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O plus E誌 2010年11月号掲載
 
 
 
 
『怪盗グルーの月泥棒 3D』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)
 
 
      (C) 2010 Universal Studios

  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [10月29日よりTOHOシネマズ 有楽座ほか全国ロードショー公開予定]   2010年7月8日 TOHOシネマズ 梅田[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  欧州風の味付けのCGアニメは,3D効果も上々  
   先月に続いて3D作品から入り,しばし3D論議をしよう。最初から立体視の視差を考えて左右両眼の映像を作ってあるフル3Dであることがウリで,プレスシート上でも堂々と擬似3D(2D→3D変換)批判がなされていた。本作は,実写ではなく,フルCGアニメ作品である。フルCGなら,両眼映像を作れるのは当然じゃないかと思うが,これがそうでもないのである。
 調べてみると,これまでに本欄で紹介したCGアニメの3D作品には「2D→3D変換」で作られたものが結構あった。昨年,高評価を与えた『ボルト』(09年7月号&8月号)までそうだったとは知らなかった。3D版も実に良くできていた。もっとも,実写映像とCG映像では「2D→3D変換」で,だいぶレベルが違う。もとがCGならば,モデルデータは全部残っているから,主要人物を焦点面にした場合に,輪郭だけを切り抜いた平板な2D映像を使うのではなく,僅かな視差を与えたCG人物像をもう1枚作って埋めることは容易だ。ここぞというオブジェクトだけ,しっかりステレオ画像対を作れば済むことだ。別項の『THE LAST MESSAGE 海猿 3D』のようなペラペラの実写3Dとは次元が違う。
 ユニバーサル映画にとって,3Dだけでなく,長編CGアニメの初作品だそうだ。ディズニー&ピクサー,ドリームワークスを追って,既に20世紀FOX,ソニー,ワーナー等は参入済みなので,「何だ!? ユニバーサルは今からなのか」という感じだ。自前のCGスタジオを持たないユニバーサルは,FOXの『アイス・エイジ』シリーズを手がけたプロデューサーのクリス・メレダンドリと年間契約を結んで本作に臨んでいる。
 本作の主人公は,皮肉屋で嫌みな泥棒の怪盗グルーで,ライバルのベクターに秘密兵器を盗まれたことから,その奪還作戦を練る。ところが,ひょんなことから孤児の3姉妹を育てる破目になり,そこから起きるドタバタ騒動をハートフルなコメディとして描いている。ファミリー向けのアニメのネタとしては,悪くない題材だ。
 米国資本でアメリカ人が製作・監督した映画だが,CG製作はパリに本拠地をもつ「マック・ガフ」だ。そのためか,ピクサーやドリームワークス作品とも違う欧州風のテイストに仕上がっている。アニメの動きは,古き良き時代の漫画映画のタッチを残している。その半面,ストーリー展開は生真面目過ぎて遊びがなく,ギャグがあまり面白くない。批評家筋の評価はかなり高いのだが,筆者はあまり面白いと感じない作品だった。この作品より少し前に『ヒックとドラゴン』と『トイ・ストーリー3』(共に10年8月号)という屈指の良作を観ていたためかもしれない。
 CG描画の実力は,可もなく不可もないレベルだ。グルーのトレードマークであるマフラーがたなびく動きは悪くないが,セーターの質感が表現できていない。hairやfurの表現で,まだ高いレベルに達していないようだ(写真1)。3Dはと言えば,擬似3Dを堂々と批判するだけあって,きっちり飛び出すシーンや奥行きのあるシーンが意識して作られていた。その最たるものは,ジェットコースターのシーンである(写真2)。元来3Dアトラクションにピッタリのネタで,コースター苦手の筆者ですらもっと観ていたいほどだった。気分が悪くなる観客が出て来ることを恐れて,短くしてしまったのだろう。
 
   
 
 
 
写真1 マフラーも髪も動きはいいが,質感は今イチ
 
   
 
 
 
写真2 これは3Dでもっと観ていたい
 
   
   登場キャラのデザインは悪くない。主人公のグルーが,月を盗むという発想がユニークだし,デザインも個性的だ。相棒はバナナでできたミニオンで,どこかで見かけたことのある愛らしいキャラである(写真3)。ただし,声の出演者はキャラクターのイメージに合っていないと感じた。グルーの声は英語版のスティーヴ・カレルより,風貌からして吹替え版の笑福亭鶴瓶の方が似合っている。宿敵ベクターの顔も,吹替えの山寺宏一そのものだ(写真4)。きっと日本語吹替え版の方が上出来のことだろう。     
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写真3 よく観ると1つずつ表情が違う
 
   
 
 
 
写真4 ベクターは,吹替えの山寺宏一にそっくり
(C) 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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