劇場版の9作目からは本格的にディジタル視覚効果が使われるようになったという。
 さて,10作目の本作品だが,冒頭からかなりのVFXのオンパレードで,劇場映画のスケールの大きさを感じさせてくれた。音響も悪くない。TV版はクルーが中心のドラマだが,映画ではアクションや宇宙バトルがセールスポイントとなるのは当然だ(写真)。それでいて,かつての懐かしいSF冒険映画の味付けを残しているのは,このSTシリーズの伝統といえるだろう。
 お馴染みのメンバーによる物語のこの映画での工夫は,ピカード艦長(パトリック・スチュアート)の若きクローンのシンゾン(トム・ハーディ)が敵役として登場することだ。なるほど,今風のテーマで面白く仕上げている。そっくりではないが,表情やイメージが似た俳優を使っている。
 マスコミ用試写会で隣席の若い取材者たちは,あちこちでゲラゲラ笑っていたが,私には全く面白くなかった。このシリーズのマニアにのみ受けるネタが沢山仕掛けてあったのだろう。STシリーズの予備知識はなくても,結構面白かった。独立した映画として観ても,十分鑑賞に堪え,さすが一流の脚本家と製作スタッフをかかえるハリウッドだなと感心した。観て損はない。
 冒頭から飛ばしたVFXは,中盤少し落ち着くが,最後まで結構な分量だ。その主担当は,デジタル・ドメイン社が150余人。他にEden FX社,Edge FX社等数社が加わっている。『スター・ウォーズ』シリーズからすると,STシリーズはVFXは先進的ではなく,どこかで観たような用法ばかりだ。世の中のVFXの進歩を素直に受け入れ,ファン・サービスに努めてきたのだろう。改めて初期の作品のビデオと比べると,名物の転送(トランスポート)や宇宙での対戦シーンがCG映像の導入でかなり品質的には向上していることが読み取れた。着実に一歩々々技術の向上を反映してきたこのシリーズは,SFX/VFX発展史を回顧する上で貴重な資料といえるだろう。10本まとめて観たくなってしまった。
 
 
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