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O plus E 2022年Webページ専用記事#4
 
 
バズ・ライトイヤー』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C)2022 Disney/Pixar
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [7月1日より全国ロードショー公開中]   2022年6月17日 大手広告試写室(大阪)
       
   
 
ミニオンズ フィーバー』

(ユニバーサル映画/東宝東和配給)

      (C)2021 Universal Pictures and Illumination Entertainment
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [7月15日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2022年6月28日 東宝東和試写室(東京)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)  
   
  ほんの4ヶ月前の両雄の組合せの再現  
  フルCGアニメの2本をまとめて語るのはこれまでにも何度かやってきたことだが,この2本の組み合わせに注目して頂きたい。単に,ディズニー配給網と東宝東和配給作品の2本というだけではない。ディズニー側は,本家WDAS (Walt Disney Animation Studios)の番だと思ったのに,2作連続でフルCGアニメの元祖ピクサー社の最新作だ。もう一方も,アニメ配給に熱心な東宝東和が扱い始めたDWA (DreamWorks Animation)の作品ではなく, こちらもユニバーサル・スタジオ×イルミネーション・アニメーションの最新作が続く。即ち,ほんの4ヶ月弱前の3・4月号で紹介した『私ときどきレッサーパンダ』と『SING/シング:ネクストステージ』と同じ組合せなのである。
 初期のフルCGアニメは数年に1本制作するのがやっとであったのに,今は何たる生産性の高さかと感心する。コロナ禍で公開延期になり,公開すべき新作が溜まっていたせいもあるだろうが,公開が渋滞するほど企画が進行したということになる。しかも,ピクサー社の原点である『トイ・ストーリー』シリーズの人気者バズ・ライトイヤーの単独主演作と,イルミネーションが誇る3シリーズ中で最も人気の高い「ミニオンズ」が登場する最新作である。
 4ヶ月前とは順序は逆であるが,ここは素直に公開日順,試写を観た順に語ることにした。
 
 
  人形でなく,その基となったSF映画という位置づけ  
  主役は,題名通りのバズ・ライトイヤー。原題は単なる『Lightyear』だ。『トイ・ストーリー』シリーズでは,カウボーイ人形のウッディの相棒の準主役であり,台湾製のオモチャという設定であった。第1作目の時点で,アンディ少年が好きなTVアニメの主人公の人形で,誕生日に貰った最新のオモチャとなっていた。劇中では,自分は人形ではなく,本物のスペース・レンジャーであると信じていて,様々な騒動を引き起こしていた。シリーズ4作すべてに登場していて,グッズ市場ではウッディ人形よりも人気が高い。ウッディ人形が名前通り木製+布製で高価になりがちなのに対して,バズ人形の大半はプラスティック製で,他のヒーロー人形と,同サイズ,同価格帯で作れることも影響しているようだ。
 その彼が単独主役となると,所謂スピンオフもので,『ファインディング・ニモ』(03年12月号)と『ファインディング・ドリー』(16年7月号)の関係を想像してしまうが,本作はちょっと違う。準主役を主役に昇格させた物語ではなく,アンディ少年が気に入っていた元々のSF映画という設定なのである。即ち,本作はウッディやミスター・ポテトヘッド等のオモチャ仲間は登場せず,人間の俳優たちが宇宙飛行士を演じるSF映画という位置づけだ。
 本作の監督は,『ファインディング・ドリー』の共同監督であったアンガス・マクレーン。自らが長編アニメの単独監督をするに当たり,SF好きの彼が,ただのスピンオフ作品でなく,こういうユニークな設定にしたかったようだ。
 物語の時代設定は,宇宙年3902年だ。優秀なスペース・レンジャーであったバズは,自らのミスにより,1200人の乗組員とともに,危険な惑星に不時着してしまう。彼は全員を無事地球に帰還させるために,個性豊かな仲間たちと協力して,思いがけない敵と戦うという冒険物語になっている。
 以下,当欄の視点からの感想と論評である。
 ■ 主役のバズはオモチャでなく,生身の俳優が演じる映画の主人公というので,『トイ・ストーリー』シリーズのバズとは性格も変えている。剽軽で騒々しいキャラから,責任感と意志の強い主人公にイメチェンさせるのに,声の出演もティム・アレンから,「キャプテン・アメリカ」を演じたクリス・エヴァンスに替わっている。日本語吹替もコメディアンの所ジョージから人気俳優の鈴木亮平へと交替しているので,声だけでその意図が伝わってくる。随所で見られる真剣な表情(写真1)とは,見事にマッチしていた。
 
 
 
 
写真1 バズ人形では見られない真剣な表情 
 
 
  ■ 『トイ・ストーリー』シリーズのバズは,宇宙服のヘルメット姿か,その下に紫色のインナーキャップを着用したルックスだ。本作では,それも外した頭髪の姿で登場するシーンも多い。これだと,随分印象が違い,精悍な顔立ちのイケメン俳優だ(写真2)。プロ野球選手やスケート選手らが,帽子やヘルメットを取ってインタビューした時に印象が異なるのと似た感じである。バズだけでなく,他のクルーも同様だ(写真3)。くつろいだ感じになり,それに応じた表情をつけているのは,芸が細かい。
 
 
 
 
写真2 なかなかのイケメン。こういう俳優がいそうだ。 
 
 
 
 
 
 
 
写真3 (上)宇宙服+インナーキャップ姿の緊迫したシーン
(下)訓練時は少しくつろいだ表情で
 
  ■ 設定上,1995年以前のSF映画のはずだが,それらしい作りだった。少し古風なSFアドベンチャー映画の趣きを醸し出していた。CG映像としては,宇宙船や宇宙ステーション内部の機械類のデザインが精緻で,嬉しくなった。地球上の宇宙開発センターと思しき建物やその内部の描写も見事な出来映えだった(写真4)
 
 
 
 
 
 
 

写真4  本格的SF映画を思わせる見事なシーン。実写で観たくなる。

 
 
   ■ バズが操縦する飛行艇が,ひたすらカッコいい(写真5)。宇宙空間を飛行するなら空気抵抗はないので,流線形にする必要はないはずだが,大気のある惑星で敵と戦うことも想定した設計だということにしておこう。この映画はCGアニメではなく,実写映画で見たいと感じた。実際,当初はそういう計画もあったようだが,ピクサー作品となるとフルCGアニメとならざるを得なかったのだろう。
 
 
 
 
 
 
 

写真5 スペース・レンジャー用飛行艇の見事なデザイン。既に玩具市場にも登場している。
(C)2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 
   ■ 真面目過ぎる作りで,少々込入ったストーリーとなっていた。アクション演出は秀逸だったが,それに比べて結末はさほどではなかった。当時7歳だったアンディ君が夢中になるには,物語が複雑過ぎて,子供が理解できたとは思えない。ピクサーらしいほのぼのとした夢のある物語になっていなかったのも,少し残念だった。
 
  笑いのツボを押さえた見事なアクション・コメディ  
  さて,もう一方の『ミニオンズ フィーバー』の原題は,当初『The Rise of Gru』であり,後に『Minions: The Rise of Gru』と改題された。即ち,若き日の怪盗グルーとミニオン達が引き起こすアクション・コメディである。11歳の少年グルーが全編で登場し,後に大泥棒となった経緯が描かれているので,てっきりこれは『怪盗グルー』シリーズの1作だと思って観ていた。分類上は,恐竜時代から生きてきたミニオン達を描いたスピンオフ作品『ミニオンズ』(15年8月号)の続編で,こちらもスピンオフ扱いだという。
 ちょっと原点から整理しておこう。第1作は『怪盗グルーの月泥棒 3D 』(10年11月号)[原題は『Despicable Me』]で,主役はグルーなのだが,サブキャラで奇妙な言語を話す小動物のミニオン達が大人気となった。続編の『怪盗グルーのミニオン危機一発』(13年10月号)や『怪盗グルーのミニオン大脱走』(17年7月号)では,もうちゃっかりと「ミニオン」をウリにしていた。これは邦題だけで,原題は『Despicable Me 2』『Despicable Me 3』だったから,なるほどこの3本が本来の『怪盗グルー』シリーズなのだと分かる。いずれにせよ,スピンオフ2本と併せて計5作目であることは,バズ・ライトイヤーが登場する上記と同じである。
 本作の監督は,『ミニオンズ』の共同監督であったカイル・バルダだ。今回は単独監督で,4作目までの主監督であったピエール・コフィンは,ミニオン達の声だけを担当している。
 時代は1970年代で,将来大悪党になることを志すグルー少年は悪党集団ヴィシャス・シックスに憧れ,その新メンバー募集に応募する。まだ子供だからとバカにされたグルーが,悪党集団から伝説の石ゾディアック・ストーンを盗み出したことから始まる騒動を描いている。
 以下,当欄の視点からの感想と論評である。
 ■ 黄色の生物ミニオン達は,当初から多数登場していたが,個々の名前があるものだけで30数体あるようだ。キャラクター商品として覚えやすくするためか,主たる3人組が強調されている。面長で背が高い「ケビン」,小柄で頭に毛がない「ボブ」,背は標準で1つ目の「スチュアート」の3人(3匹?)である(写真6)。劇中では,衣装を替えたり,様々な仮装をして登場するが,この3人組で現われるシーンが多い(写真7)。本作では,物語の鍵を握る新ミニオンとして「オットー」が登場する(写真8)。歯科矯正中で時折見えるワイヤーがチャームポイントのようだ。


 
 
 
 
写真6 左から,スチュアート,ボブ,ケビン
 
 
 
 
 
 
 

写真7 随所にこのトリオで登場する

 
 
 
 
 
写真8 新登場のオットーは歯科矯正中
 
 
  ■ 11歳の少年グルーはさすがに若々しく,まだ頭髪がしっかりと存在している。そうかと思えば,凄まじい悪人面の形相も垣間見せるので,後は大悪党になる片鱗が伺える(写真9)。もう少年時代から,寒くもないのにトレードマークのマフラーをしているのがご愛嬌だ。
 
 
 
 
 
 
 

写真9 ミニオン達が主人に選んだグルー少年。11歳にしては老けているが。

 
 
  ■ 『バズ・ライトイヤー』がストーリー重視の描き方であるのに対して,こちらは個性的な登場人物の描き方が大きなセールスポイントとなっている。敵役の悪党集団ヴィシャス・シックスの面々は殊更個性的だ(写真10)。白髪頭に赤いバンダナを巻いたリーダーのワイルド・ナックルズは,カントリー歌手のウィリー・ネルソンを思い出す(イニシャルも同じだ)。そのWNを追放して新リーダーとなった女性ベル・ボトムのコスチュームも,一度見たら忘れない奇抜さだ。もう1人,新しい魅力的な登場人物がいた。鍼灸師でカンフーの達人のマスター・チャウである(写真11)。声の出演は,カンフー映画でもお馴染みミッシェル・ヨーだった。日本語吹替版では,渡辺直美が配されているという。体形,年齢,親しみやすさ,どれをとっても渡辺直美の方が絶対に似合っている。それが,字幕版で試写を観た参加者たちの一致した意見だった。
 
 
 
 
 
 
 

写真10 個性派の悪党集団ヴィシャス・シックス。
リーダーのワイルド・ナックルズ(上)を追放し,ベル・ボトム(下)が新リーダーに。

 
 
 
 
 
写真11 ミニオン達にカンフーを教えるマスター・チャウ
(C)2021 Universal Pictures and Illumination Entertainment. All Right Reserved.
 
 
  ■ 見慣れたはずのアクション・コメディなのだが,本作はいつも以上にハチャメチャのギャグやアクションが秀逸だった。ストーリーからは脱線気味でも,それがまた楽しい。それにマッチした音楽もいい出来映えだった。本作の時代設定に合わせて,1970年代のヒット曲を,現代風のアレンジでたっぷりと聴かせてくれる。ディズニー&ピクサー組に対して,アニメーション映画ではがっぷり四つに組んで引けをとらない存在となっていることが,改めて実感できた。  
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